無職日記83 転院2
■前回までのあらすじ
親父が膵臓がんでした!がんセンターに転院!
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というワケでトントン拍子に転院が決まった親父。転院前の病院は朝イチで出るコトになったらしく、母親と車で迎えに行く。診てくれた担当の先生、看護師さんに挨拶して、いざがんセンターへ。膵液を出すために入れた管が車の揺れで痛むようだけど、こればっかりは我慢してくれ。
がんセンターの入院棟に着くと、ロビーには入院前の人達が溢れかえっていた。朝だというのに混みまくっている。これだけ人が溢れている中、昨日の今日で転院できたのは本当にラッキーだったのかもしれない。
名前を呼ばれて病室へ行くと、設備の説明があった。驚いたのが「Wi-Fiのパスワードはこちらです」と案内されたコト。Wi-Fi飛んでるのか!(親父がそういうの不得手なので僕が設定した)。
というワケでつつがなく転院も終わり。次はさらに詳細な検査と体調の回復が目標。これで方針を立てて、手術できる体調になったらOK。
色々検査やらが進み、しばらくしたところで手術と今後についての説明がある、と家族で呼び出される。胃に悪いな。
色々検査してみたところ、やっぱり膵臓がんに間違いないという結論になった。そんで今度は膵液とは別の所にも謎の液体が発生しているらしい。これがもし悪いものだと手術の難易度が上がってしまう(さらに検査が必要)。加えて体の数値が良くない。しばらく食事抜きの点滴生活だったせいで、手術が終わっても回復していくだけの体力が足りないというコトだった。
要するに手術の難易度が上がっている、という話だった。
肝になるのは「謎の液体」で、これがただのリンパ液だったら問題はない。ただ何か別の澱んだ液体だと、視界が悪くなり手術に支障をきたす。
病室に戻るとさすがに応えたようで、母親はもちろん、親父も少し泣いていたらしい。らしいと書いたのは、僕は席を外していたからだ。二人で居たい時間もあるだろうと、トイレにしばらく行っていた。
謎の液体の検査は翌日以降らしいので、その日はそのまま引き上げた。車に乗る前に、妹と、母親の妹にも電話で説明した。母親がややパニックになっていてそれどころではなかったからだ。
親父が「俺、何か悪いコトしたかな?」と言っていたらしい。何かしたかと言われれば何かしたんだろ。でもそんな話を持ち出したらキリがない。というか何の因果関係もない。普通に考えればわかりそうなもんだけど、それだけ親父が弱気になったとも言える。そしてそれに連鎖するように母親もパニックになったのはわかる。
わかるけど、全部「仕方ない」のだ。膵臓がんになる前には戻れない。それを踏まえた上で、次の手を考えなきゃいけない。後ろ向きなコトばかりに目を向ける母親とそんな話をして、少し車中で口論にもなった。そのためにお医者さんが居るのだから、もう任せるしかない。
どうにも母親の気が晴れなさそうだったので、夕食を食べた足でそのままスーパー銭湯へ連れて行った。気分転換とまではいかずとも、大きな風呂でゆったりするコトに、きっと意味はある。
色々と疲労の色が見えてきた。これが看病疲れってやつか。
つづく。