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退職後の資産運用と取り崩し

退職後、年金収入は現役時の稼ぎよりは確実に減る。つまり、自分の資産を食い潰していくことになる。
いくらまでなら使えるのか。最後までお金に困らない方法は無いか。ちょっと考えてみる私は52歳。

資産運用は大前提として、「歳を取ったら個別株みたいなハイリスク資産はやめて、投資信託や債券のようなリスクの低い運用にすべきだ」という言説が多数派のようだ。例えば、リスク資産の割合は「100引く年齢」というようなことが言われる。

債券を買うということは、簡単に言うと「金貸しになる」ということだ。貸し倒れリスクは、もちろんあるが、貸すときに約束した金利が保証されるから株より低リスクと言われる。実際には債券にも市場が存在し、不動産市場並みに個人と機関の情報格差が激しい。貸し倒れそうもない堅実な貸出先の債券は大人気で、機関投資家が瞬時に買い占める。この時点で個人の投資先としてダメ。しかも、人気が無い(債券が売れ残りがちな)信用が低いところは買ってもらうために金利を上げる。金利分だけ貸し倒れリスクも上がる。逆に堅実そのものな先進国の国債などは、利回りがお話にならないほど低い。個人が本気でリスク回避するならメガバンクの預金とネット銀行の高利回り預金で十分だ。

そもそも高齢になったら資産のリスク回避は必須なのか?
損しても働いてリカバーできる若者と、損しても容易には働けない高齢者では、リスク許容度が違うと言われる。でも、少々運用益がマイナスになってもリカバーできるレベルの金融資産があるなら、安全策を講じるのはむしろ資産を減らす。資産を増やすチャンスを逃しているからだ。年金の足しにして取り崩し、亡くなる頃にちょうどゼロになるようなカツカツの資産であれば運用は厳しいが、それよりゆとりがあるのなら年齢など理由にせずとも株式運用を継続して良いはず。

もう一つ、老後資金の取り崩しで、「定額では無く定率」を主張する人も多い。資産運用の結果にはどうしても波があるので、資産額から定率で取り崩せば運用結果に関わらず資産額を維持できる、という理論である。

一見なるほどなのだけど、富裕層ではない一般の人にとっては役立たずの理屈だ。株価が低迷しても家賃は一定だし、資産額に応じて食べる回数を減らすわけにもいかない。逆に、資産運用が大きくプラスになっているからと月に100万円取り崩せるとして、実際にその金額を丸々使ってしまうことができるだろか? 少しは使うけどマイナスに備えてセーブするのが自然な気持ちではないだろうか。
仮に数億レベルの小金持ちだとして、さらに運用が上手くいって月に300万円取り崩せるとして、生活に必要な金額の残りは資産運用に戻すのではないだろうか? 現金のままじゃ増えないし、数億あるならリスク回避する理由も無い。定率取り崩して、その分はあるだけ使う、という無計画さはいただけない。
と考えると、資産運用方法に年齢は関係無い、必要な時に必要なだけ取り崩す、という方がすっきりわかりやすい。

お金はあの世まで持っていけないけれど、消費するかしないかは投資とは別の問題であり、個人的な好みで決めることだ。
もっと使えば良かった、と後悔したくなければ使えば良い。逆に、使いたくもないのに無理に使う必要もない。お金がいくらあっても、自炊が一番満足できる、という人もいるし、高価な和牛よりオーストラリア牛の赤身肉が好き、という人もいる。

取り崩し方の悩みは、数字の上では小学校レベルの四則演算で解決することだ。悩みの本質は、自分が何にお金を使ったら満足なのかを知らないことに尽きる。
周りに流されず、本当に幸せを満喫できる「自分向け福利厚生」をさっさと見つけよう。

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