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つくられるものがつくるものをつくる ①

一.牛肉


僕は牛肉。
今僕はお皿の上に載っている。
ほどよく焼かれた極上のステーキだ。
僕はもともと、牛の一部であり、牛そのものだった。
僕は他の牛よりもよく鳴く牛だった。ここではその牛のことをモウ君って呼ぶね。
モウ君はかわいそうな牛だった。
というのもモウ君は生まれてからすぐに、お母さんと引き離された。人間の手によって。
モウ君は生まれて間もなく人間によって小屋に運ばれた。その時モウ君のお母さんは必死についてきた。けど、途中で人間に封じられた。だからモウ君はお母さんのことをお母さんだって知らない。
えっ?お乳はどうしたのかって?それは人間によって飲まされていたよ。もっともモウ君は哺乳瓶から飲むことを嫌がっていたけどね。無理やり飲まされていたよ。人間に。
モウ君は死ぬその日までずっと柵のなかで過ごしていた。小便も糞も垂れ流していた……
何年か経ってやっとモウ君が外に出られたとき、モウ君は眠らされていた。その後、死んでしまった。
僕は知っている。モウ君がそれでも一生懸命生きてきたこと。今日僕はモウ君の生きた証としてお皿の上にいるんだ。

さあ、どうかしっかり味わって食べてくれたまえ。僕を。モウ君を。
 

≪とある太った男が心のなかでつぶやく≫
 
『あ~くったくった。あ、しまった、ステーキとりすぎちゃったな。やっぱビュッフェだととりすぎるよな~。まぁいっかお金払ってるわけだし、残そ。』
 
≪とある太った男が席を立つ≫


―――は?


≪残ったステーキがとあるウェイトレスによって厨房へ運ばれる≫

おい、待てよ———


≪とあるウェイトレスが心の中でつぶやく≫


『これ食べてたのあの太った奴でしょ。どうせ金持ちなんだろうな……』


≪とあるウェイトレスがゴミ箱へ運ぶ≫


おい!待てよ!


≪とあるステーキがゴミ箱に入れられる≫


モウ君はどうなるんだよ⁉
モウ君の気持ちを考えろよ!
お前ら人間はさんざんモウ君にひどいことをしといて食べないってのか?
ええ⁉
ふざけんな!
食えよ!

おーい。


おおおおおい
おおおおおおおおおい
おおおおおおおい!おおおおおおおおい!

おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおい!

おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおいいい!!!!!おお

――ぱたっ。

≪ゴミ箱の閉じる音≫


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