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|1106-1108|ゴーアヘッド!#日誌#08

毎週月・金曜日の20時更新 演劇ユニットせのびの稽古場の様子をお届けする日誌。

【11月7日(土)】

試行錯誤しながら台詞を身体に入れ、稽古をつける日々。
覚えるのがゴールではなく、その言葉をどうやって発するのかを追求したい。

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「役者で殺し合ってください」と、よく稽古場で口にする村田。
「ちゃんと責任を持って、
今舞台上で会話のボールを持っているのは私だからね
って、役者同士でやりあってください」と。

「台詞を発する時には高低・大小・速度の違いで変化をつけられるけれど、自分はどれが苦手でどれが得意なのかをちゃんと把握して武器にして」

会話はキャッチボールだ、ということで実際に物を投げながら会話の練習をしてみる。「ここはちゃんと届ける」「ここは相手の目も見ずに投げ捨てる」「相手に届けるけれどその投げ方はちょっと乱暴に」という違いが明確になったよう。

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役者たちの余裕のなさは観ている側によく伝わってしまう。
どのレベルを目指していくのか、自分はどれくらい成長したいと思っているのか、強みは、弱みは、魅力は。
今回は挑戦です と何度も言っていますが、「ただやる」「作品としてできあがればいい」のではない。です。

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ピアノの演奏と台詞が混ざるタイミングがとても気持ちいい。
役者が困っていると、美紀依さんから「こうしてみたらどうですか?」と助け船が出されることも増えてきました。アドバイスも的確です。
どうやら、すごいキラーフレーズもひらめいたようで。
どんな作品になるのか、ますます楽しみです。

【11月8日(日)】

13時から稽古。
前半は黙々と舞台装置の作業をし、17時に役者が揃ってからはみっちりと稽古をしました。

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稽古場の一角で舞台装置の作業を続けていた早織さん。
時折、その手を止めて心理学に関する話をしてくれます。
今日は「マインドフルネス」について。
今ここ、にだけ集中をする。役者は、舞台上でいろいろな情報をやりとりしなければいけませんが、散漫になりすぎても、一つのことだけに集中しすぎてもうまくいかない。視野の広さが必要です。

みんなで一度動きを止めて、遠くの音に意識を向ける。
次に、どこか一点をよーく見る。
そして再びその意識の範囲を広げる。
これをやると自分の体も周りの雰囲気もクリアになって、いわゆる「凪」の状態をつくれます。

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また、二人だけで60分間の芝居をするので、「ここは勝負所」「ここは絶対に俺に視線を集める」というのを決めて演技をしよう、ということも話しています。
マラソンの給水所に例えると分かりやすいですが、所々で自分が楽になるポイントを用意しておくと、その後の演技のリズムも作っていける、という話です。

さらに、今回、村田が藤原に求めるものの一つに「人称の使い分け」があります。自分の中にこもる、自分だけの考え事のようなときは「一人称の声の出し方」。逆に、舞台上の相手に届けるときには「二人称の声の出し方」。
これが使い分けられたシーンは、一人称なのか二人称なのかの違いがはっきりと出ており、見ていて面白いです。
さあて、これが藤原の新しい武器となるのでしょうか。乞うご期待!

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【稽古のあと】

8日の稽古帰りに村田・藤原・髙橋・石橋で食事へ。
大盛りの飯たちを食らった後、今回の公演と今後についてわりと真面目な話をしました。

演劇10周年の藤原には彼なりの覚悟があり、自身を「俳優だ」と名乗りたいという想い、せのびをどうしていきたいか、など今後に向けての明確な目標があって今回の公演に臨んでいる様子。
稽古を見ていると、どうしても藤原の方が目を引く形になる。
髙橋が手を抜いたり技術的に劣っている、というわけでは全くない。ただ「芝居をするときに覚悟を持っているかどうか」は観ている側にもちゃんと伝わってきます。

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『踊るよ鳥ト少し短く』という脚本は、演じる俳優に対して「あなたならこれをどう演じるの?」という質問を投げかけてくる脚本です。
観ている人に対して問題を投げかけたり、感動を届けたり、というものは多いですが今回のようにいわば役者に挑発的とも言える本に出会うことはなかなかありません。
だからこそ役者も演出も、ひとりの表現者としての能力がいつも以上に試される作品というだけあって、稽古場で戦う毎日です。

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「よいか/よくないか」のシンプルな評価軸で自分の創作物が評価されるのはなかなかにシビア。

演劇も、せのびも、漫然とやっているのではなくて「なぜ演劇をやっているのだろうか」「なぜせのびで演劇をやっているのだろうか」をちゃんと考えた後に舞台に立つ。髙橋にとって今回はとっても大きな山かもしれません。
来月には一人芝居も控えています。

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目指していきたいところはどこなのか。
Go ahead!たかはし!

【作り手紹介#4】

稽古場日誌と並行して『踊るよ鳥ト少し短く』の作り手紹介を行うこの企画。第4回目は、演劇ユニットせのびの主宰 村田青葉です。

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村田 青葉(むらた あおば)
1994年生まれ。宮城県出身。ふたご座。

岩手大学「劇団かっぱ」へ入団し演劇活動を開始。2016年「演劇ユニットせのび」を旗揚げ。同劇団では主宰、脚本家、演出家を務める。2016年『なくなりはしないで』が第14回盛岡市民演劇賞創作戯曲部門賞、2020年『ハロー!エチオピア』が第18回盛岡市民演劇賞観客賞を受賞。近作に『月の流した涙、やがて君へ、海へ、たどり着く』『ツーカー』『ハロー!エチオピア』など。
ダンス、ジャグリング、詩、民話、落語など幅広いジャンルの要素を取り入れた創作に積極的に取り組み、自身も劇作家・演出家・役者として表現活動を行う。

旅行、ボードゲーム、漫画、サッカー、マラソンが好き。

今回の公演は村田にとっても挑戦です。
せのびをまとめあげること、役者の能力を引き上げること、自身の演出家としての今の能力を試すこと。
個人としても活躍の場を広げている村田ですが、「せのび」として盛岡の地で演劇をすることには彼なりの理由があります。
ただ純粋に「本当によいもの」を創る。
まだまだ成長途中のせのびの姿、劇場でご覧ください。

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次回の投稿は 11月13日(金) です。
ではまたここでお会いしましょう!
〈写真 千葉潔考(kuromame)、文・写真 石橋奈那子〉

09「飛べ!舞え!」はこちら⇒


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