ベースボール・ファッション〜キャップ編〜
筆者、のぼ〜る広報が野球で使われる用具を紹介しそこから分かることを紐解くことで、プロ野球選手における"おしゃれ"とはなんなのかを追求していく、題して「ベースボール・ファッション」。
第九回は、ファッションにも試合にも、様々な用途で使えるキャップ編です。
キャップの起源
知っているようで知らない、野球のキャップの起源。野球の前身となるスポーツ"ラウンダーズ"がイギリスで生まれ、それがアメリカへと渡り、「ニューヨーク・ニッカーボッカーズ」が生まれた時が初出とされています。
その時にチームのメンバーが被っていたのは、なんと麦わら帽子。1840年代の出来事ですから、今から180年ほど遡ることになります。
その時に着用していた目的は「日除け」。日除けとして最適な麦わら帽子が選ばれていたんですね。
そして、アメリカ北部で発展していった野球は、皮肉にも戦争の力によってアメリカ全土へ広がっていきます。
アメリカで起きた大きな戦争、「南北戦争」。北部は労働力となる奴隷確保のため、南部は独立を求めて戦ったこの戦争の中で捕虜が各部へと移動するうちに、交流の最中で南部にも野球が普及していきました。
その時に兵士が被っていたのが軍用帽。引用する際に適する画像が無かったためセルフで調べていただけるとありがたいのですが、現在の野球帽のように前面に日差しがあり、ある程度型が決まっているんですね。
そしていつでも隊に戻れるよう、野球の最中でも軍用帽を被っていたことがなごり、今でも野球でキャップを被っているのではないかと言われています(諸説あり)。
キャップにも種類がある
ここまで数々の野球用具を取り上げてきましたが、どれにも種類がありましたよね。キャップも御多分に洩れず、高校野球では主に4つのスタイルに分類されると言います。
①丸いイメージを持たせ、深く被れる六方丸型
②角張ったイメージの、六方角形
③クラウンが低いのが特徴の、八方角形
④最も珍しい、ピルボックス型
①の六方丸型は、最もオーソドックスな形です。
頭頂部に止まっている「天ボタン」から6本の筋が引かれており、それが全体的に丸みを帯びていることからこの名前がつけられています。
やはりこの形を見ると、「野球だなぁ」という印象を強く持ちます。
続いて、②の六方角型は、先ほどの六方丸型よりも少し角張った印象を持たせるキャップです。
六方角型は先ほどの六方丸型と仕組みは似ていますが、丸みがなく角張った形をしています。こちらも野球ではかなり見かける形ですよね。
そして、③の八方角型は、「大阪桐蔭のキャップ」と表現した方が伝わりやすいでしょうか。
こちらの形は一昔前に最もメジャーだったキャップだと思います。例を挙げるなら松坂大輔氏が在籍していた横浜高校なんかもここに入るのではないでしょうか。クラウン(帽子の頭を覆っている部分)が低く、潰れているようなイメージがあります。
最後に、最も珍しいと言われているのが④のピルボックス型。
あまりの珍しさに"シーラカンス"という表現を用いる方もいるほどのピルボックス型。大正、昭和、平成と三元号に渡って甲子園に出場した大阪の古豪・一岡高校などがその例に挙げられます。
天ボタンはおろか筋すらないクラウンが特徴的で、横縞三本線はこの学校の野球部を表すのに最も適していると言っても過言ではないでしょう。
野球というよりもゴルフや駅員さんが被っていそうな感じがします。
キャップはその型や色で学校がすぐ分かるので、チームを作る際にもキャップは気にする必要がありそうです。
キャップのジェネレーションギャップ?
そんなキャップですが、このスタイルも時代によって変化してきていると筆者は思います。
その変化してきている点とは、
ツバの曲げ方
です。大正以前のことはあまり詳しくないので触れないでおきますが、昭和から平成初期にかけては、ツバを極端に折る選手が多かった気がします。それこそ先ほどの画像で挙げた中田翔選手しかり、元PL学園高校の前田健太選手しかり、様々な選手がツバを折っていたと思います。
しかし、最近ではツバを折らずに真っ直ぐの状態で使う選手も増えてきました。
キャップは発注して届いた際には真っ直ぐであり、そのままの状態で使うということですね。折らないのは面倒くさいからなのか、どうでもいいからなのか、はたまた買った時の状態にしておくことで初心を忘れないようにするためなのか…真相は定かではありませんが、選手は想い想いの角度でプレーしています。
そこで、今回は筆者が調査をしてみました(この企画ではおそらく初めて)。
週間ベースボールから2023年2月10日に発売された「どこよりも早い!2023年度プロ野球12球団選手写真名鑑号」に載っている支配下登録選手の画像から、ツバを折っている選手と、折っていない選手に分けて数えてみました。角度の基準については明確に定めておらず、筆者の独断と偏見でお送りします。ご了承ください。
また、シーズン途中に移籍した選手や支配下登録された選手についても、2月10日時点での調査となりますので、そちらもご理解ください。
12球団別ツバの曲げ方アンケート
オリックス
という結果になりました。若干折っている選手が多い、という感じですかね。また、オリックスは投手は折っていない選手が多く、野手は折っている選手が多い傾向がありました。
また、ツバを縦に上げて折っている選手もいました。こちらについては考慮しませんでしたが、様々な折り方がありますね。
ソフトバンク
となりました。こちらは顕著に出ましたね。ソフトバンクでツバを折っていない選手のほとんどは外国籍を持っている選手で、多くの選手がツバを曲げていました。
そして、ソフトバンクのツバを曲げている選手の多くはかなり激しめに曲げており、特に今宮選手なんかも強く曲げていました。
ソフトバンクのキャップはツバが二層になっているサンド加工が施されており、そこに理由があるのかもしれません。
西武
※張奕選手、ペイトン選手は画像不足のため除外しています。
先ほどよりもより強く出ましたね。というか野手でツバを曲げていない選手はいませんでした。これもかなり面白い結果だと思います。
ここまで曲げていない選手が多いと、選手たちの好みの角度なんかも気になってきますよね。
楽天
先ほどとは打って変わり、ほぼ一対一という結果になりました。楽天のツバを曲げていない選手は若手に多いような気がしました。貰った時の状態のまま保持しておきたい選手が多いのでしょうか。
ロッテ
こちらも楽天と同様、ほぼ一対一の関係性になりました。また、曲げていない選手でもツバの裏の部分が見える選手と見えない選手に分かれており、そこも面白いなと思いましたね。
日本ハム
こちらはソフトバンクと同じように、曲げている選手と曲げていない選手に大きな差がありました。どちらのチームにも共通して言えることは、ツバが二層になっているサンド加工を採用していること。こちらの方が曲げやすいから曲げている選手が多い、という理由なのでしょうか。なんだかこれで大学の卒業論文を書けそうな気がしてきますね(笑)。
ヤクルト
ヤクルトはまさかの全員がツバ曲げでした。これは筆者も驚きました。これまでは真っ直ぐな選手は1人はいたのですが、ヤクルトはまさかの0。ヤクルトに関しては、真っ直ぐな状態で届いたキャップを曲げるというより、元々曲がった状態で届けられたキャップを自分好みにカスタマイズする、と考える方が現実的ですね。
DeNA
DeNAはこれまた一対一の関係に。しかしDeNAの選手は曲げていてもほんの少し程度であり、かなり「曲げていない」に近い「曲げている」なので、かなり多くの選手が曲げていない状態に近いです。
阪神
阪神もツバ曲げの選手が多いですね。しかも阪神の選手はかなり強めに曲げている選手が多く、かなり極端に分かれていますね。
また曲げている選手の多くは同時にツバを上へ曲げている選手も多く、宣材写真の角度では額が見える選手も少なくありませんでした。
巨人
巨人もほぼ全員が曲げていましたね。曲げていなかったのはメンデス選手、ウォーカー選手の助っ人コンビのみでした。
また、巨人の曲げている選手の角度はピンキリで、坂本勇人選手のようにほんのちょっとだけ曲げている選手もいれば、重信慎之介選手のようにぐにゃぐにゃっとなるまで曲げている選手もいました。
広島
広島もツバを曲げている選手の方がかなり多いという結果が出ました。しかし、これまでのチームと違い曲げていない選手の中にも日本人選手や一軍で躍動している選手もおり、ここに関しては特に関係がないのかなと思いました。
中日
中日もヤクルト同様、ツバを曲げていない選手はいませんでした。おそらく、白いポイントを入れたサンド加工有りの中日のキャップは、曲げないと側からは"ダサく"見えてしまうのかもしれませんね。
確かに中日のキャップは曲げていた方がかっこいい気がします。
というわけで12球団を調べてみましたが、なかなか面白い結果が得られて筆者としては満足しています。皆さんのお気に入りの選手はどっちのタイプか、ぜひ観てみてください。
おしゃれな選手とキャップの組み合わせ3選
それでは、今回もいつものようにおしゃれな選手とキャップの組み合わせを3つ紹介していきます。
1 佐野恵太選手×直線ツバキャップ
1組目は、DeNA・佐野恵太選手と直線ツバキャップの組みあわせ。やはり縦にも横にも体格が大きい選手が直線ツバキャップをすると映えますね。守備でもこの角張ったツバが目立つことで、内外連携の良化にも繋がるかもしれません(多分繋がらない)。
2 髙橋宏斗選手×曲げツバキャップ
2組目は、中日・髙橋宏斗選手と曲げツバキャップの組み合わせ。
選手名鑑で髙橋宏選手のところを見た時には何か胸を打たれるものがありました。異常とも言えるほど縦に強く曲げたキャップ、ですが髙橋宏選手がするとそれもカッコよく見えてしまうんですよね。
ツバを曲げる時、覚悟を決めるために強く曲げていたりするのなら応援したくなりますよね。どんな理由があるのか定かではありませんが、いつか本人にお聞きしてみたいです。
3 益田直也選手×直線ツバキャップ
3組目は、ロッテ・益田直也選手と直線ツバキャップの組み合わせ。
やはり、筆者の中での直線ツバキャップの選手といえばこの人です。抑えの人がこのキャップの被り方をしていると箔が付きますよね。
どうやら写真を見たところツバが真っ直ぐになったのは守護神になってからのことのようなので、もしかしたら本当にそういう理由があるのかもしれません。
キャップから紐解いたおしゃれ
というわけで、今回はキャップについて紐解いてきました。アメリカで起こった南北戦争時に兵隊さんが被っていた軍用帽から野球帽へと発展し、今となってはさまざまな種類のキャップが開発されてきました。
そしてそのツバの角度は十人十色であり、その選手の性格や威厳を表すものとなっています。
このことから、
プロ野球におけるおしゃれとは、用具がその人をどれだけ優雅に体現できるかで決まる
と思いました。テレビ中継では特にチームの守備の時に選手のキャップを観てみてください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
出典・画像引用元
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