運転寿命がのび太第三話
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第三話 令昭デジアナ合戦絵巻
最新のニュースです。
さいたま市にこの度、高齢者運転免許試験場が新規に開設されました。
ここでは、主に高齢運転者の免許更新時実地試験を担当します。
開設に当たり、デジタル操作推進学会から提案された、デジアナ操作競技会が開催されました。
踏み間違い事故の対策は、交通行政としても難問でした。デジタル操作を提案されても、その有効性が立証されていなければ、採用の話にはなりません。この競技会の結果として有効性が見えてくるか、藁をも掴みたいものと思われます。
ここ数年間、高齢者免許更新時の実地試験に、左足ブレーキで受験する運転者が、一割から二割に達するというデータが得られた事が、このイベントを後押ししています。
競技会は、デジタル操作派と、従来型にこだわるアナログ操作派で競い、実際にどちらが早いか、短い距離で止まれるか、競争してみる事になったのです。
アナログ操作派は多数いますので、競技応募者の確保に問題はありません。しかし、デジタル操作派が集まるのか心配されていましたが杞憂でした。30代、50代、70代、男女各3名の出場者が2週間程の期間で決まりました。
直線で60mの2つのテストコースに、10mおきに数センチの段差プレートが固定されています。
競技車両には、最新のドラモニが装備されていて、運転操作を記録します。
競技はデジアナ各1名ずつが同時にスタートします。
スタートフラッグが降られると、運転者は18km以上スピードを上げ、段差乗り越えの振動を感知したら急停車します。段差プレートから停車位置までの秒数と距離測定が行われ、更に急発進して18kまで速度を上げ、次の段差に向かいます。5回繰り返して、切り替え時間と段差からの走行距離を合計します。
これは、高齢者免許更新時の課題にある、段差急停止テストの応用です。
現場中継が始まりました
現場中継アナ 「皆さんおはようございます。本日はさいたま市にある、新設された免許試験場から中継でお伝えします。こちらは、国道16号近くに新設された、広大な試験場です。さて、それでは出場者の声を聞いてみましょう。
まずは、D1のゼッケンを付けた30代の男性です。こんにちは。発進前のお気持ちはいかがですか。」
D1番 「はい、今日は。ようやくデジタルの出番ですね。車好きで運転の上手い連中は皆んな左足ブレーキですよ。私もレーサーに憧れたくちですですから勿論左ですよ。レーサーの世界ではね、180k出すと1秒に50m走っちゃうんです。でも、危険もチャンスも10m以内なんですね。てことは0.2秒で判断と制御するんです。切り替えてたら、命幾つあっても足りませんよ。レーサーの世界では、ブレーキ制御は左が常識なんです。」
アナ 「オー、格好いいですね。では次にアナ組の30代、A1番さんはどうして出場したのでしょう。」
A1番 「私、運転歴はまだ5年なんですが、オートマだけで取ったのです。左足を使う感覚が全くありません。これを否定されちゃうと困っちゃいます。ですから意地でもアナログ式の早さを見せてやりますよ。」
アナ 「なかなか頼もしいですね。では、デジ組の50代は、溌溂オバさん、D4番さんの登場でーす。」
D4番 「私、この日の為に、お洒落してきたんですよ。ホホホ。ペダル操作は、デジタルの時代なんですー。右足だけでアクセルとブレーキを切り替えるなんて、なんてアナログなんでしょ。こんなの、昭和の時代の遺物なんですから、早いとこ、アナログジジイは消えてもらわないと。
デジタルのペダル操作はネ、単純な二刀流に慣れる事なんです。大谷選手の偉業に少しあやかれるのですー。二刀流、つまり、アクセルは右足、ブレーキは左足で踏むんですよ。単純にON、OFFするだけ。これがデジタルの切れ味なんですー。
右目と左目でそれぞれチクッとウインクするだけのイメージよ。
それにね、夕方のスーパーの駐車場、混み合う通路で、バック駐車でモタモタしてるオジサン、オバサン多いですよね。後ろを気にしちゃうと足首の動きが飛んじゃうのよね。だから、アナログ方式は、とっても不安なんですよ。
でも、二刀流でデジタルスイッチにすると、とっても楽よ!。
後ろを気にしながらでも、切り替えないから、乗ってるペダルがどちらか気にしなくて良いんです。スピードがメッチャ早いし、間違える心配がゼロなんですよー。
両足を使うと、とってもバランスが良いの。歩行も両足だし、ダンスだってそうでしょ。
でもねー。暗い時に練習しちゃだめよ。昼間、モールとか、スーパーの空いてる駐車場で練習するのといいわね。あっという間に馴れちゃうんだから。」
アナ 「すごい勢いですね。それでは、今度はアナ組の50代、A4番さんです。」
A4番 「右足の切り替えは、すっかり馴染んでいますから、今更ですね。むしろ、左足方式で混乱が起きるのを心配しています。親はもう運転していませんから心配していません。」
アナ 「何と冷静ですこと。次はデジ組の70代、D7番さんです。」
D7番 「左足ブレーキ歴は結構長いんですよ。何時からだったかなー。兎に角、信号待ちで右足で踏んでいると、てとても疲れるんですよ。それで停車中に左足に代行させたら右足がとても楽になったんです。スタートの時は、クラッチを離す要領と同じですね。何しろマニュアル車の経験が長いですから、クラッチの感覚に目覚めましたね。左で止めに行くのは、スタートに慣れてからですね。渋滞にハマった時なんかも楽ですね。
慣れるまで混乱しないか心配でしょうが、意外に簡単に慣れましたよ。切り替えの判断でバタバタやる事考えると余っ程簡単だと思います。狭い路地で、飛び出しを警戒して通過する時は、何時でも止められますから安心ですよ。」
アナ 「それでは最後に、70代元気オヤジ、A7番さんの激白です。」
A7番 「俺が何年運転を続けてきたと思っとるんじゃ。五十年だぞ。その間、右足でアクセルとブレーキを切り替えて、ペダル操作してきたが、何の不都合もないのだ。踏み間違える奴は、トロイだけなのだ。それにな、年繰ってから操作手順を変えるなんて無理無理!今のまんまでいいのだ。
それにだなー。お上が決めた操作方法に楯突いていいわけが無い。俺は熱烈な、右足統一教の信者なのだー!。俺は昭和のアナログ大好きジジイなのだ!日本には、俺みたいなのが8000万人も信者がいるんだぞー!。何にー!段差ストップ競争だと!俺に敵う奴がいるわけがない。」
アナ 「さいたま市にオープンした、新しい運転実技試験場から中継です。
既にスタートラインには2台の教習車が待機しています。右ラインには従来型右足切り替え方式コース。
左にはデジタル二刀流のコースです。会場には、D1番からD18番、A1番からA18番までのゼッケンを付けた出場者が待機しています。
コース周辺には観客も集まっていて盛況ですねー。
あ、各車両にD1番、A1番のゼッケンを付けた競技者が乗り込みました。助手席にはそれぞれ教官が乗り込んでいます。さあスタートです。
フラッグが振られ、各車スタートしました。加速していきます。
流石に若い世代の急発進と急停止はスムーズですね。あっという間に終了です。」
アナ 「今度は50代のレースが始まります。それでは、レース車に同乗させて頂き、運転操作を見学させて頂きましょう。まずは、デジタル車を覗いてみましょう。」
アナ 「さあスタートしました。デジタルオバサンD4番さんも華麗にアクセルを踏んでいます。
アクセルを踏んで18kになりました。1回目の段差ですー。左のブレーキがスイッと出ます。
ハイ今度は2回目に向かいます。右足でアクセルに行きまーす。
加速18k、二段目行きまーす。ハイ段差、ブレーキがスイッと出ますネー。」
教官 「なかなかスムーズですね。」
D4番 「何と言っても、ペダルがどっちだか迷わなくてすむので早いんですよ。右足も左足もバランス良く動くので快適ですよ~。」
アナ さあ次はアナログ車を覗いて見ましょう。A7番さんに同乗させてもらいます。おっ、アナログオジサンが華麗にアクセルを踏んでいます。今18kになりました。」
A7番 「ホイ、段差振動だぞ!それ、ブレーキに右足を切り替えてと。踏んだぞ。どうだ!止まったろ。」
教官 「駄目ですよ。止まってちゃ。次のステップに急いで下さい。段差は10m間隔ですよ。さー急いで。」
A7番 「分かったよ。急いでアクセルにきりかえて、と。それ行けー。アッ段差だ。ソレっ、切り替えて、急ブレーキだ。よーし急発進だ。これを5回もやるのかい?だんだんこんがらがってきやがった。」
教官 「駄目ですよ。休んでちゃ。ハイ、5回終了でーす。段々停止距離が長くなってましたが、踏み間違いは無かったですから良かったですね。」
A7番 「こーんな競争させやがって。」
教官 「記録でーす。平均1.2秒でーす。走行距離は平均2.5mと出ました。18kでは5m進みますから、速度半減でカラーコーン3mの直前でした。何とかセーフでーす。」
アナ 「何とか競技会は終了です。記録が発表されました。トータルの平均値は、デジタルグループが、0.5秒の0.8m。アナロググループが1.5秒の、の2.8mと出ました。
デジアナ合戦の結果
段差急停止、急発進の練習コースの存在は、結果として、日常的に運転能力をチェックする項目として、十分使える方式として採用される事となりました。各地域に、テストコースが指定され、10m間隔に段差が設けられています。各自がハザードランプを点滅しながら、適宜自分の車で走行、急停車、急発進の練習を繰り返してモニタに記録します。モニタからは、データがスマホに転送されますから、後でゆっくり自分の操作記録を確認できます。
この方式が定着するにつれ、自宅の駐車場は勿論、マーケットや公共施設の駐車場には、段差プレートが義務付けられ、日常的にブレーキテストが実行される様になりました。
デジアナ合戦の評判
デジアナ操作競技会の結果と評価について、翌日の新聞紙面にはこんな記事がでていました。
2024年9月に行われた、デジアナ操作競技会は、これまで無策だった踏み間違い事故対策に、1条の光がさしたものになりました。
競技会では、これまでのペダル右足切り替え方式を、昭和的アナログ式だと断定し、左足ブレーキ操作の優位性を主張するデジタル推進のグループと、現状方式に問題は無いとする、アナログ保守グループとの、実地試験場での競争対決なのでした。
デジアナ各グループから、30代50代70代の各3名ずつ、18人が出場し、10mおきに段差プレートを置いた直線60mの2つのコースで、急発進、急ブレーキの操作スピードを競いました。
結果は歴然としています。
段差衝撃から停止までの平均時間と進行距離は、デジタルが0.5秒と0.8mに対して、アナログでは1.2秒と2.8mとなっていて、デジタル派に軍配が上がっています。また、年代別の差が意外に小さいのが分かりました。
この結果について、デジタル推進グループでは、次のように解説しています。
ペダルの切り替えには、右足の左右の帯状骨格筋の素早い収縮運動が必要で、踏み込みには上下の帯状骨格筋の動きが必要です。上下の運動は、歩行運動で維持できますが、左右の動きは普段使わない筋力であり、相当激しい運動を続けないと維持できません。
これに対し、左足をブレーキに使用するデジタル方式は、両足の上下帯状骨格筋のオンオフ運動だけで操作出来ますので、通常の歩行運動で維持できます。この差は、高齢化する運転者にとって朗報と言えます。歩行運動の継続で少し運転寿命を延ばせるのです。
これに付け加えるポイントがあります。これは、運転ロボットを開発する過程で判明した事ですが、切り替えるメカニズムとペダルを判別するプログラムは膨大な費用がかかり、しかもその動作には信頼性が低いのです。人間だから出来る動作ですが、ペダルの判別という安全に係る項目が抜け落ちていて、しかも余りにコスパが悪いのです。
コスパを気にする若い世代が、これを唯々諾々と受け入れている現実はいかがなものでしょうか。
勿論、デジタル式で安全が確保出来る訳ではありません。身体能力は日々変化します。従って、免許更新時のチェックに加え、日常的なチェックの体制が必要であり、今回の様な競技会や、急停止練習コースの整備と、運転操作を監視するモニタの開発普及が望まれます。
足の動きは無視されていた。
本紙の取材によると、上記の解説ポイント、ペダルの識別が無視されていた経緯は重要です。何故なら、事故の殆どは足捌きによるものだからです。
交通事故のワースト1は追突で、2が出会いがしらの衝突、3が右折時衝突 、4が道路を横断する歩行者と車両の事故、なのですが、これらは全て、足捌きの遅れや意思に反する動きが原因です。
歴史的に、運転はハンドル捌きに重点がおかれ、運転する人を『運転手』と呼んできました。足先の運動力は殆ど無視されてきたのです。
現状の右足切り替え操作方式は、何らかの科学的根拠に基づくものではなく、単にマニュアル時代の踏襲に過ぎなかったのです。左足のクラッチを踏む事の疲れがあって、左足が楽になったとはいえ、その分右足の負荷が増大した事は無視されてしまいました。
従って、足の動きは思いのまま動く筈だという、一種の信仰に近い、思い込みでクルマ社会が形成され、運転教習が実施されてきました。
アナログ保守派のオジサンが独白していましたが、右足統一教は根強く運転者の社会に根付いています。気安く選挙応援をしてくれたのでついつい頼ったつもりが、ドップリと浸かってしまった自民党の先生方と同じ構図です。そして、事故が起きます。
『運転寿命を延ばすには、サッカーのドリブルをやれ!』とか、
『運転寿命を延ばすにはタップダンス!』こんな標語が出来るかもしれません。
サッカーの三笘選手のドリブルの上手さは有名です。屈強なデフェンスをかいくぐり、巧みな足さばきでボールを左右にコントロールします。そこまで上手くなくても、足の機能は歩いたり走ったりの機能に加え、素早い足首の動きこそ、運転寿命のカギになる事が分かってきました。この年でそんなの無理とおっしゃる皆さんでも、足首の上下機能だけでコントロール出来る、左足ブレーキのデジタル方式を習得すれば、歩行運動を継続する条件付ですが、運転寿命を少し延ばす事が出来るのです。
次号予告
第四話 踏み間違いは硬直だった
ドラモニが人命救助を記録してくれました。右足が硬直してアクセルを踏み続けたのに、左足でブレーキも踏んだので、人身事故を防ぎました。事故の原因を、踏み間違いで片付けてきましたが、実際は硬直だったのです。
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