押弦しやすい指の状態とは?
はじめに
弦楽器を弾く際に複雑なコード(ギターであればFコードなど)は慣れないうちは弦を正確に押さえることが難しく、弾くはずの弦をミュートしてしまったり無理に指を動かしてすぐに疲れてしまう等、心当たりがある人もいるのではないでしょうか。
初心者であればそこで楽器の練習を諦めてしまう人もいるかもしれません。パワーコードのように押さえる弦が少なかったり、指の動きが似ているコード進行であれば話は早いのでしょうが、それだけだと演奏できる曲の幅が狭まってしまいますね。
そこで今回の記事では押弦しやすくなるための指の状態やストレッチ方法等を2回に分けてお伝えいたします。
まず人の指の構造を簡単に説明します。
人差し指から小指までの指:
いわゆる第1関節から指の付け根に向かって関節の名前をそれぞれ「DIP関節(第1関節)」「PIP関節(第2関節)」「MP関節(指の付け根)」と呼びます。
DIP関節とPIP関節は主に前後の曲げ伸ばし(以下:屈曲と伸展)動作を行う関節であり、弦を指板に押さえる上で重要な動きとなります。
MP関節は上記の屈曲と伸展動作以外に横方向への開閉(以下:内転・外転)動作が行え(例:人差し指が中指・親指方向へ動く)、フレットが離れたコードを押す時に必要な動きを行います。
親指:
爪の方からの関節の名前をそれぞれ「IP関節(第一関節)」「MP関節(指の付け根)」「CM関節(掌の親指側)」と呼びます。
IP関節は人差し指等と同様に屈曲と伸展動作を行います。
MP関節も同様に前後の屈曲と伸展動作を行い、加えて内転・外転動作も行いますが、他の4本の指と比べると可動域は少ないです。
CM関節は掌の親指側に存在する関節で(ここにも関節があります)、屈曲・伸展、内転・外転動作を行います。様々な靭帯で補強されており、対立位(親指と小指を近づける動き)で力を入れると、
中手骨掌側の突出部が大菱形骨の陥凹部にはまり込み、CM関節は安定性を得て、強い力でピンチできることとなる (片岡利行:手指関節のバイオメカニクス Jpn J Rehabil Med 2016 ; 53 : pp765-769)
と言われています(ピンチ:つまむ動きのこと)。
要するに親指と小指を近づけるようにすると親指の付け根の骨が他の骨の窪みに嵌まり込んで関節が安定するということです。
ここまでの説明を踏まえて、人差し指から小指までの指で弦を指板に押さえる際にはいずれの関節も屈曲(指を前に曲げる動き)方向への力が必要になります(外見上は必ずしも指が前に曲がっているとは限らない)。また親指はネックを後ろから押し付ける力が必要になります。
単純に指を曲げる筋トレをしまくれば弦をしっかり押さえられるのでしょうが、関節の構造や仕組みに沿って指を動かすことで無理な筋トレをしなくてもしっかりと弦を押さえることが可能になります。
次回の投稿でいくつかの例をお伝えいたします。