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『地面師たち』_時を縫う奇瓢譚 #note書き納め
むかしむかし、とある村に後藤という、非常に弁が立つ男が住んでいた。彼はいつも冷静で、どんなに困難な交渉でも、するするとまとめてしまうことで有名だった。その秘訣は、彼がよく使う決め台詞にあった。
ある日のこと、後藤のもとに、ひとつの古びた家を巡る相談が持ち込まれた。その家には多くの噂があり、果たして売るべきか、買うべきか、村人たちは意見が割れ、何度話し合っても結論が出ず、場は険悪になってしまった。家の所有者も、買いたい者も、互いに譲らず、事態は進展しない。
そこで後藤が呼ばれた。後藤は一言も発せず、静かに双方の言い分を聞いた。そして、日が暮れかけた頃、後藤はゆっくりと立ち上がり、こう言った。
「もうええでしょう!」
その瞬間、場の空気がピタリと止まった。後藤の言葉には、何とも言えぬ重みと説得力があった。それを聞いた双方は、「確かに、これ以上話し合っても仕方がない」と納得し、ついに取引が成立した。
この出来事から、「もうええでしょう!」という言葉は村中で評判となった。人々はどんな複雑な問題でも、この言葉を使えば解決できる!と噂した。そして、この噂は村を越え、町にまで広まっていった。
そしてある日、町で商売をしていた「地面師」と呼ばれるずる賢い商人たちがこの言葉を耳にした。
「この台詞は使えるぞ!」地面師たちはそう考えた。後藤のように取引をまとめるため、この言葉を真似して使い始めた。しかし、彼らは正しい取引をしようとはせず、ずるいことばかり考えていた。そして、次々と人々を困らせていた。
そんな中、一人の賢者が現れた。そして、地面師たちの元へ訪れ、静かにこう言った。
「💢もうええでしょう💢」
その言葉に驚いた地面師たちは、村から一目散に逃げ出してしまったのだった。
それ以来、「もうええでしょう!」という言葉は、ただの交渉のフレーズを超えて、悪事を戒める魔法の言葉として、人々の間で広まりましたとさ。
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めでたしめでたし。