『進化のジレンマ・天才の代償』 _笑えない未来の奇瓢集
20XX年。未来の街には「バージョン2.0クリニック」があった。ここに行けば、どんなことでも得意になれるのだ。
小学5年生のノブヒコは、親に頼み込んでクリニックに来た。勉強も運動もいまいちで、クラスのヒーローになりたかったからだ。
先生がノブヒコに聞いた。
「どういう風になりたいの?」
「頭が良くて、足が速くて、面白い人!」
「わかったよ。でも、やりすぎると大変だよ?」
「分かりました!絶対気をつけます」
数日後、ノブヒコは「スーパー・ノブヒコ」に変身した。テストは満点、かけっこは学年で一番、さらにはみんなを笑わせるトーク力まで手に入れた。
だが次の日、休み時間にノブヒコが冗談を言うと、クラス中、笑いが止まらなくなってしまった。
笑いすぎて、お腹が痛くなってしまう人、へそで茶を沸かす人まで現れた。
先生は笑いが止まらなくなり救急車で運ばれて行った。
帰り道、クラスメートのタケシに言われた。
「ノブヒコ、もうちょっと普通になってくれよ⋯⋯」
ノブヒコは「バージョン2.0クリニック」の看板を見上げた。
「じぶんをかえれば、さいこうの未来が待っています!」
ノブヒコは苦笑いしながら言った。
「やりすぎたら、さいこうどころか、困らせるだけだな⋯⋯」
めでたしめでたし?
楽しんでいただけましたら幸いです/•᷅•᷄\୭