第九章 再修羅場⑧
「一哉、携帯ずっとブルブル鳴ってるよ」
「ああ。なんか、安奈から鬼のように電話来てる。アイツ、マジでストーカーにでもなりそうだな」
なんて言っている。
安奈は、一哉にチクる気だ。
多分、きっと、自分が被害者のように話すのだろう。
一哉は、これから出勤で。
出勤の準備をしている。
「一哉、あたしがどこに行ったのか分からない?」
「ん?どこ行ってきたの?」
「安奈の電話に出てみたら?さぞかし、悲劇のヒロインぶってると思うけど」
「……マチルダに行ったの?」
髪をセットする一哉の手の動きが止まる。
「犯人、見つけたの」
「まさか……安奈?」
「安奈に大恥晒してやったから。一哉に泣きつきの電話かけてきてるんじゃない?」
「何危ない事やってんだよ。オレが犯人は見つけるって言っただろ?マチルダのバックはヤクザだぞ?眼つけられたらどうするんだよ」
「ブリリアントもスーパーライトだって、裏はヤクザよね?」
「……分かった。電話に出る」
そう言って、あたしの隣に座り込む一哉。
そして、またまた安奈からの着信が鳴る。
一哉は、宣言通りに電話に出た。
「もしもし」
「一哉?!何で電話に出ないのよ?!」
安奈の半狂乱の大声は、隣に座るあたしの耳にも聴こえてくる。
「撮影だったから」
「梨紗が……梨紗が……一哉と同じ車に乗ってた……説明して!」
もしも、安奈にあたし達の関係を話そうものなら、安奈はサイトであたしを叩きまくって、一哉の営業妨害をしまくるだろう。
それに、ナイフまで出す女なのだ。
何をしでかすか分からない。
一哉は、あたしの手をギュッと強く握りしめた。
「黄色いポルシェに梨紗が乗ってたの?」
「そう!一哉と同じ車に乗ってたのよ!」
「……それよりも……オレに話さなくちゃならない事があるんじゃないの?安奈」
「何を……」