無職日記61 天才

友人のバンドが再結成した。

最近アルバムが出たので買った。贔屓目に見てもいい曲が揃っている。友人にその旨を伝えたら「ボーカルの奴は身近にいる天才だ」と言っていて、違和感を覚えた。

ギターボーカルの人のソングライティングは確かに素晴らしいのだ。それはわかる。だけど、彼を天才と認めるほどの根拠がない。友人は長い年月を経て彼と居るので、そういった距離感を加味するべきではある。それでも、僕は彼を天才とは思えない。伝えるべき言葉のセレクトには違和感があるし、それをボーカルという立場から放つには、あまりにも技量が足りない。「味」と言ってしまえばそれまでなんだけど。

友人も曲を書くので、単純に楽曲の良さで言ったら僕は友人の曲の方が好きだ。メッセージ性でも友人の方がウワテに思う。何より腹が立つのは、その友人がギターボーカルの彼をあっさりと天才と言い切った点だ。

曲を作る人間がそれを良しとすんなよ。嫉妬しろよ。

そう思ってしまった。彼らとの距離感も、過ごした時間も違う。それが全てじゃないのもわかる。だけど、おいそれを天才という言葉を使うなよ。悔しがれよ。平伏するなよ。恥ずかしがれよ。そう思った。僕は少なくともそう思った。モノを作る人間は、モノを作る人間を安易に認めちゃいけない。認めていいけど嫉妬しろ。こんなもんじゃないと逆襲しろよ。してくれよ。

僕はいつだって妬んで、嫉んで、悔しい。天才に、負けたくない。

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