一緒に帰ろう。
亡くなった父の顔は思いのほかきれいでした。
つややかで、眠っているようにしか見えませんでした。母も弟もきれいな父の顔に感心しました。目を開きそうにさえ感じました。
苦しそうだった終末期がいろいろと思い出されます。そして、イヤなところも、好きなところも全部含めて父だったなあと思います。もう食べられない、もう話せない、一つ一つ諦めていかなくてはいけない中、きっとこの世の思い出をゆっくりとさまよって、全部見つめた後に穏やかに去って行ったのではないかと思います。
わたしは父のおかげで、学業を積み重ね、職を得ることが出来ました。父は頑固でねじくれた性格でしたが、あたたかいところもたくさんありました。父が苦しんでいない今は、もう心配はなくなって、ひたすら悲しいばかり。
葬儀まで少し間が空くので、一度帰りました。帰り道に七宝焼の小さな根付けを買いました。父の死を見届けた1日を忘れないため。父ならどれを選ぶかなと考えました。また、お骨を分けてもらうことにし、小さいペンダントも注文しました。一人でいる時間が長かった父ですから、お骨になってしまうなら、ずっと近くにいてもらおうと思いました。こうして自分なりに供養をする準備を整えました。
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再度、故郷に戻り、納棺式、告別式を執り行うことが出来ました。家族だけの小さな式でしたが、父の死を悼む身近な人たちだけでの思いの溢れるような場になりました。父はひとりぼっちの時間が長かった、けれど本当に愛されていたと実感しました。
お骨になったのを見ると、こんなになってしまったと改めて思いました。でも、お骨のほんの一部をロケットに納めました。これから、連れて帰って家にいてもらおうと思います。
式の後は母と一泊し、父の思い出を語りました。残された母、数年以内に退職して実家に帰るつもりの弟、これからについても考えた時間でした。父にはたくさん後悔はありますが、もう今さらどうにもできません。これから、最善と思うあり方を模索していきたいと思います。