ディズニー・プリンセスの系譜から考える『シュガー・ラッシュ:オンライン』初見感想

先程『シュガー・ラッシュ:オンライン』を観てきた。歴代ディズニー・プリンセスが大集合した予告編が話題を呼んだこともあり、ずいぶん前から公開を楽しみにしていた作品だった。

普段洋画は基本的に字幕で観ることにしているのだけれど、今日調べてみたところ今作、字幕上映をしている映画館がとても少ない。思い返せば『モアナと伝説の海』もそうだった気がする。早く観たい気持ちが勝ったので、ひとまず最寄りの映画館で吹替版を観ることにした。字幕版も近日中に観ようと思う。

以下ネタバレ感想

夢>(恋)愛?

「自分らしく生きること」と「好きな人と一緒にいること」は、どっちがより大切なんだろう。ディズニーはずっと「夢」と「愛」を両立させるハッピーエンドにこだわり続けてきたように思う。白雪姫やシンデレラ、オーロラ姫は「王子様と結ばれること(=恋愛)」を夢みていたし、それを叶えた。アリエルやベル、ジャスミンは「自分の知らない広い、新しい世界を知る」という夢を叶えた上で、恋人と結ばれた。『アナと雪の女王』『モアナと伝説の海』など、最近の作品では家族愛や友情のような絆を描き、「愛」を恋愛に限定しないようにする傾向もあると思う。前作『シュガー・ラッシュ』もそうで、ラルフとヴァネロペの関係は作中では「親友」と表現されている。ともかく、そのような最近の作品でも、「愛」と「夢」が両立しないハッピーエンドというものはあまり描かれてこなかった。(例外:ポカホンタス)

それを踏まえると、『シュガー・ラッシュ:オンライン』の結末には意外性があったと思う。今作では、ヴァネロペにとっての「夢(しっくりくる、自分らしくいられる居場所にいること)」と「愛(親友ラルフと一緒にいること)」の両立が不可能になる。そして、最終的に彼女は「夢」を選ぶのだ。エンディングでの、遠距離恋愛中のカップルのように3Dホログラム電話で近況を報告する二人を見て、少し寂しい気持ちになりつつも、「そりゃまあ、そうなるよなあ」と思った。ディズニーが今回それを描いてくれてよかったとも思った。

これを書いていて、『プリンセスと魔法のキス』という作品のことを思い出した。面白い作品だけれど、作品の持つメッセージには厭だなと思う点もある。観た人はわかると思うけれど、この作品には「一人で仕事や自己実現の夢を追うだけじゃダメ、愛を大事にしないと」というメッセージがあると思う。最終的には仕事の夢と恋愛が両立するハッピーエンドだったけれど、そこに至るまでにヒロインのティアナが「夢」より「愛」を選ぶという過程が不可欠だった。

『シュガー・ラッシュ:オンライン』でも、ラルフの危機を救うため、ヴァネロペが一度は「夢」を諦めようとする。しかし、ラルフがそれを良しとしない。ヴァネロペへの執着心を認めながらも、彼女を束縛することは許されないことだと自分自身に言い聞かせるのだ。そう考えると、ラルフはヴァネロペに執着するあまり彼女が夢中になっているものを台無しにしようとするようなメチャクチャ駄目なところのある男だけれども、自分の駄目な部分や弱い部分を認識し、自分で自分を宥め、良くなろうとする力のある、なかなか見所のあるキャラクターだなあと思う。『美女と野獣』の野獣よりはずっと好きだ。

話が逸れたけれど、とにかく、ヴァネロペが夢より愛を選ばされなかったこと、愛を優先することを奨励されなかったことは、良いと思うか悪いと思うかは人それぞれだろうけど、大きな変化だと思うのだ。私は良かったと思っている。

しっくりくる居場所は生まれた場所とは限らない

『シュガー・ラッシュ:オンライン』を観て 、ヴァネロペもディズニープリンセスなんだなあと思った。アリエル以降のプリンセスが皆備えている「新し物好き」という性格が、彼女にもしっかり備わっていることが、今作では映画冒頭から繰り返し描かれる。そして、彼女は自分の世界だったお菓子のレースゲーム「シュガー・ラッシュ」から飛び出し、危険で予測不能で刺激的なレースゲーム「スローターレース」へと移籍するのである。

『シュガー・ラッシュ』の世界観では、3D化はされるものの、キャラクターたちは基本的にそれぞれのゲーム内での絵柄・頭身のまま存在している。絵柄や頭身によって、それぞれの住む世界がわかるし、そこにいることがしっくりくるように(観客から見て)見える。(前作で成立したカルホーン軍曹とフェリックスのカップルのように、その違いを乗り越えた関係をキャラクターたちが築くのが、このシリーズの魅力の一つでもあると思う。)
このような特徴が、ヴァネロペの決断を観客にとってより意外なものにしている気がする。私たちにはどうしても、ヴァネロペは「シュガー・ラッシュ」にいるのが似合うように見えるのだ。そこにいるべく作られたキャラクターデザインだから。リアルな頭身・絵柄の「スローターレース」のキャラクターたちの中では、彼女は浮いて見える。でも、それで構わないというのが、今作のメッセージの一つなのだろうと思う。
アリエルは人間の世界に憧れ、自由に泳げるヒレを捨て、声と引き換えにして脚を得て人間となり、人間の世界に参入した。彼女はありのままの自分のままで夢を叶えることはできなかったのだ。あるいは、彼女の夢には人魚であることについての卑下や自己否定が含まれていたともいえる。ヴァネロペが自分の姿を変えることなく、自分らしくいるために、(観客から見たら似合わないけれど)しっくりくる場所にいることを選んだということが、なんだか頼もしく感じた。

その他小ネタ

プリンセス大集合、予告で観ていたけれどやはり面白かった。早く字幕版でも観たい。ピクサーっ子のメリダが不思議ちゃん扱いされてるのに笑った。プリンセス部屋の日常もっと観たい。

プリンセスたちが落下するラルフを救ったシーンはとっても良かった。いろんなことが起こって目が追いつかず、一回じゃ覚えられなかったけど、みんなの力が合わさってたり、それぞれの曲がちらっと流れたりするの王道演出だけどとっても良い。

エンディングまできて、そういえば予告で観たウサギちゃんとネコちゃんのパンケーキのやつなかったな??って思ってたらちゃんと回収されたので良かった。入れ方に笑った。

#シュガーラッシュオンライン #ディズニー #映画 #映画レビュー

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