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第十章 平和?!⑩
VIP席は、他の席とは異なり完全に隔離されている。
すごい。
さすが、愛梨的に言うと、今ノリに乗っている『サムサラ』なだけある。
他にも同業が来ている様子だ。
VIP席は、今日は同業の貸し切りなのかな。
「スゲー盛り上がってるねえ」
「ありがとうございます!もう酔っ払っちゃってるし……」
グダッと前につんのめりそうにして見せる拓巳。
「拓巳!あたしから誕生日プレゼント!」
大きな花束を手渡した。
「梨紗……あ、ありがとう……オレ、泣きそう……トイレで泣いてきてもいいっすか?」
「ダメだから笑。じゃ、拓巳可哀想だから早速シャンパン入れてやるか!」
バースデーは、主役が潰れるのが鉄則!
お祝い事にシャンパンは欠かせない!
「どうもー」
あ、代表さんだ!
「優月さん、お久しぶりです!」
なんて、挨拶をする一哉と空。
「あ、梨紗ちゃんだよね?通りで拓巳、喜んでると思ったわ。何、一哉のお客さん?」
「いや、彼女です」
「へえ、そうなんだ?」
「内密でお願いしますよ、優月さん」
嬉しかった。
ちゃんと、『彼女』だと紹介してくれて……。
「拓巳、多分それ知ったら泣くよ笑?」
「いや、もう知ってます……」
「あらら。今日は一哉には倍祝ってもらわないとな」
なんて、もう一本入れろって合図ですか笑。
シャンパンコールで……。
拓巳は、あたし達のグラスに入れた残りのボトルを全部一気飲みさせられていた。
ちょっと可哀想な気もしないでもない。
こりゃ、潰れるのも時間の問題だ。
しかも、一哉は本当にもう一本シャンパンを入れたのだった。
た、拓巳は……。
潰れる寸前!
まあ、もうすぐ営業も終わりの時間だ。
大丈夫だよね、拓巳?!
「梨紗……介抱して……」
あたしの隣に座って、甘えてき始めちゃった拓巳。
げ。
いくら隔離されていて女の客からは見えない席だとしても……。
一哉の前じゃまずいっつうの!