手間をかけた習慣(2021.11.23)
音楽を聴くのも一手間かけていた。いちいちiTunesでプレイリストをつくってCDを焼いた。バラードかハードロックか。曲のつなぎ方とか一切考えないで、とにかく好きな曲を、容量マックス16曲まで詰め込んだ。
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助手席に乗り込むと、カーステレオをいじくって、焼いたCDを再生する。最近、これ聴いてるんだ。ハンドルにコツコツと人差し指でリズムを取りながら「いいね」、運転席の父が返す。そうして大抵、お互いの、好きなUK古典ロック、冴えないけど惹かれるものがあるインディーズバンド等の話になる。なんだか父を親友に思うような、心地よい時間だった。スマホを持ち始めても、大学生になっても、二人の習慣は続いた。車の中で、車の中だからこそ、生まれる時間だった。
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車社会の福井、仕事でも休みの日でも、車に乗る。お気に入りのバンドは、相変わらずCDで聴くことが多い。手間もお金もかけていた、懐かしい時間をいつも思い出す。「このアルバム、好きだろうな」父の顔が、思い浮かぶ。