書籍『楽しいの作り方』#11 「あまり働こうとするな」の真意
今回は#10からの続きです。
モルック体験をしている子どもの横で、一緒にしようとしないお母さん。でも、そのお母さんが悪いのではなくこの時、実は邪魔だったのは一生懸命モルックを子供にさせている僕だったというお話。
詳しくは、#10を読んでみて。
例えば、皆さんが子を持つ親だったとして想像してみてください。
イベント会場の体験ブースで遊び場がありました。そこにはカラフルな飛び石や公園とかで使えそうな遊びものがたくさんあります。アナタはそれを見て、そこは誰向けのものだと思いますか?
その中にモルックの体験ブースがあります。そこには常時教えるスタッフが立ってます。体験したい方に順々にモルックを丁寧に教えていって、木の棒を投げさせてあげて、拾ってあげて、手渡してあげて、また投げさせてくれます。アナタはこれは誰向けのものだと考えるでしょうか?
子供向けの体験ブースかな?と思いませんか?
そうすると「私がしちゃうと他の子が順番待ちしちゃう」とか思いませんか?または、後ろにきた親から「子どものブースであの人大人のくせになに出しゃばってんだ!」と思われるんじゃないか?と心配になりませんか?
つまり、この時のお母さんもそうだったんです。このモルック体験ブースは子ども向けの体験ブースだと思ってたんです。だから遠慮していたのか、本当に別にやりたいと思わなかったのか。真意は分かりませんが、ひとつ確かなことは、僕がその場を離れた途端、親子で楽しそうにモルックをし始めたということです。
僕が居なくなると、子どもはポツンと一人になります。そうするとさすがにお母さんも一緒に遊んであげなきゃと思ったのか、もしくは私もしていいんだ!と思ってやり始めたのか。どちらにせよ親子一緒に楽しく遊ぶんだからその方が僕がずっとつきっきりでするよりもいいに決まってます。だからこの場合、僕が邪魔だったということです。
この経験から、僕は遊び場の運営スタッフに「あまり働こうとするな」と言うようになりました。働こうとすればするほど、子どもと遊んであげようとします。そうすると、この場が”そういう場所”になっちゃうんです。若い学生スタッフが子どもと遊んであげる場という風になります。そうすると、来場者が公園で自由に遊んでいる画にはならないし、そもそもスタッフの数=子どもを捌ける数になりますので、圧倒的にスタッフが足りません。
間違ってはいけないのは、遊び場というのは環境の提供です。ここがサービスの提供に寄り過ぎてしまってはダメなんです。遊び場はみんなが楽しく遊ぶための動機づけを提供する場であり、”遊んであげる”場所ではないんです。
じゃあ遊び場の運営スタッフはどう働けばいいのか?ずっとサボってていいんですか?そういうことではありません。何をするかというと、やっぱり色んな遊びものの遊び方を教えてあげることに変わりはないんです。しかし、ちゃんと良きところで去っていきなさいということです。
そして周りに目を配りなさい。アナタの仕事はそこです。という訳です。
#12に続く