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人にはどれだけの金融資産が必要か

トルストイのパクリタイトル。
さて、収入は手取り360万円で一家4人で暮らせる、と言い切ったが、貯蓄はどうか。

FIRE理論では年間支出の25倍の金融資産を持てば、利回り部分だけを取り崩すことで元本を減らさずに、他の収入が無くても永遠に暮らせる。年間支出が360万円なら9千万円の元本があれば良い。

 いやいや、さすがに9千万円あったら十分すぎるよ。
 っていうか一生かかってもそんなに貯められないよ。

ではいくら貯めたら安心なのか。
 最低でも90万円、65歳時点で2880万円、である。以下、この試算について書くよ。

そもそも、何のために貯めるのか。
生まれながらにケチで通帳の数字が増えることが何よりの楽しみ、というタイプは置いといて、大多数の人は、お金を使いたいし、将来困ることも避けたい。後になって困ることをなんで今困るのか?というアライグマくん(@ぼのぼの)の問いも今回は置いといて。
備えなければいけないのは「不運」と「老後」だ。

不運に備える

給与所得者で普通に働いていれば、犯罪と関わらない限りは解雇されたりしない。つまり毎月の収入はほぼ保証されている。
なのに、人はなぜ貯めなきゃと思うのか。
人生には、病気や事故で働けない上に医療費も必要、とか、住まいと家財が火事や災害で台無し、といった突然の不運がありえるから、備えが必要なのである。貯蓄ではなく保険、という備え方もあるが、火災や交通事故はともかく、医療保険は分が悪い。

なので、医療保険のつもりで自分で貯めておく必要がある。
資産運用でよく話題になる「運用しない普通預金がどのくらいあれば良いのか」という数字が参考になるかもしれない。
よく言われるのは「カードや公共料金の引き落としが滞らない程度の金額があればOK」から「病気やケガで働けなくなる場合に備えて生活費2年分」まで幅広いが、不運に備えるのであれば、ひとまず3ヵ月分の生活費、年間支出が360万円なら90万円の貯蓄が最低限のラインだろうか。生活費2年分だと、年間支出が360万円なら720万円の貯蓄ということになるが、なかなかハードルが高い。

老後に備える

給与所得者はいずれ退職する。退職後は年金をもらえるが、年金だけで生活をできる水準ではないと言われているため、貯蓄をしておいて、そこからの取り崩しも想定しておく必要がある。年金受給額も支出規模も個人差が大きいが、何十年も先を想定するため、かなり保守的に見積もっておくのが安全であろ。
年金受給額を月額手取りで13万円、支出は現役時の70%と言われているので、年額252万円、月額21万円とすると、毎月8万円が不足する。65歳以後、95歳まで生きると仮定すると30年間なので、2880万円の不足だ。
なかなか絶望的な金額だが、現役の40年をかけて65歳までにこの金額を貯めれば良いので月額6万円、年72万円を貯蓄できれば足りる。つまり、年間支出360万円なら、手取り432万円、年間72万円を貯蓄に回す生活を継続できれば一応は生涯足りることになる。退職金があるなら、もう少し貯蓄が少なくても良いが、それもせいぜい数万円であろうか。また、年金受給額がもっと大きい、あるいは65歳以後も年金以外の収入があれば、さらに貯蓄は少なくても良い。
経済評論家の山崎元氏は、勤め人なら手取り収入の2割、フリーランスなら手取り収入の3割を貯めれば合格水準、という立場だ。

手取りの20%はかなり大きいが、夏と冬のボーナスがそれぞれ月額報酬の1.5倍なら、ボーナスを全額貯めれば手取りの20%を貯めるのと同じことになる。
生涯平均の手取り月収という仮定の数字が必要になるが、老後の年金収入額や老後の生活水準を想定して、今いくら貯めれば良いかはFPの岩城みずほ氏のサイトで計算できる。

ということで、表題への解は、最低でも90万円、65歳時点で2880万円。さあ、がんばって貯めようか。