PONDO、PONDO、PONDO、PONDOし・あ・わ・せあしすとちるどれん♪ #1
目をぎゅっと閉じる。何も見えない。そのまま歩く。何かに頭をぶつける。それでも目を開けてやるものかとめをぎゅっとつぶって開けずに右に曲がって進むとゴツンという音が鳴ってまた何かに当たる。今度は痛すぎて目を開けたら電信柱があった。こんなところに電信柱たてんなよって悪態をついても電信柱は何も言わなかった。優しい。こんな人間が悪態をついても電信柱は電信柱のままで怒ったりしないんだ。ありがとう電信柱。君は悪くない。悪態ついてごめんねって思って電信柱の横を通ったら車がものすごいスピードで通って行った。あぶねぇだろ。と思って世界から車が消えればいいのにって思ったけどそれは困るかと思って、でも車が無くなったら夏の暴力的な暑さも少しは和らぐのかなと思ったからやっぱり車が消えればいいのにと思った。そしたら多分事故も減るっしょ。
目を開けたら太陽が眩しくて、光はダメなんだって声がしたからサングラスをかけてやる。ふぅーおちつくおちつく。これで人の顔も見なくて済むよ。ありがとう。でもおかしいよね。光がだめなひかるくんって。ちょっと笑っちゃうよ。
もしあのまま太陽の光を受け続けていたら光の中に僕の体が入り込んで離散して手と足が見えなくなっていつの間にか宙に浮かんであれ?酸素がないなってことに気付いて無い手と足をバタバタさせたけど何にもならなくてプカプカと浮かんで浮かんで最初は焦ってたけどまぁいいかって思ってその浮遊を楽しんでどこか遠い世界に行っていたかもしれない。あぁでもそれも悪くないかもなって思ってサングラスを取って光を見ようとしたけど丁度いつもの工場に着いたからやめた。
中に入って誰かに言われた通り文字がたくさん書いてある紙を決まった封筒に入れ続ける。
紙を丁寧に三つ折りにして封筒に入れて両面テープを取って切手を貼っての繰り返し。
この封筒たちはこれから僕の手元を離れて大冒険をするんだ。僕も一緒に連れてってくれよと封筒に話しかけるけどなんの返事もない。この封筒はもう口を閉じちゃったから喋れなくなっちゃったんだ。仕方ない。僕の冒険はまた今度にしよう。
封筒の作業が終わったら次は商品を決まった箱に入れるお仕事。段ボールってすごい便利だ。僕は段ボールの隙間にある波を見て鉛筆で書いた波線を思いだす。今日も家に帰ったらなみなみの線を書きたいなぁ。
それも終わったらあとは簡単なお掃除。ほうきでさっさっさ。このほうきと地面が擦れ合う感じが心地いい。もしもほうきの先に僕の触覚が備わっていたらどんな感情を抱くだろうか。くすぐったいかな。意外と痛いかな。そんなほうきでゴミを一か所にまとめて掃除機のすごいパワーで吸って今日はおしまい。ゴミの日に掃除機のゴミは捨てるから今日は大丈夫。
外に出ると太陽はもう沈んでて僕はサングラスを書ける必要がなくなった。まぁ人も少ないからもういいよね。
帰りの公園のごみかごに食べかけの弁当があるのを見かけてラッキーって思って取り出して食べた。人参とタケノコと緑の野菜がちょっと残ってて、黒ゴマのついたごはんが半分くらい余ってた。あとからあげも一つ残ってた。わざわざ自分のために弁当が残ってくれていたなんてこれは偶然かなと思ったけどどうせ必然なんだろうなって思う。ちゃんと手を洗って箸がないから手で食べてたけど、また手がべちゃっとしてたから洗ってきた。明日も弁当が捨ててあるといいな。
何か今日は月がいつもより明るい気がした。がらんとした家に帰って手を洗って歯磨きして寝る。昨日は大丈夫だったから今日も大丈夫だと思ってたけどダメで今日は声が聞こえる。
お前はおかしいんだ。
うるさい。黙れ。
そうやってまた君は自分を甘やかして。
辛い。という物語
うわぁ、出たフィクショニズムだ。逃げなきゃ。
僕は電信柱を通り過ぎて小道に入って大通りを通って商店街に行って群衆に紛れる。うわぁ、人がいっぱいいるいっぱいいるサングラスサングラスかけなきゃ。人。人。人。人。人。人。人。人。人。人。人。人。人。人。人。人。人。人。人。
物語が追いかけてくる。逃げなきゃ。
あぁ、でも前が人で埋め尽くされて進めない。でも後ろから物語が迫ってきてる。
僕はジャンプして人の顔を裸足で渡る。地面が顔で埋め尽くされている。タイルみたいに顔が敷き詰められていてみんな上を向いている。みんなが見ている空が赤い。人の目と鼻と口を踏みつぶして足にぐちゃって感覚がする。でも意外と人の顔を踏みつぶして走るのは気持ちいい。なんだか足の裏がむずむずする。
いつの間にか思いっきり走ることに夢中になっていて、ふと後ろを向いてみる。
あれ?物語がいない。地面も元に戻ってる。
ん?そこにいるのは誰?道に置いてある鏡に誰かが映っている。
あれ。きょうこちゃんじゃないか。ほら、僕の初恋の人だよ。あれ?きょうこちゃんはまだ小学生なんだね。
え?何?こっちにおいでひかるくんって?なにかあるの?
僕が鏡に近づくときょうこちゃんは手をこっちにのばしてきて僕の肩をつかんできた。
ひかるくんって僕の名前をずっと呼んでいる気がする。
なに僕とハグしたいの?そんな…こんなみんないる場所で…恥ずかしいよ…
そしたら突然きょうこちゃんが口をありえないくらい大きく開けて僕の頭をまるまる飲み込んだ。
でも、なんでかわかんないけどそれは僕じゃなくて僕は僕の事を僕の後ろから見ていた。
でもその光景がよほどショッキングだったのか僕は気づいたら目を覚ましていた。夢か。
くだらん。
夢もまた一つの現実だ。
そうだね。
朝ご飯。炊飯器のスイッチを入れて、フライパンに油をしいて、鶏の胸肉を入れて、なすとにんじんと玉ねぎとピーマンを刻んで入れる。コップに牛乳を注いで飲んでお腹が痛くなってトイレに行く。
何の薬なのかわからない薬を飲んで家を出てまた工場に行く。
こうやってみると僕はベルトコンベヤーに載せられているみたいだ。毎日の行動はだいたい決まっていて決まったことをこなして生きていく。多分僕の生きる世界に偶然なんてものはなくて絶対で当たり前な事しかないんだと思う。
道を歩いていると店のガラス戸が目についた。そこには秋が映っていた。
そっか。あの暴力的な暑さももう終わったんだなと思うとどこか感慨深いものがあった。僕は夏と友達だったんだけど親友じゃなかった。だってだって夏は意地悪じゃん。あんなに暑くしてくるんだから。それだけじゃなくてたまに台風も呼び寄せて色んな人を傷つけるからちょっと苦手。そのせいかわかんないけど今年も大量に雨を降らして一週間くらい外に出られないときがあったから家の中がじめじめしてカタツムリの気持ちになっちゃった。そういえばその時ずっと壁を見ていたんだけどさ、壁の色が変わった気がしたんだ。ざらざらしていたのがツルツルになったみたいな感じでさ。それ以来壁の色はその色のままで、僕はその色を結構気に入ってる。あれ?ってことは夏に感謝しなきゃいけないのか。ありがとう。夏。
そんなわけで僕はベルトコンベヤーに載せられて工場に行く。そのまま梱包されて出荷されて段ボールに入ったまま家に帰れたらよかったけどそんなわけにもいかずちゃんと自分の足でベルトコンベヤーに乗って帰った。
帰り道に帽子が歩いていてそういえばあの帽子はたつきくんがよくかぶっていたなと思って何でそんな小学生の時のことを思い出すのかよくわかんなかったけどその思い出も思い出せる理由もよくわかんなかったからそっと蓋を閉じてそのままにしておいた。
何かもやもやして変な気持ち。
あぁ、そうだ。僕は手をたんと叩く。調子に乗ってもう1拍手。もう7拍手。パンパンパンパンパンパンパン。夜の静けさに僕のクラップが響き渡る。僕は今この世界を操縦している。あぁ、いい気分。すごくいい気分だ。
あれ?何だっけ?何考えてたんだっけ?
あぁ、そうそうもやもやした気持ちだ。
このもやもやを晴らすためにはどうすればいいか考えていた。
そうだ。
今日、火をつけよう。
脳内に焼きつく光。夜のベランダ。僕は蝋燭をこの前ゴミかごから取ってきた鉄の缶に入れて燃やす。ついでに鼻水のついたティッシュもいれちゃう。炎が猛々しく燃え上がるさまを見て、うっとりする。この炎の中に入りたい。優しく焼かれてしまいたい。そう思ってしまうほどに肉眼で見る炎は美しくはかないものだった。近くにカタツムリがいる。僕は割りばしでカタツムリをつまんで炎にカタツムリをのせる。ジュっといって少しだけいい匂いがした。でもその後割り箸に火が燃え移ったから僕は咄嗟に手を離した。カタツムリは割りばしと一緒に缶の中に入って灰になっちゃった。この前はベランダにいた死にかけのコオロギを焼いた。さっきのカタツムリも5日前からいてほとんど動いてなかったから死んでいたかもしれない。コオロギを焼いた時は本当にいい匂いがしたものだから口に入れて食べた。思ったより熱くて不味くてそのあと口から出しちゃったけど。でも焼かれるコオロギは羨ましい。僕も死んでるか死んでないかわからないくらいの時に温かい炎に包まれて死んでいきたいと思う。でも炎って思ってるよりも熱いから多分びっくりして命を吹き返してしまう気もする。火がお風呂の温度くらいだったらいいかもしれない。
火を見るとすごく落ち着いた気持ちになる。声も聞こえなくなる。火が消えそうになったら割り箸をぼきぼきおって缶の中に入れる。そういえばこの前コオロギをもやしたことを僕に言ったら酷いって言われた。けど人間だって悪い人は火炙りの刑にしてきたし、死んだ後には燃やしちゃうじゃん。それがその人にとって失礼かどうかだなんてどうでもいいわけじゃん。もしかしたら骸骨さんは火ぃ熱っ!って思ってるかもしれないよ。アちゃあちゃちゃって言ってるかもしれないよ。
でも不思議だよね。あんな骨から人ができてるなんて。僕も自分の骨を見てみたいな。痛いのは嫌だし、怖いからできないけどね。でも夢で何度か見た事はあるよ。でも夢での骸骨さんは優しくて怖くない。一緒に遊んだことだってある。時々思いは物質として残るんだってよくわかんないことを言ってたな。まぁいいや。おやすみ。
日の光を目で感じる。
どこかで救急車の音が聞こえる。誰か死んじゃったのかな。今日は休みの日だから工場に行かなくていいんだ。やっふーい。
僕は休みの日ってことが嬉しくて家を飛び出して走り出す。
どこまでもどこまでも走っていたら、僕の影が地面に映し出されているのに気づいた。
影が必死に僕についてくるのが何だか面白くて僕はどこまでも走って傍を通る電車よりも早く走ろうとしたけど5秒で息が上がってペースが遅くなって置いてかれちゃった。だから僕は新幹線になって誰よりも早く走った。でも新幹線っていうのに何で線じゃないんだろう。比喩なのかな?
なりふり構わず走ってたら車に轢かれそうになったからジャンプでかわす。車がビュンビュン走っている大通りを新幹線が横切る。危なかったら飛べばいい。そうして僕は地球を一周して家に帰ってきた。帰りは飛行機に乗った。ちょっと疲れちゃったからね。
家に帰って顔をバシャバシャ洗って洗面所を水浸しにしてほっと一息ついていると、何だかラタトゥイユが食べたくなった。ラタトゥイユ。何か言いたくなるラタトゥイユ。あーラタトゥイユ食べたい。
どうやって作るんだろう。調べたら材料が出てきた。
うん。めんどくさそうだな。スーパーに行こう。
今度はベルトコンベヤーに乗る訳には行かない。工場に行くわけじゃないんだ。
スーパーに行ってラタトゥイユどこー?ラタトゥイユー?ってラタトゥイユを必死で呼んでいたら誰かがラタトゥイユの場所を教えてくれてその通りにしたら冷凍のラタトゥイユにたどり着いた。ラタトゥイユはかちこちに固まっててレンジであっためた時にいいにおいがするのかなと思って期待した。帰りに僕はラタトゥイユの歌を歌いながら帰った。
レンジであっためていざ実食。うん。思った通りの味がする。まぁこんなものだよね。トマトみたいな味がする。みたいなってなんだそりゃ。
これからどうしようかな。
家で壁を見るのもいいけどそれは帰ってからにしよう。
今日はおでかけしちゃう。おでかけおでかけ~。
ルンルンるっるるるうんるん。
ルンルン気分っていうけどどんな気分なんだろう。ルンルンがどこかにいるのかな?僕はルンルンがどんな姿かを想像する。多分ドレッドヘアみたいな毛がたくさん生えててちゃんと目が二つあって白目の中に黒目があってハワイとかにでてきそうなモンスターなんじゃないかな。ああ、そう、あったかいところに居そう。ルンルンって言いながら体をゆさゆさして毛をまき散らすことで繁殖するんだよ。じゃあね。ルンルン。またルンルンしたときに出てきてね。
そう言って僕はルンルンに別れを告げるといつもの場所に入った。
人が多くてがやがやしている。サングラスは取らずにかけたまま。
がやがやがやがやがやがやがやがや
最近はどうですか。と誰かが言った。
どうなんだろう。どうなんだろう。ちょっとよくわかんないけど馬が人参を得たような感じかなと思ったので気付けば馬を呼んでいた。
あ、なんかいいにおいがする。また誰か残したのかな。
頭の中を音符とか音楽とか音速でいっぱいにしていると目の前に誰かがまるまる残した弁当があったからそれを食べることにした。伊達巻があってそれを口にした瞬間ふわふわで甘い味が口いっぱいに広がった。他にはプチプチしたミニトマトとやっぱり黒ごまのついたごはんとスパゲッティとほうれん草とコーンがあってどれも美味しかった。ごちそうさま。
このいつもの場所にはただ来るだけでよくって何かをしなきゃいけない訳じゃないから僕はここを出た。
それでまた道を歩いていると誰かの家の塀に喋りかけている人がいた。背が高くて鼠色のコートを着て、髪の長い人だった。
キモ、キモイヨネ…?キモイヨネ?って言ってた気がする。僕は気持ち悪いとは思わないけどなぁ。声の方がよっぽど気色悪い。
遠くに山が見える。何か山と空の境界線って線みたいだな。あれを新幹線って呼んだらどうだろう。
点と点との繋がりが線になって線と線の繋がりがはりぼての山という面になって面と面の組み合わせが三次元になる。
僕は大きなお店に行って一番高い4階から3階と2階と1階にいる人たちを見渡す。何人もの人がお店に入っては出て入ってはでてきてそれはまるでタンクの下に穴が開いているけどその出てった水の分だけ補給されてるから永遠に水が減らないタンクみたいで、そんな縦横無尽に動く人の動きを見ていたらなんだか気分が悪くなって頭がよろよろしてきたからスーパーでモロヘイヤの名前を叫んでダンスしていたらいつの間にかモロヘイヤを手にしていたから買って店の外に行ってそのままモロヘイヤにかぶりついた。さっき僕の後ろにレジに並んでいた人は僕が今買い物をしたことによって待たなきゃいけなくなったのかというと多分そういう訳でもなくて僕がいなくてもだれかが僕の代わりにレジに並んでいたと思う。だからこの人にとっての僕の役割は代替可能なんだよね。レジの人と目が合う。あ。この人は目を合わせてくれるタイプなんだ。うれしい。ちょっとうれしいかも。と思ってモロヘイヤを咀嚼していた。
帰り道にサッカーボールが足元に転がってきて、それ取ってよとサッカーボールが言ったのでそれを手に取って来た方向にボウリングみたいに投げた。けどその投げた先にありんこがいてありがつぶれちゃったかなと思ったけどすぐに動き出した。ありはつよいんだね。ありにとっては隕石が降ってきたようなものだったけどアリは隕石がふってきてもへっちゃらなんだ。僕たちもへっちゃらかな?
ズキンズキン。ズキズキ。頭がまた痛む。
あぁ、くだらんいつまでそんなことをしているんだ。アリの鑑賞などせず早く帰れ。
ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。
ねぇ、やめてよ。
そろそろ帰ろうか。あぁ、そうそう。そうだよね。
何だか眠たい。また声が聞こえる気がする。
カーブミラーに野球のユニフォームを着た少年が映っている。あ、でも近づいたら消えちゃった。あれ?誰だっけあの子。なんていう名前だったかな?う~ん。忘れた。まぁいいか。
違う公園を通りかかるとまた食べかけの弁当が2つも捨てられていた。僕はゴミかごからそれらを取り出して二つとも食べた。うぅ…食べた後にお腹が痛くなった。ベッドに入る。
あぁ、何か声が聞こえる。うるさいうるさいうるさい。黙れ
僕はまた火をつける。
今日は悪夢を燃料にした。