見送りしたくないしさせたくないなと
わたしには歳が5つ離れた姉がいる。
二人で旅行にもいくほど仲が良く、親友のような存在だ。
そんな姉が、愛知から福岡まではるばる一人で来てくれた。
姉は結婚し、子供もいるので、
二人だけでゆっくり遊べる機会はなかなかない。
この日をとても楽しみにしていた。
博多ラーメンを食べ、買い物をし、夜は屋台に行った。
博多駅の人混みの中、
前を歩く姉が手を伸ばしてきたので、その手をつないだ。
昔からわたしは姉と手をつなぐのが好きだったので、うれしかった。
(今でも恋人と腕を組むより手をつなぐ方が好きなのはたぶん姉の影響)
一泊二日は一瞬で過ぎて、
帰りの飛行機の時間が近づき、二人で空港へ向かった。
お土産を一緒に見ながら、
「これほしい?買ってあげるよ」と言い続ける姉をいなし続けた。
その言い方親戚のおばさんにそっくり、とからかう。
(歳を重ねると年下に何か与えたくなるものなのだろうか?)
搭乗時間までまだ少しあったので空港内のベンチに腰掛けて駄弁る。
記憶に残らない、どうでもいい話だ。
しゃべりながら、この時間が終わってほしくないなと思った。
わたしはスマホをチラチラ見て、まだ時間が大丈夫であることを確認する。結局、「わたしが搭乗時間に間に合うか不安になるから」と
わたしが率先する形で保安検査場に向かった。
最後に「またね」とかいい、姉は保安検査に並ぶ列に混じった。
わたしはその場に立って、進んでいく姉を見送った。
いつもはわたしが愛知に帰るために通る場所に姉が入っていく。
見慣れた後ろ姿が人混みに紛れる。
やがて後ろ姿も見えなくなってしまった。
わたしはしばらく立ち尽くした。
こんなに悲しいのか、人を見送るのは。
いつも見送ってもらうことばかりで知らなかった。
まだ話し足りないのにな。
もっと一緒にいたいのにな。
。。。。
我に返った。
わたしは踵を返して歩き出した。
一人暮らしを始めたばかりのころの寂しさに似ている。