ベースボール・ファッション〜バッティンググローブ(手袋)編〜
筆者、のぼ〜る広報が野球で使われる用具を紹介しそこから分かることを紐解くことで、プロ野球選手における"おしゃれ"とはなんなのかを追求していく、題して「ベースボール・ファッション」。
第三回は、バッティンググローブについて紐解いていきます(本記事内では文字数の関係上「手袋」と書かせていただきます。ご了承ください)。
今となっては必需品の手袋
今回テーマとなった「手袋」。現代プロ野球で手袋をつけない選手はほとんどいませんが(つい最近、巨人・高梨雄平選手が素手で打席に立っていました)、昔は片手のみ、さらにはどちらも素手で振る選手もいました。
素手で打席に立つ選手の最たる例として挙げられるのが、現役時代3度の三冠王に輝いた落合博満氏。
落合氏は、
と、手袋をつけた時の手のズレを気にしていたといいます。あまり手袋が普及していなかった時代の選手は、素手で直接握ることで自分の感覚を大切にしていたのでしょう。
また落合氏は手袋の普及由来について、
と説明。確かに、寒い時期にキャンプで素振りなどを行うと、手が悴んでとても痛くなってしまいますね。つまり、手袋は当初練習用具として存在していたわけですね。
しかし、今では死球が手に当たった時の防護や、マメを出来にくくするために全ての選手が装着しています。
素手でバッティング練習を行う選手も
現在、試合中ではほぼ全ての選手が手袋をつけていますが、試合前のバッティング練習では素手で打撃を行っている選手も少なくありません。
例えば、ロッテ・茶谷健太選手。茶谷選手は2020年の自主トレ時、
と、一緒に自主トレを行った当時ソフトバンクの内川聖一氏から教えをもらったといいます。
素手でバットに触れるからこそ、微細な感覚の違いにも敏感になれるのでしょうね。先ほど挙げた落合氏は、バット職人からもらったバットのグリップが1本だけ0.2ミリ短いことに気づき、伝えに行ったといいます。
コンマ数秒で結果が変わるこの世界、バッティングにおいては論理ではなく感覚の方を大事にする選手は多いのかもしれません。
手袋を着けることで生まれるメリットとは
では、それだけ素手を大切に選手がいた中、今ではなぜほとんどの選手が手袋を着けているのでしょうか。
まず1つ挙げられるのは、単純に手を防護することができるため。死球を受けた時に、ボールがグリップを握る指にあたれば、硬球は文字通りとても硬いので骨折することもざらにあります。その手や指を守るために手袋を着けています。
そしてもう1つは、汗で手が滑るのを防ぐことができるため。日本は高温多湿の気候のため、数十回と素振りをしないうちにみるみる手から汗が噴き出てきます。初めはバットに滑り止めを吹きかけることでどうにかなりますが、次第にそれだけでは足りなくなってきます。先述した茶谷選手も、春季キャンプが始まってからは
と、暖かくなってからは手袋をつけて打つことが多いといいます。
今ほど地球温暖化が進んでいなかったことも、一昔前の選手たちが素手でバッティングをしていた要因に挙げられるのでしょうね。
手袋は打撃専用のものだけではない
ここまで説明した手袋は「バッティンググローブ」からの視点でしたが、「手袋」という視点で見ると、プロ野球では守備用、走塁用なども存在しています。
例えば、守備用手袋。
「え?投げ手にはつけられないし、もう片方にはグローブをはめているじゃないか?」と疑問に思う方もいるかもしれません。実は、多くの選手はグローブの下に手袋をはめているのです。
守備用手袋をはめる理由として、大きくあるのはおそらく2つ。
1つは、ボールを捕った時の痛みを軽減させるため。キャッチボールしたことがあることなら分かるかもしれませんが、速いボールをグローブで捕ると、捕った手がジンジンしますよね。その痛みはプロ野球になるとより凄まじいものになります。なので、その痛みを軽減するためにも守備用手袋を着けています。
もう1つは、グローブに手をフィットさせるため。あえて守備用手袋を着けることで手を疑似的に大きくし、グローブにフィットさせることで打球を取りやすくなるという利点が生まれるのですね。
そして、亀澤氏は守備用手袋にオシャレを見出していました。亀のイラストを手袋にプリントしていた亀澤氏は、
と、さりげないおしゃれへの気遣いがありました。
また、他にも手袋には走塁用のものもあります。これは皆さんも見たことがあるかもしれません。プロ野球選手が後ろ側のポケットに入れておいて、ヒットで塁に出たら着ける、アレです。
走塁用手袋を着ける理由は、端的に言えば突き指を防ぐため。
野球では、塁に出たランナーを投手が牽制することがあります。その時、ランナーが塁に戻るのは頭からなので、ヘッドスライディングで手を伸ばすことになります。その時にベースにつく指を勢い余らせてしまうと、突き指や骨折してしまうことがあります。
なので、なるべく手に近い感覚にするために薄くなっている打撃用手袋に比べ、走塁用手袋はスキー用手袋のように厚くなっているケースが多いです。
そして、最近話題になっているのが「鍋つかみ風走塁用手袋」。
従来の走塁用手袋よりも分厚く、より手の安全を守ることができます。
以前からメジャーでは多く使われていましたが、大谷翔平選手が使っていたことにより日本でも普及。現在では投手が塁に出るとこれを着けることがありますね。
源田選手も、骨折から強行出場した際に清水雅治コーチからこれを貸してもらっていました。
おしゃれな選手と手袋の組み合わせ3選
今回も、筆者が独断と偏見で手袋がおしゃれな現役選手を3人選んでみました。
1 松原聖弥選手×青い打撃用手袋
1人目は、巨人・松原選手と青の打撃用手袋です。巨人で青手袋といえば真っ先に浮かぶのは、青い稲妻・松本匡史氏ですが、松原選手も同じ俊足タイプ。
青に銀のラインが入っているのが松原選手のスタイリッシュさを表しているようでとてもいいです。また、松原選手は打撃でもインパクトを残すため、打撃用手袋で選んでみました。
2 周東佑京選手×銀の走塁用手袋
2人目は、周東選手と銀の走塁用手袋です。周東選手の手袋は、銀というよりかは銀と青に赤のラインが入っているすごくカッコいい色合いをしています。さらに足が速い周東選手がこれを着けることでさらにカッコよく、おしゃれに見えます。周りを置き去りにする手袋、いいですね。
3 関根大気選手×赤黒の守備用手袋
3人目は、DeNA・関根選手と赤黒の守備用手袋です。関根選手は守備用手袋を着ける派の選手ですが、その中でも屈指のおしゃれ度を誇る選手だと思っています。
DeNAはユニフォームが青を基調としているので、赤黒の関根選手のグローブには自然と目がいきます。目立ちつつも悪目立ちしているわけではなく、関根選手の守備を象徴する色として際立っており、青のラインが入っているのもまたオツですね。
手袋から紐解いた"おしゃれ"
さて、今回の記事で書いたことを少し振り返りましょう。
手袋は落合氏曰くキャンプでの痛み軽減から生まれたものであり、次第に打撃用だけでなく守備用、走塁用とバリエーションを増やしていきました。写真を見る限り手袋の種類は十人十色で、大谷選手のようにチームカラーのものをつける選手もいれば、周東選手のようにカラフルなものをつける選手もいます。
また、元中日の亀澤氏のように、手袋にこだわりを持っている選手も少なくありませんでしたね。
このことから、
プロ野球選手におけるおしゃれは、本人のエンターテイメントやモチベーションに対する意識の表れ
だと筆者は考えました。
様々な種類がある手袋、細かくて現地では見づらいため、テレビ観戦の時などに皆さんも確認してみてはどうでしょうか。