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髙橋光成はMLBで活躍できるのか?

ライオンズ投手陣の中でいち早くMLBへの将来的な挑戦を表明した髙橋光成。しかし球団はまだポスティングを認めることはせずファンの間でも活躍することはできるのか懐疑的な声がまだ多いように感じるが果たしてどうなのか。過去に挑戦し活躍、または苦戦した選手の成績を比較していきながら考察をしていこうと思う。


これまでの実績

2014年に高卒ドラフト1位で埼玉西武ライオンズから指名を受け入団。1年目には完封勝利も記録し防御率は3.07と上々のスタートを切ったかのように思えたがその後数年は怪我や苦戦もあり伸び悩む。しかし2020年の途中からブレイクし課題であった先発陣の頭として投げるようになり、2022年には防御率2.22でリーグ4位。2023年には防御率2.21でリーグ2位に加え3年連続二桁勝利と着実にエースとして実績を積んできた。また、タフさも売りであり2021年173.2イニング、2022年175.2イニング、2023年155イニングと先発1番手として見事な貢献と言えるだろう。昨今の野球界、特にMLBでは先発投手の怪我が多くイニングイーターとして活躍し続ける点は評価に値するポイントだろう。

高橋光成一部成績
週刊ベースボールONLINEより引用


MLBへの将来的な挑戦希望

2022年オフの契約更改時に将来的なMLB挑戦を表明し23年オフにもポスティングシステムでの挑戦を要求するも球団側はNGを出した。渡辺久信GMもポスティングは選手の権利ではなく、行かせてやりたい親心もあるが球団経営として難しいのは理解してほしいと述べていた。

球団経営として計算できる先発が1枚抜けるのは厳しいという理由の他にも、ポスティング移籍をして活躍の場をMLBに移した時に"活躍"できるのかという問いには若干疑問は残る。疑問の中で多く唱えられているのが奪三振率の低さだ。2020年からの奪三振率は7.48→6.58→6.56→6.97とキャリアでイニング以上の奪三振を記録した年は未だない。(キャリア平均奪三振率6.70)

奪三振能力が重要視されるのには、奪三振はゴロやフライなどから生まれるエラーのリスクがなく、ランナーを得点圏に背負った場面でも最も安全で失点阻止に優れたアウトの取り方であるからだと言えるだろう。(パスボールの可能性も一応あるが)今までMLBで成功を収めてきた投手は殆どがNPB時代で奪三振能力に優れており、例外は岩隈久志しか私は知らない。この能力に秀でることがMLBで成功するためには必須条件ということは間違いないだろう。


ストロングポイント

  • LOB%

  • スプリット

  • イニングイーター能力


ライオンズの1番手としてここ数年投げ続けている高橋だが、先述したタフさの他にも勿論秀でている部分はある。まず1つ目はLOB%だ。これは何かというと出塁した走者の"非帰還率"であり2022年は82.5%で山本を抑えリーグ1位。23年は78.4%でリーグ4位と奪三振率の低さと鑑みると非常に失点阻止能力に長けたプレイヤーと言えるだろう。


2つ目は変化球スプリットである。長身で角度あるアームアングルから繰り出されるスプリットは被OPS.460,被打率.161を記録し間違いなくベストな決め球であると言える。

また、球種別評価の詳細はこのスカウティングレポートを見ていただきたい。↓


3つ目はイニングイーターとしての役割である。21年〜23年の3年間で503イニングを投げており、これは山本に次ぐリーグ2位の数字。先発に長いイニングを投げてもらいたいのはどこの球団も同じはずであり、大きな怪我をすることなくハイレベルの成績をマークし続けている。昨今の野球は怪我がちな投手が多いが、この能力に対して過小評価されていると感じるのは私だけだろうか。

ウィークポイント

  • 4シーム

  • K%

1つ目は投球の軸となる4シームである。平均球速こそ2022年から2023年にかけて3.7km/h上昇し150.2km/hまでになったがMLB平均は151km/h。球速が平均を下回っていてもスピン量や空振り奪取率に優れていれば問題ないのだが、昨年の4シームの空振り率whiff%は11%と強みとはなっていないのが現状である。また、去年渡米し活躍した千賀滉大は、ストレートによる失点増減の合計(wFA)が渡米前年12.1を記録しており山本由伸は21.8、今永昇太は8.5であるが高橋は3.3と物足りない。

球速ドットコムより引用


本人は球速にはこだわりを持っており、最低でも160km/hは出したいと語っている。現在でも最速157km/hを記録する4シームがどこまで成長するかは見ものであり、MLBスカウトもこの劇的に上昇し続けている球速に関心を示しているが球速と共に質も向上させることができるか注目したい。


2つ目はK%だ。K%とは、対戦打席のうちの三振の割合であり平均は約18%ほど。奪三振は投手が自力で奪うことができる唯一のアウトであるため、K%の高さは投手が野手に頼らずどれだけ優れた投球をしているかを推し量る上で重要な指標である。

このK%が22年は18.2%、23年19.2%と平均、平均以上こそ記録してはいるのだが、直近でMLBに渡った投手千賀滉大、山本由伸、今永昇太の3人はいずれもこの値が約30%なのだ。その千賀は新人王投票2位、防御率リーグ2位、200奪三振の活躍を記録しておりK%の値はMLBで活躍するための大きな要素と言えるだろう。


MLB挑戦した日本人投手

ここでは過去にMLB挑戦した日本人の中で成功したプレイヤーや苦戦したプレイヤーがそれぞれ多くいるが、渡米前年、渡米後にどのような数字を残したのか見ていこうと思う。

苦戦したプレイヤー

1人目は有原航平。2020年に防3.46、132.2回を投げ106奪三振を記録し2021年にレンジャーズと契約。しかしMLB通算防御率7.57と散々な成績に終わった。苦戦した大きな要因はMLB平均を大きく下回る4シームの球速だろう。MLB平均93.9mph(151km)に対し有原の4シーム平均球速は91.2mph(146km)であり、日本でもイニング以上の奪三振を記録したことはなく渡米前年20年のK%は19.4%であった。また4シーム以外の全てのボールが平均球速を下回っており効果的なボールがなかったことも飛躍できなかった要因だろう。

Baseballsavantより引用


2人目は山口俊。2019年にセリーグ3冠を獲得し、その実績を引っ提げてブルージェイズ入りしたが防8.06に終わり、わずか1年でNPB復帰。山口はNPB時代にもイニング以上の奪三振を記録したことは何度もあり渡米前年のK%もリーグ2位の26.7%であった。しかし有原同様4シームの平均球速は90.8mphと大きく下回っておりその4シームは被打率.324,被長打率.618と痛打されることとなった。またコントロールの悪さも挙げられる。渡米前年はセリーグで規程内ワースト2位のBB%8.5%を記録しておりMLBでも25回を投げ19個の四死球を出すなど制球面の問題も目立った。

Baseballsavantより引用


山本や今永と同じく昨オフ渡米した上沢もまた平均球速が91mph程度で特筆した変化球や奪三振能力もないためか苦戦を強いられている。


球速がなくとも飛躍した例外も



デトロイト・タイガース所属の前田健太は平均球速が91mphながら一線級として活躍し続けているが、コントロールの良さとスプリット、スライダーを大きな武器とし毎年イニング以上の三振を記録し活躍している。そしてMLBでは4シームよりスプリットの割合が大きくNPB時代同様、変化球主体のスタイルとなっている。変化球の質の高さの他にも渡米前年度のBB%5.0%とコントロールの良さがあるのも前田が飛躍できた要因だろう。

Baseballsavantより引用


しかしNPB時代にはイニング以上の奪三振は記録したことがないため現状の高橋の奪三振能力のみを評価し一概に全てを否定することはできないだろう。NPBを否定するわけではないが、MLBの方が数字に基づいた論理的な野球をするため高橋の才能をさらに開花させることができるコーチと出会うかもしれない。


成功したプレイヤー

1人目はダルビッシュ有だ。NPB時代は5年連続で防御率1点台を記録し3度の最多奪三振に輝くなど文句なしの成績でMLB挑戦。MLBでも最多奪三振や日本人初の最多勝のタイトルにも輝くなど名実ともにレジェンドと言えるだろう。

そんなダルビッシュだがスライダーなど多彩な変化球は勿論、投球の軸となる4シームの平均球速は36歳で95mphを記録するなどやはり成功している投手の球速は速く、必要不可欠な要素と言える。

ダルビッシュ有球種別平均球速
Baseballsavantより引用

また、MLBではイニング以下の奪三振を記録したことは一度もなく、球速と奪三振能力を備えることが飛躍するための大きな要素と考えられる。


2人目は千賀滉大。NPB時代から代名詞のお化けフォークを駆使し新人ながら防御率リーグ2位、新人王投票2位、200奪三振達成とレベルの高さを見せつけた。活躍の大きな要因となったのは千賀もまた球速と支配力を持ち合わせるプレイヤーであったからと考えられる。4シーム平均は96mphでカットボールやフォークも平均以上のスピードを見せた。

千賀滉大球種別平均球速
Baseballsavantより引用


K%もブレイク前から高い数字を毎年残しており渡米前年は27.5%であった。また、ストレートによる失点増減の合計(wFA)も22年は12.1、フォークは12.4と高い数値を叩き出し、これがそのままMLBで通用した形だ。(高橋はこの数値がストレート3.3、フォーク5.9となっている)

2023年千賀滉大
Baseballsavantより引用


※直近渡米し大型契約を手にした3人(千賀、山本、今永)はFIP(与四球、奪三振、被本塁打による評価)の数字が優れており渡米前年に千賀2.59、山本1.74今永2.68と2点台中盤〜以下を記録しているが、昨年の高橋のFIPは3.17と防御率と比較すると乖離が大きくなっており、守備要素が絡んでの防御率というのが否めない。実際に苦戦した渡米前年の有原のFIPは3.68、山口は3.08となっており活躍するためには3点台を切ることを目指したい。

まとめ

苦戦した投手、成功した投手を照らし合わせると、やはり活躍するには4シームの高速化と奪三振能力を持ち合わせることが重要な鍵になってくると考えられる。現状の高橋はどちらかと言うと有原らに近い数字となっているが平均球速の劇的な上昇であったり成長をまだまだ感じられる。そしてまだ彼は発展途上だということを私は強調したい。20年途中にブレイクし21年に1番手として1年間ローテーションを回し、22年にはエースらしい防御率を記録し23年には平均球速の劇的な上昇、と毎年変化を見せ成長し続ける彼の姿を見ていると期待に胸を膨らませずにはいられない。千賀や今永も約30歳で渡米してるため、焦らず課題をクリアしいつかMLBの舞台で飛躍することを切に願いnoteを締めようと思う。


P.S. LAで見たいナ❗


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