胚移植を終えて
先日、凍結保存していた胚の移植を行った。
排卵日から数えて移植の予定日が決まり、実際に移植を行うかどうかはその日の朝に検査をした後決定する模様。
移植予定日当日。朝一番にクリニックへ行き、エコー検査とホルモン値確認のための採血を受けた。子宮内の状態は良いとのことで、ホルモン値の結果が分かり次第追って連絡をするとのこと。
本来であればここで黄体ホルモン補充のための注射も行うようだが、自己注射の際に軽いアレルギー反応が出たため、ひとまず移植が決定するまで注射は見送りとなった。
血液検査の結果を待つ間は自宅にて待機をした。数時間後、問題なく移植が行えるとの連絡を受け再びクリニックへと向かった。
クリニック到着後、血圧と体重を測定し待合室の椅子に座る。すぐに呼ばれ培養士の方との面談をし、そこで移植する胚の融解後の状態の説明を写真とともに受けた。凍結時と同じグレードで良好とのことでまずは一安心。そして処置室にあるベッドへと案内をされ着替えを済ませた。
待つこと十数分。渡された胚の写真を眺めながら「もうすぐ体の中に戻ってくるんだね」と、思わず呟いた。そして奥の手術台へと移動した。
(一か月前、ここで採卵をしたなぁ)そんなことをぼんやり考えていると、担当する先生がやって来た。
移植は麻酔なしで行うとのことで幾分緊張をしていた。まずは患部を綺麗に洗浄し、下腹部のエコーを通して何やら子宮内を確認している様子。(リラックス、リラックス…)そう意識を集中すること数分で「はい、終わりましたよ」という先生の声が聞こえた。手術台に座ってから10分程の出来事だった。その後数分間は移植した胚が落ち着くまで横になったままでいるよう指示を受け、同席していた培養士の方と雑談をして過ごした。
そして先生がエコー画像を見せながら説明をしてくれた。「これが子宮で、これが内膜。そしてここに見えるのが移植した胚です。場所は良さそうですね」
テキパキと説明してくれる先生の指す先には、ぼんやりと小さな白い点が見えた。どうやらそれが胚(正確には移植した胚の目印のようなもの?)のようだった。あまりにも小さくそれが体内にあるという実感が湧かなかった。
その後着替えを済まし帰宅。なるべく腹部に刺激を与えないようゆっくりと歩いた。この日から妊娠判定日の翌日まで、黄体ホルモンを補充するために座薬を行うこととなった。
移植当日と翌日は特に神経を使った。朝はなんとなく下腹部に違和感があるような、それが座薬の影響なのか移植の影響なのかはわからない。それ以降の日々はいつもとほとんど変わらない生活を送っている。強いて言えば、ネガティブなことを考えたりしないよう、そして後悔しそうなことはやらないようにだけは心がけている。
待つだけの時間は長い。治療を受けている他の方々もみなこうして過ごしているのかと思うと、それだけで尊敬の念を抱く。
妊娠判定まであと少し。初めての移植は思ったよりもあっさりと終わった。
ところで以前、生まれる前の記憶があるという小さな女の子の話がテレビ番組で取り上げられていた。その子によると、お母さんのお腹の中に来るまでは空の上で神様と一緒に過ごしていて、そこから自分のお父さん、お母さんのことを見ていたとか。そして、神様の合図で滑り台をすべって降りてきた(生まれてきた)といったことを話していた。どこまでが本当の話かはわからないが、なんだかそういうことも信じてみたくなった。
私も夫もできる限りはやってきた。クリニックの先生・培養士さん・看護師さんたちも同様に手を尽くしてくれたであろう。あとはもう神様にゆだねよう。どんな結果でもそれがスタートライン、前を向いて笑顔でいよう。きっと、その姿も見てくれているはず。
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