創作「あなたの次の恋」
ある時、私はあなたに恋をしていることに気づいた。
それは、実際にどうこうできるというものではない淡い淡い恋心。
それならば、この気持ちをそのまま胸の中で眠らせてしまうのが最も楽なやり方だ。
そうすれば、その恋心が膨らんだり、また、そんな気持ちが高ぶったりすることはない。
やはり、これが無難で賢いやり方だ。
もう、その恋に悩まされることはない……。
ただ、そんな気持ちを寝付かせるまでにはどうしても時間がかかってしまう。
それは、あなたに抱いた好意を別のものに変えなければならないから。
これをしなければ、自分の気持ちを殺すのと同じ。だから、そんなことはできない……。
私は失恋をしたのではない。だから胸の痛みというものはほとんどない。ただ、好意を抱いていたあなたを別の対象に変えるのには悩みが伴う……。
当然、あなたを悪い対象にはしない(と言うより、そもそもそんなことはできない)。
だからと言って、あなたのことを思いながら、別の良い対象を探り当てるなんてこともできない(だって、私にとって今のあなたが良い対象であるのだから)。
だから、私は他の人に接する。
あなたのことは心の隅の方に置いたまま……。
人というのは本当に十人十色だ。
他の人は他の人で、あなたとはまた違った魅力がある。
私がその人をすぐ好きになることはないのだろうけど、その人といると私はあなたのことを忘れられる……。
このまま、あなたのことを忘れてしまうのも自由(単にあなたのことを忘れるだけ。これなら自分の気持ちを殺したことにはならないから大丈夫)。
あなたを忘れてしまうことに、やっぱり寂しさはあるけど、所詮それは一時的なもの。
だから、そうするのが手っ取り早いと単純に思う……。
でも、実際そうするかどうか、私はまだ決めかねている……。
この先、私がその人とどうなっていくのかは当然わからない。
ただ、私とその人の関係が続いていく中で、仮に私の心の中にいるあなたが別の良い対象になっていたのなら、あなたは私の心の中で生き続ける。
そして、もし、あなたが私と同じ気持ちで、私と同じようなことをしていたのなら、私とあなたの新しい関係が始まる……。
私の心の中で眠らせていたあなたへの思いを、あなたの心の中で眠らせていた私への思いを目覚めさせたのなら、それは次の恋の始まり……。
それは確かな恋の始まり……。
それは素敵な恋の始まり……。
だから、人は恋することをやめられない……。