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スラップ奏法を考える その2

 前回の投稿でスラップ奏法における前腕回転軸についてのお話をしました。

 人の体は基本的には軸に沿った関節運動を行いますが、筋肉の疲労や動きを意識しすぎてしまう(今回の場合だとサムで弦を叩く・プルで弦を引く等)ことによって本来の軸に沿わない関節運動が行われる可能性があります。

 関節に負担がかかった状態で動かし続けると結果的に怪我をしたり演奏動作を妨げてしまう要因にもなります。

 そこで今回、スラップ奏法における前腕回転軸を踏まえた練習方法や一工夫をお伝えします。

手首から上を前腕の軸に合わせる

 前腕の回転軸は前腕の中心を通っているわけではない為、画像の青線を軸としたイメージで回内外動作を行うと、実際の回転軸(赤線)から少し離れた距離に手の重さ(質量中心)が位置します。

前腕骨格のコピー

 例えとして適切かは分かりませんが野球のバットを振る時に肘を伸ばした状態で振るのと、肘を曲げた状態で振るのとではバットの速度が違うように感じたり、バットを振るために必要な筋肉の働く量も違うと思います。

 この場合はバットが手、背骨が回転軸(と仮定します)、バットを振るための腕の筋肉がスラップに必要な前腕回内外筋になります。

 軸から物体の質量中心までの距離が近ければ近いほど筋肉の働く量は少なくなります。

 物理の話で言うと「第3のてこ」になります(wikipediaより)。

 これらを踏まえると、スラップ奏法をする際の手の位置は小指側に少し傾けた状態にすることが重要であると考えます。

この動きを「尺屈」と言います(画像赤線の動き)。

右手尺屈

ペン先の向きでイメージする

 この尺屈を保った状態でスラップ奏法を行う場合に、1つの目安として覚えてもらいたいのが「ペンを掌で握った時のペン先の向き」でイメージしてもらうことです。

 指の方に意識を向けると、複数の構え方があるものに関しては話がややこしくなるためです。

普通に握ると

ペン 普通持ち

尺屈すると

ペン 尺屈親指付き

ペン サムの親指付き 尺屈

親指の構えが変わってもペンの向きは変わらないことが分かります。


例として右利きの人が座った姿勢でスラップを行う場合

サムは弦を弾いた後のペン先が「左膝」を向いていれば尺屈を行いながら前腕回内運動が行えていると思ってください。

普通のサム

サム 普通のコピー

尺屈を伴ったサム

サム 左膝向きのコピー

 微妙に親指とMP関節外側が左膝の方向に向いているのが見えますでしょうか。

プルは弦を弾いた後のペン先が「前方」を向いていれば尺屈を行いながら前腕回外運動が行えていると思ってください。

普通のプル

プル 普通のコピー

尺屈を伴ったプル

プル 前方向きのコピー

少し極端な手首の返し方にしていますが矢印が前方を向いているのが見えますでしょうか。

テーピングに頼ってみる

 人間ですので長時間の演奏や演奏曲に求められる筋力が無い人はいずれ肘周りの筋肉が疲労を起こします。そこで補助的な役割としてテーピングを貼るということが挙げられます。

 個人的な考えとしては簡単な貼り方で目的とする筋肉の負担が軽減できれば自分1人でもテーピングを貼って自分の体をケアすることができると考えています(スポーツトレーナーの方々がやられるようなしっかりとした貼り方では無くても)。

 前腕回内外運動をする筋肉は大きく分けて円回内筋、方形回内筋、回外筋があり、それぞれの走行に沿ってテープを貼っていきます。

回内筋の走行

肘の方に位置しているのが円回内筋、手首の近くに位置しているのが方形回内筋

回外筋

 回外筋は薄い水色で描かれている筋肉。その隣にあるのが腕橈骨筋と呼ばれる筋肉ですがこの筋肉は補助的な役割を果たします。

 テープの貼り方としては矢印の方向に向かって皮膚を軽く引っ張りながらテープを貼ります。実際の演奏時に疲れてくる部位と照らし合わせて参考にしてみてください。

① 円回内筋 

円回内筋 テープ

② 方形回内筋 

方形回内筋 テープ

方形回内筋は少し斜め方向に走行しており、筋肉の形態的にも回転軸に合っているのではないかなーと勝手に思っています。

③ 回外筋

回外筋

今回はここまでのお話となりますが、何か1つでも皆様の演奏活動の手助けになれば幸いです。

それではまた!




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