知人には言えない話 その1

「俺は家族じゃない」

目の前の光景を傍観していて、心臓から流れていく血が墨汁のような色をして体全体に広がっていくような気がした。

弟と妹の2人がタバコを吸いながら、昨日知った父の病気とこれからについて話している。

それを見てやはり、
「俺は家族じゃない」
となお一層、色を濃くしていく。

12年前に亡くなったお母さんが最初に癌と発覚した頃、実家から遠く離れた場所で大学生活を送っていた。お母さんが癌と聞かされた後も、父から
「お前は大学生をしっかりやれ」
と言われたものの、あまりに状況が分からず不安感に何日も眠れなくなる日を過ごした。そもそもその頃の俺は父のことは大嫌いで信用なんてまったく出来なかったのも大きい。
この頃から少しずつ、少しずつ自分の心の中に表向きと違う裏の自分がいることを自覚するようになった気がする。
今思えば、そのずっと前の幼少期から素養は蓄積されていたとはっきり分かる。
ただ、自覚し始めたのはこの大学生時代だった。

その2へ(予定は未定)

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