『オリンピック日本代表・奇跡のラリー』_笑えない未来の奇瓢集
タケノリは卓球日本代表としてオリンピック決勝に挑んでいた。相手は中国の天才プレイヤー・李翔。観客の声援が飛ぶ中、ラケットを握ると突然声がした。
タケノリさん、今日もよろしくお願いします⋯⋯あ、タケノリさん、グリップの握り、少し強すぎませんかね⋯⋯いやこちらは全然構いませんけど⋯⋯」
タケノリは仰天した。
「ラ、ラケット!?お前しゃべるのか!?」
するとボールがポケットから飛び出し、控えめに言う。
「あの⋯⋯僕、今日ちょっと表面が乾燥気味で⋯⋯いや全然大丈夫ですけど⋯⋯」
タケノリはツッコむ。
「表面が乾燥?!いやいや、ちょっと待て!そんなことより俺のメンタルが⋯⋯」
試合が始まった。ラケットが小声で囁く。
「タケノリさん、バック狙いがいいかもしれません⋯⋯いや、でも、間違ってたらごめんなさい⋯⋯」
タケノリは言われるがままバックに打った。奇跡的にポイントが取れ、観客席が沸いた!
ボールが回りながら声を上げた。
「タケノリさん、次はもう少し優しく弾んでほしいです⋯⋯その、ワタクシ目立つと恥ずかしいので⋯⋯」
タケノリは叫ぶ。
「俺は道具のメンタルまで管理するのか!!」
しかし李翔の猛攻が始まると、ラケットが急に震え出す。
「タケノリさん、ワタクシもう限界です⋯⋯滑りそうで怖い⋯⋯」
ボールも焦りながら言う。
「タケノリさん、すみません、ワタクシも、次ちゃんと跳ねる自信ないです⋯⋯」
「お前ら、せめて試合中は自信持てよ」
結局、李翔に完敗。タケノリは膝をつきながら呟いた。
「俺、お前たちに気を使いすぎて負けたわ⋯⋯」
翌朝、合宿所で夢の話をすると、チームメートが一斉にツッコんだ。
「道具がしゃべるより、夢の中で負ける方が問題だろ!!」
めでたしめでたし?
楽しんでいただけましたら幸いです/•᷅•᷄\୭