新企画!プロ野球によく起こる怪我について解説〜肘内側側副靱帯損傷(トミージョン手術)〜
今回から、今シーズンの試合の無い日などに更新する「プロ野球によく起こる怪我について解説」シリーズを始めます。
様々な怪我の名前の指す部位や完治までの期間を調べ、選手の怪我についての記事が出た時に名前だけですぐ分かるような記事作りが出来ればと思っています。
第一回は、これまでに多くの投手が経験している、肘の内側側副靱帯損傷(トミージョン手術)について解説します。
内側側副靱帯とは?
内側側副靱帯とは、膝と肘に存在する靭帯の1つです。膝ならば大腿骨と脛骨、肘ならば上腕骨と尺骨をつなげています。
太ももとすね、二の腕と前腕というような四肢の肝心要の部分をつなぐ役割を果たしており、体の中でもかなり重要な部位といえます。
その中でも、今回解説するのは肘の内側側副靱帯について。
肘の内側側副靱帯は3種類あり、全て言うまでもなくとても強固なものになっています。それぞれ名前を
・前斜走靭帯(AOL)
・後斜走靱帯(POL)
・横走靭帯(TL)
といいます。
なぜ内側側副靱帯を損傷してしまうのか?
では、野球においてなぜこの内側側副靱帯を損傷してしまうのでしょうか。
肘に短時間で強力な力がかかってしまうから
これは野球よりもラグビーや柔道、日常生活においてのケースで多いようです。
自らの動き、もしくは相手からの自分に加えられた動きで腕が外側に開くように持っていかれてしまうと、靭帯が肘を支えきれず、損傷してしまうそうです。
他にも具体例を挙げるなら、歩いている際に転倒し、肘をついた時に肘をまっすぐついてしまい、本来クッションとなるはずの肘に強い衝撃が加えられてしまい、それに耐えきれなくなった靭帯が損傷する、ということがあります。
ストレスをかける回数が重なり、靭帯への負荷が大きくなるから
こちらは野球やバドミントンなど、繰り返し肘をしならせるスポーツに多いようです。
投擲動作では肘を鞭のようにしならせてモノを遠くに飛ばしますが、しならせればしならせるほど力がモノに伝わる分、肘への負担が大きくなります。
そこで、骨と骨が脱臼しないように靭帯がストッパーの役割を果たすのですが、肘の内側では骨と靭帯がとても強く引き伸ばされてしまいます。
もちろん一度ボールなどを投げるだけで靭帯が千切れることは滅多に無いですが、1日何百回と腕を振ることで肘にストレスが溜まっていってしまうんですね。
また、先ほど説明した理由においても、この理由においても損傷するのは前斜走靭帯であることが多いようです。
高校野球では近年一週間の投球数制限が設けられましたが、その背景には靭帯への負荷を抑えるというのも1つありそうですね。
発症したらどうなる?
主な症状
①痛み
上腕骨内側上顆という、肘の先端のあたりの骨の周りが痛くなります。ゴルフ肘という怪我でも同じところを痛めることで有名のようですね。
②腫れ
肘の内側が腫れます。
③関節の不安定感
文字通り関節が不安定に感じるそうですが、肘がぶらんぶらんする、ということでしょうか。
④可動域の低下
③から、肘が発症前よりも動かせる範囲が狭くなります。
⑤音
場合によっては、損傷した際に「プチッ」という音が聞こえるそうです。
手術の方法と完治までの期間
①リハビリ
内側側副靱帯損傷を起こすと肘が不安定になるため、リハビリでは肘周囲の筋力強化を行い、肘の安定性を高めることをします。
そして、再発防止のためにフォーム改善を行なっていきます。
②内側側副靱帯再建術(トミー・ジョン手術)
リハビリでも痛みが取れない場合は、内側側副靱帯再建術、通称"トミー・ジョン手術"を行います。
損傷によって緩んだ内側側副靱帯よりも体から遠い部分に長掌筋腱と呼ばれる手の関節の腱を移植し、骨釘と小さなスクリューを用いて固定します。
手術後には7〜8センチの手術痕ができ、術後4週間はギプスを巻きます。
その後は実戦復帰に向け慎重にリハビリを行なっていき、試合復帰が叶うのは14〜16ヶ月後。そのため、年始に手術を行なってもその年のシーズンは絶望、ということになるんですね。
ちなみに、今回のサムネイルに設定した元ヤクルト・館山昌平氏は現役時代に3回のトミージョン手術を敢行。
1度行うだけで1年の戦線離脱、自身もシーズンを棒に振ることを余儀なくされるので、本当に我慢強い選手だったんだなと思いますよね。
まとめ
肘内側側副靱帯損傷は野球の投手によくおこる怪我の1つで、3種類ある肘の靱帯のうち特に前斜走靭帯という靭帯を損傷してしまうことで発症することが多いです。
発症時は痛みや腫れが伴い、その後はリハビリや場合によっては完治に1年近くかかるトミージョン手術が必要になる時があります。
これを読んでいただいた皆さんにはトミージョン手術に至るまでの背景などを理解していただけたでしょうか。今後もこの企画はやっていきますので、ぜひこのシリーズを読んで野球で起こりがちな怪我についての知見を深めていただければと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。