第七章 融合しちゃったんだってば!②
夜。
どちらからともなくというか、「もう寝る?」とか……。
あたしも珀ちゃんも、言えずにいた。
寝室に入るタイミングすら、分からない。
今までのように普通に何も考えず、「先寝るねえ、おやすー」ではいられなくなった……。
もう一時、か。
何か……今日こそは、そういう雰囲気になりそうで……多分、お互いに分かっているから。
だって、部屋の空気が、緊張でピンと張り詰めているような気がするのは気のせい?
あー、もう!
どうしよう、どうしよう。
よし、あたしがさりげなく言おう!
「あっち行って、本読んでから寝るねえ」
「うん」
ナイスナチュラルなあたし♪
間接照明の明かりをつけ、電気を消した。
「さ、読みますか♪」
――あー……。
今のタイミングで、一緒に寝室へ行くべきだったか?
でも、金魚のフンみたいで、それは嫌だ。
どのタイミングで、オレは行けっつーんだよっ!
千尋が寝てから?
遅過ぎる!
そうだよな、今は本を読んでるんだもんな。
おし、オレも寝室へ行く!
襖をあけて、千尋の隣にお引越しした布団の上に寝転がった。
「その小説、面白い?」
「まだ、そんなにちゃんと読んでないから」
「ふうん……」
あたしは、必死になって探していた。
恋愛小説には必ず書かれてあるであろう、ベッドシーンのページを!
官能小説を買う勇気などさすがになく、勉強の為にわざわざ恋愛小説を買ったのだから……。
そうよ!
まさしく、今日という日の為と言ってもいいくらい!
あたしが、やけにペラペラとページをさっさとめくるもんだから、
「千尋って、本読むのすげー早くない?!」
「いや……面白いシーンを先に読むようにしてるの……」
見つけた!
おっと……。
これは……。
結構、激しめに書かれているのね。
大人向けの小説だわ。
とりま、痛いのね。
けど、少し我慢していれば、その部分は温かくなってくるらしい。
そうすると、緊張もほぐれてくるようだ。
感覚だけに集中、か。
感覚だけに集中……。
感覚だけに集中……。
それなら、できるかもしれない。
「……寝るね」
「おやすみのチューは?」
珀ちゃんに、そっとキスをした。
「おやすみなさい」
「おやすみ……」
あれ?
このまま眠るのだろうか。
二人が考えている事は、共通しているはずなのに……。
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