喋るよ鳥ト少しだけ長く②#インタビュー
今回の公演「踊るよ鳥ト少し短く」に出演する3名に少しだけ長いインタビューをして、公演に関して・創作に関してお話をうかがいました。
ここでお話をしているのは、せのびの役者、髙橋響子。
演劇について、せのびについて、自分の芯について。今回の稽古では、いつも以上に悩みながら自分の役に向き合っていた彼女が、何を考え、何を得て、本番に臨もうとしているのか。
髙橋の持つ誠実さは弱さでもあり強さでもあると思います。
それでは、はりきってどうぞ!
―元気ですか?
元気ですよ。
―稽古はいかがですか?
いやあ、もうやるっきゃないって感じですね。
―稽古場の雰囲気はいかがですか?
いいと思うよ。こういう言い方すると嘘みたいだけど、いいと思う。すごいありがたいですよね、わたしがどんだけ沈んでも沈んでも上げようとしてくれるし。すげえ支えられてると思うし。
―大分悩んでるようですが、光は見えてきましたか?
ちょっとずつ。
―よかったですね。
よかったですけど、いやあ、まだまだです。なんか、掴んでもスルってなるときもあるし、掴めてるときもあるけど掴みきれてないってときもあるから。そこは腑に落ちてないんだなと思うし。
―脚本を初めて読んだときの印象は?
普通に面白かったんだけど、二人芝居だからめちゃくちゃ長く感じて。一場だけでこんな疲れるのかってくらい疲れて。あと、読みの段階でもだし、「え、これまだ半分もいってないの?まだあるの?」って思って。ちょっとそこは、不安っていうか。自分の身体もそうだし、お客さんが飽きちゃうんじゃないかなって、二人だけだから。とも思ったかな。
―今もその「お客さん飽きちゃうんじゃないかな」は思ってますか?
思う…かも。最初の掴みがうまくいかないと、スルスルっていっちゃうんだろうなと思って。今、その最初の掴みのところが課題だから、そこなんだろうなって。そこ抑えとけば、あとは流れで。慶さんも面白くしてくれるし、話の流れ的にもどったんばったんあるから大丈夫なんだろうなって。
―慶さんはどうですか?
慶さん…すごいですね。すごい。なんかもう、どんどん出てくるよね。言葉もそうだし、アクションもだし。やっててどんどん出てくるから見てて面白いし、飽きないし。すごいなって。それでこう、あ、どんどん差が開いていっちゃうとかも思うけど。でも、最近はあんまり気にしないようにしてる。そんな感じ。
―美紀依さんはいかがですか?
美紀依さん、すごい。すごいですよね。自分が気持ちいい音と気持ちいい音を重ねて行って、その場で即興でとか、私たちの動き見ながら音楽ができていくっていうのは本当にすごいと思うし。やっている最中でもノってくるんだよね。あ、ここ低い音めっちゃいい、みたいな時とかもあるし。あとすごいアドバイスをしてくれてありがたいと思います。自分の思ってなかった考えとか、身体の動きとかもそうだけど、全然客観的に見えないところを教えてくれるのですごいありがたいと思います。
―稽古場でずっとくすぶってるなってイメージだったのが、いつかの通しで「あ、慶さんの熱量に近づいてきた」というのを感じて。で、さらに後の通しを見て何か殻が破れたような印象を抱いたんですが、自覚はありましたか。
最後のほうは殻が破れたかなというのがちょっとあった。でもちょっとまだ不安定なところがあって、それが周りの人と合ってるのかわからないけど。みんながわたしと同じところを気にしているかはわからない。
―自分の中で軸はしっかりしましたか?
うん、この前の通しが終わった後に山手さんも交えて稽古をして、実際の自分の状況をちゃんと理解し直したらすごい演技しやすくなって。何回も言われていたことだけど、一番初めの自分の役の設定を改めて意識してみたら身体が作りやすかったっていうか。
―だいぶクリアになったってことですか?
そうだね。逆に、今度は別のシーンで、相手の言葉を受けて自分の役がどういうことを思ってその言葉を返すのかっていう、生のリアクション。そこはさぼらずにいこうっていうことを演出から言われて。そこで気づいたのが、わたしはただ台詞しゃべるマンっていうか、相手の台詞をも記号化して、これを言われたからこれを言うみたいになって。だから相手に言われたことが身体には入ってなかったんだなっていうのを改めて気づきました。
―前回の稽古でそのシーンを見たときに、慶さんもだけれど、二人の限界値のレベルが上がったのかなっていうのがあって。これまでは熱量的に50~60くらいがベースで、80までいくと疲れてすぐに戻っちゃうのかなっていうのがあったんですけど、この前みたときは80をキープできていて。60まで下がる時は「下がっちゃう」ではなくて「下がろう」と思ってそのレベルを調整出来てるのかなと。
そう捉えられてるのなら嬉しいし、まだできるなっても思う。
―今回の公演で村田が「挑戦」って言ってるじゃないですか。自分的に挑戦だなっていうことはありますか?
これまではすごく自分の中で「こうやる!」って決めてやったりとか、演出の言葉を聞いて、「よし、それで固めよう」とか、そうしないとわりと脚本も覚えられないから。そうやってガチガチに決めて、それで本番出てたりもしたし、本番に臨むときもよかった記憶とかを思い出しながらとか、それに近づけようと思いながらやってたから。今回はあんまりそれはしないようにはしてるけど、なるべくね。あの時よかったあれをやろう、とは思ってないけれど、でもやっぱり身体に染みついているのはあるから。そこを越えて行って、今でもできてはないけどその時のお客さんの空気とか、慶さんを見て動きたいなとは思いました。
―せのびとしての「挑戦」はどういうふうに考えていますか。
これまでよりも上の段階の演技をすることを目指しているのはせのびとしても挑戦だと思います。あと「ここはどういう表現ができるかな」っていうのをみんなで考えながら創作できているのも次につながる部分だと思います。
―それは、既成の脚本に挑戦したからできたことですか。
うん、それはあると思う。既成の脚本で、演出をやっている村田も答えを知らない状況だからそうなりやすいというか。でもここから青葉さんが脚本を書いたものをやっていくとしても、青葉さんに答えを求めるんじゃなくて自分で考える、っていうのができるかも。考える、っていうのが今後につながればいいなって。
―目標ってありますか、今回の公演で。どういうふうになりたい、っていうの。
なかった…んだけど、最近思ったのは、どっちかでも俳優賞獲りたいなっていうのと、あと大賞獲りたいなっていうのは思った。これまで獲れていないものだし、獲ることで箔をつけたいなっていうのと、自信につながればいいなっていうのと。
―来月、INDEPENDENT(※)があると思うのですが、今回の稽古で何か次につながりそうだなというのはありますか?
※INDEPENDENT in 盛岡…12月24日~27日に、いわてアートサポートセンター風のスタジオにて行われる最強の一人芝居フェスティバル。せのびからは村田が脚本・演出、髙橋が役者として出場します。
3つの段階(詳しくは日誌#05をご覧ください)って話があったじゃないですか。doの演技の上に、ナチュラルな、演技しない演技があって、でさらにその上に恥ずかしいのを分かっていて演技をする、っていう。その3段階があって。で、一人芝居だし、脚本の内容を聞いた限りだと一番上の段階でやらないとできないやつだなと思って。わたしはずっと演技しない演技がいいもんだと思っていたし、高校で演劇部に入らなかったのはそういうのがダセえと思ってたからなんだけど。ここでもう一つどこかしらだけでも上にいけたら、次の一人芝居にもつながるんじゃないかなと思った。演じるのも楽しくなるだろうし、やるからにはいいもの見せたいし。
―楽しみですか?
もうちょっと前はこわかったけど、さっき言ったように、一つ段階をこえたら楽しくなるんじゃないかっていうのがわかったので今は楽しみ。
―最後に、お客さんにむけてひとこといただけますか
慶さんも面白いし、わたしも面白くするので、こういう状況ではありますがぜひ劇場で観ていただきたいです。
ではまたここでお会いしましょう!
〈インタビュアー・文・写真 石橋奈那子〉
インタビュー企画
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