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「日本人はなぜキツネにだまされなくなったのか」(内山節著)(その3)

「私たちは気軽に旅に出られるようになった。その気になれば世界中の情報を集めることもできる。言論や出版、思想などの自由もほとんどが実現している。教育の機会は満ちあふれ、政治に対する選挙制度なども確立している。街は人に溢れ「自由な市民社会」を人々は享受している。・・・(中略)・・・

ところが、にもかかわらず充足感に乏しい。一体何が乏しいのか。

身体の充足感。生命の充足感。現在の問題意識から切断されているゆえに「みえなくなった知性」の充足感。

知性を介してしかとらえられない世界に暮らしているがゆえに、ここからみえなくなった広大な世界のなかにいる自分が充足感のなさを訴える。それが今日の私たちの状況であろう。そして、だからこそ、この充足感のなさを「心の豊かさへ」などと再び知性の領域で語ってみても、何の解決にもならないだろう。」(P157−158)

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