第六章 開始③
「……」
「はあ……やっと理解してくれた?だから、安奈には今まで通り店には来てもらうし、それを梨紗が嫌だって思うのは分かるけど、だから信じてもらえるように頑張ろうとしてたでしょ?オレ」
そこへ、先ほど頼んだゴールドが運ばれてきた。
こんな大事な話をしている時にっ。
「……分かった。じゃあ、あたしが今日もしも勝ったとしても、安奈に一哉くんと縁を切れとは言わない。約束する。だけど、この闘いは止められない。空くんもむかつくし」
それに、なんと言ってもシャンパンコールで大金をホスクラで遣う事。
こんなにも、すっきりとした気分になり楽しい事なのだとは思いもよらない事だった。
ストレス発散には、持って来いだ。
今ならば……。
鈴や充、栞の事。
発散できるような気がした。
そして、綺麗なシャンパングラスに並々と注がれたゴールドを、味を気にする事もなくこれまた一気に飲み干したのだった。
三度目のマイクコールで、ちょっと酔いが回ってきたあたしは……。
「一哉は、黒より金の方が好きでしょ?」
言い放った。
店内が、女の闘いっぷりにものすごい盛り上がりを見せる。
どこからか拍手まで沸き起こっている。
そして、どこから聞きつけたのか知らないが、スーパーライトは気付いたら満卓で、その全員がブリリアントの梨紗対マチルダの安奈の闘いを見に来ているらしかった。
これは、やっぱり意地でも負けられないわ。
皆がこのバトルを知っている理由。
サイトだ。
サイト内で、このあたし達の闘いが生で実況中継されているのだ。
どこの卓の女が書き込みをしているのかは分からない。
だって……。
客は皆、携帯をいじっているのだから。
あたし達がシャンパンを入れ合っている事で、必然的に店のホスト達はどの卓にも着く事ができない。
オンリーの卓ばっかりだ。
それでも皆、全然ホストが着いてくれない事を分かっていて、この闘いを見る為だけにスーパーライトに集結しているのだった。