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【AI漫画実験/第3回】画像AIのSDXL+加筆で、AIっぽい違和感が気にならない縦読みカラー漫画が作れないか実験してみた
これは「今までガチガチに手描きで漫画を描いてきた奴が、AIをフルに作って漫画を作るとどうなるか」という実験の記録・第3弾です。
前回と、今まで製作したAI漫画のまとめ読みkindle(無料)はこちら。
今回の実験の目的は以下になります。
・AIのリッチなカラー絵でも漫画として目が止まらず違和感なく読めるか
・人同士の絡みの動き、くっついて離れるまでの動作が自然に見えるようなAI漫画が作れるか
・タテヨミ漫画にしてみる(これは手描き含めて初の挑戦)
それではまず完成品をご覧ください↓
※タテヨミなので、スマホの方が読みやすいです
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■カワイイいたずらをする方が「可愛い」百合漫画
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タテヨミ漫画を作るのが初めてで、最初からタテヨミのコマ割りを考えるのはハードルが高かったため、まずいつもの横読みで作り、完成品からコマをパズルしてタテヨミに改造してみました。しかし本来横読み用のものを拡大縮小したのでコマごとに線画の太さや絵の密度がバラバラになり、読みにくさが発生しています。やはり最初からタテヨミ形式で作らないと駄目ですね。
横読みバージョンはTwitterで読めます↓
「かわいい」いたずらをする方がかわいい百合漫画(1/3) pic.twitter.com/fJJdSkBten
— のび城 (@nobisiro_2023) September 23, 2023
■今回の漫画の製作時間
空き時間にちょこちょこ作ってたので総製作時間の詳細はわからないのですが、手でカラー漫画を制作するよりは確実に速かったです。カラーが得意な方なら手で描いた方が速い場合もあるでしょうが、自分はカラーが遅いので。体感では普段の手描きの白黒漫画×2くらいの時間で出来ました。塗りがリッチなカラー漫画をそのくらいの製作時間で完成させられるのはかなり効率的だと思います。
■AIカラー原稿製作で工夫した事
カラーでも基本やる事は第一回の実験、白黒の時と変わりません。外見の整合性や塗りの統一感は加筆でなんとかしました。細かい部分をAIでインペイントするとかi2iとか手間がかかり過ぎる!
具体的には左に加筆して右にするような事をちょこちょこやってます。
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この作業は手描き勢でないと少し難易度が高いかもしれません。手だけとか髪のポニー部分だけとか、他の生成物からのツギハギもたくさんしました。その際にも色を合わせるための色補正作業が発生するので、やはりAIでも前後の整合性を重視するとカラー漫画は手間がかかります。白黒やグレーの方が楽です。
加筆の方が面倒という方は生成に統一感の出やすいモデルを選ぶのがいいと思います。私は絵柄や塗りが好きでXeLblend1(https://huggingface.co/cella110n/celblend)を愛用していますが、SDXLが出て間もない頃に出たモデルなためキャラ生成用途だとそこそこ暴れ馬で、わりと上級者向きだなと。
SDXLモデルならまゆひらさんのモデル紹介ページが参考になります。自分の好みのモデルを選んで色々試してみてください。
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クリスタの色調補正レイヤーはこんな感じです。
まず全体にグラデーションマップをいくつかかけて色味を合わせます。グラデーションマップをかけたら色が薄くなってしまったので、更にレイヤーを全て統合したものを上に作って乗算にし、色の濃さを調整しました。コマごとにAI生成物の色味や濃さが違ったりするので、ページによっては1コマずつ抜き出して色調補正レイヤーの数値や設定を変えています。
こちら↓は背景処理の小ネタ。
意外と需要ありそうなので、テクニック的な小ネタ。
— のび城 (@nobisiro_2023) October 12, 2023
■人物と背景の間に白を挟む
人物が背景と同化して沈まないようにするためのなんちゃって空気遠近法。白を強くし過ぎると後光みたいになるので適度な濃度で。座っている時など、背景と人物が接地してる部分とその周辺は入れない。 pic.twitter.com/crZ2DcUQIO
■この作品を読まれた方の反応を見た所感
少数ですが「絵柄がAIの時点で気になって目が止まる」という意見が散見されました。「絵柄がAI」のまま漫画として違和感なく読ませる、この両立を目指すのは、現状では中々ハードルが高そうです。少なくとも「手描きっぽい絵」に近いAI絵でやらなきゃ駄目そうだなと。
今回ももっと情報量を減らして手描きに近いAI絵で作る事もできましたが、全て手描きでやるには難易度の高い塗りのリッチさ、つまりAIとしての良さは残したいため、今回は絵柄そのものは故意にAIっぽさを残して作成しています。個人的にはせっかくAIを使うならAIとしての良さを生かしたいのですが…少なくとも今回のやり方はでは違和感を持つ人がいる、というのはわかりました。ただ割合としてはそこまで多くなかったです。あくまでリアクションしてくださった方、という限られた観測範囲ですが、体感1~2割くらいでしょうか。
そしてここは、AI的な絵柄でも気にならないくらいAI絵が浸透したら解消される問題かもしれません。
■改めてNAIリークモデル問題、AI使用のリスクについて考える
SDXL、niji・Midjourney、DALL·E 3、Adobe Fireflyなど画像AIが進化し新しいモデルが台頭してきて、改めてNAIリークモデルの問題について考えました。
NAIリーク問題って何?という方は↓こちらの記事の下の方に「Novel AIリーク問題(NAIリークモデル問題)」がありますので、その部分だけでもササっと読んでみてください。発端から現在までの状況が簡潔にまとまっていてわかりやすいです。
(※上記記事より引用)
「将来的に企業体が法的にクリーンなモデルを多数リリースし、合法的に収益化できるようになった場合、NAIリークモデルを使用して金銭を稼いでいたという事実はクリエイターにとっての汚点となる可能性がある」
AIを使用する時は「10年後にこのAIがどういう立ち位置になっているか」を想像して使うのがいいと思います。現時点で法的にOKなものなら10年後も「あの頃は合法だった」という評価になると予測しますが、NAIリーク混合もの(少なくともNAIリークを「含まない」という表記のないSD1系モデル全てが疑惑のあるモデルです)は現時点でグレーなので、10年後も「あれは合法だった」という評価にはならない可能性があります。例えば、現在著名なゲーム制作者の方が「昔マジコンを使っていた」と暴かれて炎上するような、そういう事例と似た事がSD1系でも起こらないとは言えません。NAIに直接訴えられる可能性だけでなく、この手の社会的なリスクについても、今一度見直す時かもしれません。
※ちなみにSD2系・SDXLは規格が違うため、SD1派生のNAIリークモデルは混ぜられません。NAIリークモデルが混ぜられるのはSD1系のみです。
現在の日本の法的に一番違法性が高い画像AIがNAIリークモデルである事は間違いないですし、他のモデルでこのような違法性があるものは今のところ見受けられません。この問題を確実に避けたいなら「SD1系派生モデルを使用しない」しか方法がないのが現状です。
しかしNAIリーク問題さえ避ければ画像AIには100%リスクがない、という事ではありません。
SDXL、niji・Midjourney、DALL·E 3、Adobe Fireflyなど、今は様々な選択肢があります。これらも現在は合法でも、今後の裁判などで違法の判決が出たり、新たなルールの制定で使用が規制されたりする可能性はあります。新たなNAIリークのような問題もいつ起こるともわかりません。
AIを取り巻く状況は日々目まぐるしく変化しています。常に情報を更新する事が重要です。
自分がAIを使用してどのような事がしたいか、その目的のためにはどこまでのリスクを許容できるかを今後10年先まで見据えて熟考しておけば、画像AIを使用する際の指針が決めやすくなり、必要以上に恐れる事なくAIを使えるのではないでしょうか。
今回もお付き合いありがとうございました!
次実験するなら女の子以外、おじさんなどを主人公にしてどこまでいけるかやってみたいです! あとAIカラー漫画でも情報量を減らせば手描きに見えるようにできるのか、も一度挑戦してみたいですね。
※普段はフリーでクリエイター系の仕事をしております。
AIを活用できる仕事にも興味があるので、お仕事の依頼がありましたらnoteの「お問い合わせ」もしくはnobisiro2023@gmail.comまでご連絡ください。よろしくお願いいたします。