最近の二の腕事情。
ある日、自宅風呂の脱衣所で自分の腕を見ながら
「あれ?私の腕、こんなにへこんでたっけな?」
と、思ったのだった。親指で思い切り押し付けたような、へこみがあってその上のほうを触ると、しこりのようなゴリっとしたものがたしかにそこにあった。
「変だなぁ」
と、思いながらもやり過ごして、ある日皮膚科を受診した際に医師に相談すると
「紹介状書きますね」
と、言われる。以前私が勤めていた場所にほど近い大学病院に受診する事となり、血液検査だのエコーだのを行い、それでもはっきりとした事がわからないので
「うーん、よくわからないから、一応やっとくか」
と、先生が私の上腕部のしこりを触りながら、明るく言った。
そして、数日前に皮膚生検。
「はい、名前と生年月日を言ってくださいね」
とベッドの横から医師が言う。名前を告げると、先生は太い油性マジックを取り出し、私の腕に印をつける。
「ここを切りますからね」
そう言いながら局所麻酔の準備もすすめられていく。
「はい、けっこう痛いですよ、ごめんなさいねー」
と、言いながら腕に麻酔をこれでもか、と打っていく。最後の方は腕の痛みが無くなっていた。
まるで工作のように、腕が切られて、奥まで何やらほじくられているような感じだった。ときおり痛みが走るたびそれを告げると、麻酔が追加されていった。痛みは伴わずに触られている感覚はあった。そんな時、執刀医に電話がかかってきたようで、他の看護師さんがそれを伝えに来る。
まるで今すぐに中座するような雰囲気もあり、ひやひやしたが
「あと数分で終わるから」
と、先生が電話に出ることを断ってくれて助かった。そのほかにも、だいぶん深刻な話をしている人たちの様子が丸々聞こえ、私はここに存在するのに、まるで透明人間になったかのように、身を潜めていた。
「明日はお風呂で優しく傷口を洗ってあげてくださいね」
との事だった。腕は縫い合わせた糸が黒いので、まるで海賊にでもなったかのようにも見えた。
洋服に隠れているので、見た目に痛みが伴うような傷があるとはわからない。帰り道の公共機関ではそういった意味でわからずにぶつかったり接触してしまったらどうしようと、どきどきした。
麻酔が切れ始めると、なんだかじわじわ痛みが伴うようになってきた。
翌日のお風呂では腕が少し腫れているのがわかった。
でも、傷跡はけっこう気に入って何度も見てしまった。割と嫌じゃ無い。抜糸は来年。診断も来年だ。