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【夢日記小説】7/10
昨晩みた夢が今年一の悪夢だったので、小説風に書こうと思いました(何故)。
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時を止めたような古びた洋館。いや、日本家屋だったかもしれない。イメージは茫洋として曖昧。夢とは大概そんなものである。とにかく、民家とは到底言い難い、浮世離れした建物の前に、ぼくは立っていた。
ただ、なんとなく、ここには一度来たことがあるような気がする。
いつ、どうやって、なんのために。それは分からないけれど。
空には曇天が広がり、生暖かい風が吹いていた。ぼくは興味本位でその建物に近づいていく。辿り着いた先は玄関ではなくて、どちらかというと庭先のようだった。閉じられた戸には何か紙が貼ってあったので、更に近づいて覗き込んでみた。
「――――――!?」
ぞくり――――と背筋が凍るのを実感したのは、これが初めてだった(夢だが)。これは目に入れてはいけない、本能がそう告げていた。
そこ貼ってあったのは、何枚かの「絵」だった。とりわけ目を引いたのは、ムンクの『叫び』のように、人のようなものが目を見開いて、何かに怯えているような、何かを脅かしているような絵だった。紙に鉛筆で殴り書きしたようなモノクロであったが、とてつもない存在感を放っていた。他にも数枚の絵が貼ってあったが、残念ながらそれらは記憶に残っていない。
「安心しな、それは”除霊済み”だから」
「えっ」
びっくりして声のした方向――――絵が貼ってある戸のすぐそば――――を見ると、いつのまにか老婆が立っていた。いや、老婆でなかったかもしれない。髪は白く、少女とか若い女性ではなかったが、そこまで年老いてはいなかった気もする。というのも、腰は曲がっておらず、気品さえ感じる佇まいだったからである。
「ほらここに書いてあるだろ」
その老婆(敢えてこう表記する)が指差す先には、確かに絵の横に「除霊済み」と丁寧な字で書かれた紙が貼ってあった。
だが、まるで意味が分からない。除霊とは一体何なのか。
呆気に取られるぼくに構わず老婆は続ける。
「ほら、これを描いた女性。1年前に子供を産んで死んだんだよ。あんたも会ったことあるだろ」
その言葉を聞いて、ぼくは何かがフラッシュバックした。ぼくは確かにここに来たことがあって、その女性と会っている。だが、1年前に子供を産んで亡くなった…?そしてこの絵を描いた…?何も情報が繋がっていかない。
ジグソーパズルを解いている途中で、別のパズルのピースを渡されたような気分だ。
無言を貫くぼくを咎めるでもなく、促すでもなく、独り言のように老婆は続ける。
「どうする?買っていくかい?」
「え…?は…?」
初めてぼくは老婆に応答した。だが、狼狽するばかりで、到底会話と呼べるものではない。こんな一瞥するだけで心身が震えあがるような絵を買うだなんて、あり得ない。除霊がなんなのかさっぱり分からないけれど、除霊済みだなんて、絶対嘘だと思ったのだ。
「ぼく、帰ります…………えっ」
振りむいて唖然とした。そこには、さっきまで、確かに何もいなかったのに。
「がるるるるる…!」
ぼくの目前で、黄色と黒の縞々の獣、”虎”が唸り声をあげていた。殺気立った瞳は、ぼくを確かに捉えている。本能的に襲われる!、と感じ、虎がいない方向に向かって慌てて駆け出した。
「うわっ!」
だが、そこにもまた虎が現れる。辺りを見回すと、そこには10匹以上の虎がいたのだ。万事休す。もう、どうにもならない、そう諦めかけた。
「安心しな。ほら、後ろ足を見てみろ」
どこからか老婆の声が聞こえる。ぼくは、無我夢中で目の前の虎の後ろ足を見てみた。
何と後ろ足の二本は、力なく”だらん”と垂れ下がり、身体を支える役割を果たしていない。虎は前足二本のみで立っていたのだ。
どういうこと…?
「後ろ足のアキレス腱を切ってあるからね。走れないんだよ」
ぼくの無言の問いに、老婆はそう答えた。
確かに、虎の脚力なら、ぼくの喉笛がとっくに嚙み千切られててもおかしくはない。だが、ぼくは無事である。よく見ると、どの虎も前足のみを動かして、後ろ足を引きずり、這いずって動き回っていた。その速さは僕が普通に歩くよりもずっと遅い。これでは、ぼくに追いつくことなどできるはずもないのだ。
ただ、無数の虎の群れがハイハイしているのを見て、ぼくは安心感を覚えるより先に、その異様なおぞましさに鳥肌が立った。
どちらにせよ、ここから逃げないとまずい!ぼくは再度駆け出し、虎たちと老婆を置き去りにした。
しばらく走った先には階段があった。ここを下れば帰れる!と胸を撫でおろした。
だが、今度は立ちふさがるように老人が現れ、その老人の背後には流星のように数多の霊魂が飛び交っていたのだった。
――――――ぼくは限界だった。
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ここで目が覚めたのでした。二度寝して続きを見たような気がするし、大学時代の友達が登場した気もするけど、その辺は覚えてないです、残念。