見出し画像

運転寿命がのび太第二話

第二話 ドラロボコンボイ発進



#創作大賞2024   #ビジネス部門
#運転寿命 #踏み間違い事故対策
#運転ロボット #モーニングショー

ドラロボコンボイ発進

最新のニュースです。
昨日、注目されていた、長距離トラックのロボットコンボイが実際に走り出しました。試験走行の段階から、高速道路を使用した実用化試験の始まりです。今回は、宮城県の流通センターから、埼玉県内の流通センターまで、3台の大型トラックが隊列を作って走行しました。先頭車両には人間の運転者が先導し、後の2台には、N社の誇るロボットドライバーが運転しました。
ロボット運転と、自動運転車両の違いは、運転席にロボット運転者がいる事です。ロボットは、人間と同様の運転操作をします。しかし、このロボットは、先導車両の走行映像と操作データをなぞるだけで、自分でコースを決める事は出来ません。単独走行も出来ますが、決められた走行映像を同じ様に走行するしかプログラムされていません。
今回の試験走行でも、助手席には監視員が同乗し、何時でも緊急時用のブレーキボタンを押せる体制になっていました。
コンボイは、基本的に流通センター間の物資移動に限られています。首都圏にある流通センターから、個別配送は従来通りの人間運転者が担当します。
それだけでも、従来型の長距離トラックの輸送の前途に希望が持てる時代になりました。
高速道路を使用した、長距離輸送は、単調で繰り返しの多い長時間の労働でしたから、ロボットが代行してくれる事で、運転者の負担が軽減されます。
 オッ、ドラロボが何か言っていますよ。
「オレは、金魚のフンじゃないぜ!ロボットだぜ!」


服部モーニングショー

服部 「皆様おはようございます。服部モーニングショーの時間です。
今朝は、こちらのテーマからスタートいたします。
昨日の注目すべきニュースが伝えられています。物流の2024問題と言われていた、労務の問題に朗報です。
ついに、ロボットコンボイがスタートしました。
今日はこのニュースを元に、踏み間違い事故対策の新しい取り組みについて考えてみたいと思います。
今日は東京大学大学院で運転ロボットの研究をしてきた、梶木先生にお越しいただきました。先生宜しくお願いします。」
 梶木 「梶木です。こちらこそ宜しくお願いします。」
 服部 「さて最初のシールを剥がすと、ロボットコンボイ発進、とあります。それで先生、昨日のロボットコンボイのニュースをご覧になり、どんな感想だったでしょうか。」
 梶木 「はい、いよいよ運転ロボットの出番になったな、ですね。」
 服部 「自動運転ではなく、何故運転ロボットなのでしょうか。」
 梶木 「ニュースでも説明されていましたが、自動運転の車は、AIを活用して何処にでも勝手に行きたい要望に応えるものです。高価なコンピュータのオバケに車輪の付いた新車を買わなくてはなりません。これに対し、ドラロボの一番のポイントは、現在使用中の車両を、少し手を加えるだけでそのまま使用出来る事ですね。
今回のドラロボコンボイは、先頭車両は人間の運転者が運転し、後続の2台はロボットが運転しました。
ロボット達は、先頭車両の動きに追随するだけですから、充分ロボットで対応出来ます。」
 服部 「この実験は今後どの様に展開されるのでしょうか。」
 梶木 「そうですね、ドラロボは、ドラモニという運転者の操作モニタを徹底的に活用しています。ドラモニは、今困っている高齢運転者の事故対策に主眼を置いて開発されましたが、これをうまく活用すると、人型ロボットの外部監視が出来ますので、運転ロボットの信頼性を高める事が出来ます。
ドラロボが活躍するようになると、現実に迫っている運転者不足、返納者の足の確保や、全国で問題になっている路線バスの運転代行等に活躍が期待されています。」
 服部 「先生の研究で開発中されたムサシ君はどんなロボットなんですか。」
梶木 「ムサシ君は、所謂人型ロボットでありまして、運転席に座り、両手でハンドルを操作し、右足でアクセルを、左足でブレーキを操作します。それと、ロボットを操作する制御部で出来ています。実際に運転走行するところまで完成しています。」

 服部 「それでは、次のテーマのシールを剥がします。ドラロボとドラモニの違いは?とありますが。これらの違いは何処にありますか。」
 梶木 「そうですね、今回開発された、ドラモニはドライバーやロボットの動きを監視し、制御する目的で作られています。ですから、正しく動けば良いのでは無く、かなり厳しい動作スピードの基準が課せられています。
例えば、段差に乗り上げて急停止する課題について見てみます。
高齢者免許更新で課せられている課題ですね。
ロボットは左足でブレーキを踏みますから、乗り上げた後、0.2秒で停止出来ます。両足同時に操作出来るからです。停止距離も殆ど1m以内です。
ところが、脚部が弱ってきている高齢者では、乗り上げた衝撃の後にペダルを切り替え、停止までに1秒以上かかる人が5割を超えるデータがあります。
中には、5m先のカラーコーンを飛ばしてしまう人も二割ぐらいでしょうか。
ドラモニはこの切り替えスピードを日常的に監視し、計測して、一秒以上ではイエローカード、1秒半を超えるとレッドカードを出します。つまり不合格です。」
 服部 「すると、ドラモニは、免許返納を迫るのですか」
 梶木 「そう解釈する人もいるでしょう。でも、ロボットを見習って左足ブレーキに挑戦する人も増えます。現に、高齢者免許更新の実技試験では二割の人が左足ブレーキで受験しています。」
 服部 「でも、左足のブレーキは、教習所でも教えていませんし、なんか不安がありますね。」
 梶木 「確かにそうですね。ですが、左足の感覚は、マニュアル車のクラッチ経験の長い高齢者程、飲み込みが早いそうです。それで、踏み間違いを恐れる運転者のかなりの数の人が、左足ブレーキに挑戦し、慣れてきているという事です。いずれにしても、運転実技は、免許更新時に一時的にチェックする現状から、日常的にチェックする時代に転換するということです。」
 服部 「でも、左足を使えば完璧と言える話しではないでしょう。」
 梶木 「そうなんです。現状の切り替え方式こそが一番の難問なんです。
何故なら、切り替えてペダルを踏む際、ペダルの感触にアクセルとブレーキの違いがないのですね。どっちを踏もうとしているのか、識別信号が無いのです。唯一、ペダルに乗せる前の動作の記憶が、右側か左側かの曖昧な記憶に頼るしかありません。
本来ならば、電車の運転士の様に、『ブレーキようし』と、ブレーキペダルを指差し呼称してからペダルを踏むべき、最も重要な確認事項なのですが、現実には、その確認無しに、『多分』のレベルで判断して踏んでしまいます。踏み間違いは当然起こります。」
 服部 「ムサシ君は踏み間違いはしないのですか。」
 梶木 「我々で開発したロボット、ムサシ君も、当初は、右足切り替えで設計してみたのですが、一軸で右から左に回転させ、ペダルからの確認信号を受けて踏み込むという動作をさせるには、サーボモータを5個も連続して動かす物凄いメカニズムと、信号を同時に多数処理する膨大なプログラムが必要でして、しかも試作段階で、動作スピードが基準をこえてしまい、使い物にならない事が判明しました。とても費用対効果、コストパフォーマンス、所謂コスパですね。これが全然会いません。ムサシ君も早々と切り替え式を諦らめ、左足ブレーキになっています。
これは非常に重要なポイントです。世界中で今開発を競っている自動運転車やロボットに、一軸切り替えは一台もありません。動力の加速と制動は、全て別系統です。別系統だと、ペダルの識別が不要でスピーディなのです。この設計を経験して、如何に人間の脚部は複雑な運動と判断を同時にこなしているのか実感いたしました。端的な例えとすれば、現状の右足切り替え方式が、アナログ式とすれば、左足ブレーキはペダル確認無しに、オンオフだけの信号で踏める、デジタル方式と表現出来ます。現状方式は、人間技とは思えない高度な技と言ってもいいかもしれません。正に神技ですね。因みに神業の字は、神憑りの感じですから、神技は忍者の技に近い熟練の味ですね。」
 服部 「はい、多摩川さんが何か言いたそうですね。」
 多摩川 「神技とは凄いですね。でも、正直なところ、『切り替えるなんて、馬鹿なことして、ボケツを掘ってる』と皮肉に聞こえますが。それと、ペダルの識別表示が無いのは、メーカーの責任ですか、それとも国の決めた安全基準の問題ですか。」
 梶木 「これは、実に微妙な問題です。安全基準にペダル表示が義務付けられていないのは確かです。でもオートマが普及した当時、車社会を牽引した世代は若かったのです。ペダル切り替えはマニュアル車時代の延長にあり、誰も疑問にも感じなかったのです。言い訳するとすれば、左足ブレーキも特に禁止はしていない、点でしょうか。運転者が高齢化して、80歳を超えた運転者の存在も想定していませんでした。」
 多摩川 「では問題はどんなふうにこじれてきたんでしょうか。」
 梶木 「運転ロボットの研究過程で浮かび上がったのは、右足への負荷過重の問題です。オートマでは動力が切れません。従ってブレーキではアクセルの3倍の踏み込み力が必要です。これはマニュアル時代と決定的な違いです。マニュアルで踏み間違えてもクラッチも踏んでいますから、空吹かしになりますが、オートマでは3倍の力で踏みますので暴走します。右足への荷重は、調べて見るとマニュアル時代の二倍の負荷になっていて、時間が経つほど疲労が蓄積していきます。信号待ちの渋滞や高速道路の渋滞で1時間もノロノロ運転をしていると、若い人でも疲れます。ましてや若くない人はヘロヘロですね。」
 多摩川 「ドラモニでは、疲労もチェックするそうですが、どんなふうにするのでしょうか。』
 梶木 「そこは企業秘密の様ですが、脚部の筋肉疲労のレベルメーターがあって、丁度スマホのバッテリー残量計のように、表示されるみたいですね。
それに、ドラモニは、高齢運転者の操作監視だけでなく、遅い動きには常に警告を出すので、体力を維持して必要な練習をすれば運転を諦めずにすむ、つまり、運転寿命をの延長に役立つとの事です。
それと、注目すべき点は、ペダルの動作監視と識別表示ですね。
 そもそも論なのですが、人間の骨格筋は、一定の力を長時間持続させる事には向いていないのです。人体は血流という脈動で保持されていますから、リズミカルな運動には快感を覚えますが、同じ動作をズーッと続ける事には疲労するのです。
 今まで出来ていた事が出来ないとパニックになります。ですから、どちらのペダルに乗せているか、確認手段があれば修正が出来ますが、現状では悲惨な事故が後をたちません。」
 服部 「それでは、ペダルの確認手段が追加されれば良いのでしょうか。」
 梶木 「今この事、つまり、ペダル確認機能の義務化を怠った無作為責任が表面化すると、交通行政としてはとても辛い立場になります。」
 多摩川 「メーカーの責任はどうでしょう。」
 梶木 「恐らく、メーカーに対しては責任問題は起こすのは難しいでしょう。あったとしても、ペダルの確認手段のない点だけでしょう。」
 服部 「何故でしょう」
 梶木 「現状の多くの車のブレーキペダルは、何故か中央部に横長のペダルが多いのです。右足専用とも言えず、左足でも楽に踏める位置と構造です。どうもメーカーの技術者達は、右でも左でも、どちらでもどうぞという姿勢ですね。この構造が技術者達の先見の明なのか、責任逃れなのかはわかりません。」
 多摩川 「とすると、先日の池袋暴走事故の一億円以上の賠償金も、表示義務化を問題化していれば、国家賠償みたいな話になっていたかもしれませんね。」
 服部 「ちょっと怪しい話になってきました。今日のところは、この辺までにしておきましょう。梶木先生有難うございました。また宜しくお願いします。」
 梶木 「こちらこそ、宜しくお願いします。」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?