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光男の枠下人生〜第9章〜ベローチェDEソロユニット

32Oと書いて「ミツオ」と読む、よし、先ずはこんな感じにしておこう!
と、光男は新しいソロユニットの構想に耽っていた。
「近未来的でいいじゃないか、「ミーツーオー」って記号みたいに読むのもアリだな、、」と、地元のベローチェでアイスコーヒー1杯で粘り倒しながらキャンパスノートにメモを取るその男、ミーツーオーであった。
ミーツーオーのソロユニットは自作のカラオケ音源を流しながらマイクを持って歌うスタイルだ。
曲に入る前に客席に向かって何かしらの小話を織り交ぜたのちに
「あなたは今、寂しくは無いですか?」だの、
「何でフラれてしまうのでしょうかね?」だのと問いかけた後、ひたすら棒で無表情で歌い上げることで何かこの人は実はそうやって目に見えない魔物と戦っていて私達を助けてくれてるのではないのだろうか?と勘違いさせて打ち上げの後にはベッドインを狙う作戦だ。(DA!)
「何でスロット負けてばかりなんでしょうね、、何でスカートを覗いてはいけないのでしょうかね、、ちょっとくらいいいんじゃないんですかね、」
光男の筆が走る。
ベローチェでタバコをバカバカとチンパンジーみたいに死ぬまで吸い続ける勢いで構想を練っている間の光男の脳内はセロトニン、オキシトシン、ドーパミン、βエンドルフィン、ありとあらゆる快楽物質に満ちていた。頭ハネと囁かれるまでの間の鷲巣巌のように、、過去に出会った女性達にことごとく冷たくあしらわれた回数分、普通は男性として成長していく人が多い中、まるでそれとは逆行するように恨み節が重なり続けて行った光男の女性観は深海の澱みの如くネガティヴであった。いつしか女性というのはディズニーランド好きなパンティ履いた生物でしか無いという結論に達した。
そんな恨み節をメロディに乗せてぶち撒けたいという通り魔的発想である。ワンチャン頭のおかしな女性がひょっこり付いてくるかもしれない。更に光男には持論が有って、いかなる理由があろうとも借金の有る人間は自身を含めて人間のクズだと思っている。
だので、光男は自分の事を人間のクズだと思っている。
真っ当に生きた同年代のサラリーマンであれば、50歳にもなれば課長や部長をやっていてもおかしくは無いだろう。現金預金1000万、有価証券5000万、純金積み立て3000万、愛人用マンション3000万、レクサス1200万、積水ハウスの100坪の注文住宅6000万、レジャー&緊急時用キャンピングカー2000万、そうだ、最低でも2億円位の貯えや財産が有ってもおかしくは無いだろう。
きっと夏場は別荘の芝生の上で洗車しながら泡まみれのマイクロビキニギャルに水をかけはしゃいでいることだろう。
夕方からはバーべQだ、お取り寄せのTボーンステーキを豪快に焼きながら
ウィスキーもきっと美味いんであろう山崎だ、そして何処ぞやのレゲエミュージックでも流しながら悦に浸るのだろう。それが普通の50歳のサラリーマンのたしなみに違いない。
それが自分と来たらどうだ、スロットで数十万負けただけで、洗濯機が壊れただけで一気に借金生活に逆戻りしやがるのだ。
これは自分の潜在意識が望んだ世界では無い、違う!
私はレゲエミュージックは趣味では無いから流さないけど、だってお経みたいだし、、私だってそういうお金持ちな日常を過ごしたいのだ。しかし部長とかいう役職は真っ平ゴメンなのでとりあえず金だけ手に入ればいい。そうすりゃやりたい放題だ。
そうすればまた秋葉原のバニーガールの店に行けるではないか、既に跡形も無くなっているけど。
そんな女遊びだってしてみたいものだ。
光男にはそもそも女性という生き物が全く理解出来ていないので、愛するだとか、大切にするだとかの意味や深さが言葉ではなんとなくわかっていても心からのまごころみたいなものは育っていなかった。
「どうせディズニーランドと光GENJI位しか脳内に無いパンティ連中ばかりなのだから、基本とっかえひっかえでいいっしょ!人参でも突っ込んでアレでもしとけばいいんじゃね?」とノートに歌詞を書き込んだ。傍から見れば自己研鑽に耽る中年男性に映らなくも無いがその実、光GENJIが人参娘にドキドキセレブレーションとかの歌詞をベローチェに居座り続け、時折ほくそ笑みながら書いている姿は既にこの世のモノの類いでは無い様にも見えた。前途は多難と言わざるを得ない。「よし、とりあえず光男という名前の頭に何かしら西洋風の苗字を付けてハクを付けないとな!」
これが後の世のポストパンクシーンには全く名を残す事も無く、地元じゃ割りかし優しくて有名なライブハウスの店長からも言葉を無くされる事になるジョン・ミッツオーグの誕生であることはまだ誰も知る由も無かった。
「美術館で会った人だろ?」有名曲の歌詞までパクり出す光男の筆は更に加速して行く、誰か彼を止めてはくれないのだろうか、、、、。





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