【短編小説】拝啓エンドロールの彼女へ#1
スマホのradikoのアプリを立ち上げて、タイムフリーから前日のラジオNIKKEI第2の「RaNi Music Start」をタップするまでが出勤準備をしながらの高橋哲也のルーティンだが、流れてきた曲のイントロが高橋を2003年に連れ戻したもんだから、今日は初めての遅刻になるかもしれない。
いつもの7時50分発の横須賀線上り大船行きに乗り遅れたら、総務課の保原さんに遅刻届の用紙をもらって、直属の上司である羽鳥係長に遅刻届を提出しようかと、高橋哲也は30分後の未来を思い浮かべる。
遅刻届の理由欄は、ラジオ番組へのリクエスト曲みたいだがこう記入するしかない。
〈ロストマン〉
JR衣笠駅の改札口に向かって、2024年11月23日に舞い戻った男が冬支度を済ませた商店街のアーケードの中を力強く駆け抜けた。
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グラシアス!