見出し画像

【海外転職】迷宮と葛藤の中で芽生えた開き直り

一人で進む道と見えてきた人間関係の大切さ

書類の申請に、こんなに時間がかかるなんて思いもしなかった。
たかが書類、されど書類。簡単なことのはずなのに、手続きが進むたびに面倒さが増していく。まるで終わりの見えない迷路に迷い込んだかのようだ。気づけば、心の中に焦りと不安が静かに、けれど確実に広がり始めていた。

「こんなに時間がかかっているのに、もしビザ申請が降りなかったらどうしよう?」
「また追加で書類を求められたら?」

そんな不安が次々と頭をよぎる。
思考の中で、次から次へと最悪のシナリオが生まれ、そのたびに心が押しつぶされそうになる。それを誰かに打ち明けられたら、少しは気持ちが楽になるだろうけれど、今の私には相談する相手がいない。ひたすら一人で、黙々とタスクをこなすだけ。淡々と進めていくうちに、ふと「ああ、人脈って大事なんだな」と思うようになった。こんなときこそ、周りに頼れる人がいることがどれほど心強いか、痛感している。

これまでの人生、
私はどこかで「一人でも何とかなる」と思ってきた。友人も家族もいるけれど、深く頼ることなく、自分の力だけで進めばいいと考えていた。でも今、こうして海外転職の準備で孤立無援の状態に置かれたとき、初めてその考えの浅さに気づかされる。「周りに人がいること」は、ただ単に気持ちの安定をもたらすだけでなく、人生そのものを支える大きな力だということを、ようやく悟り始めたのかもしれない。

孤独の中でひたすら手続きを進めるたびに、
じわじわと「今までの自分の生き方にツケが回ってきたのかもしれない」という思いが押し寄せる。これまで、自分の人生設計をしっかりと考えてこなかった結果が、今この不安や孤独に繋がっているように感じるのだ。若い頃には、明確な目標や計画を持たず、なんとなく過ごしてきた。それでも何とかなると思っていた。でも今、このタイミングでその考え方が根本から揺らいでいる。

ネガティブな思考にどんどん引き込まれていくのを感じる。
深みにはまるような感覚だ。書類を手にしても、その一つ一つが重く感じられ、進むたびに「このままで大丈夫なのだろうか」という疑念が募る。相談相手がいないという孤独感に加え、焦りと不安が日々積み重なっていく。

でも、こんな状況だからこそ、私は少しずつ気づいている。
人生は一人で進むものではないということ。頼れる人、支えてくれる人がいてこそ、困難も乗り越えられるということ。これまでそれを避けてきた自分が、今ようやくその大切さに気づかされているのだろう。人とのつながりを軽んじてきた自分が、この試練の中で初めて、その価値に目を開かされている。

今はまだ道の途中だけれど、
この経験が私にとって何か意味のあるものであると信じたい。そして、もう一度、自分の生き方を見つめ直す時期が来たのかもしれない。たとえ今はネガティブな感情の中にあっても、そこから抜け出す方法を探しながら、少しずつ前に進んでいこうと思う。


不確実な日々に振れる心

だけど不思議なものだ。
あれほど焦りと不安に押しつぶされそうだったのに、そうした感情も長く続かないらしい。これは私だけかもしれないが、考えの幅が極端に振れ始めて、いつの間にか「もうどうにでもなれ」という投げやりな気分に近づいている。まるで心の防衛本能が働くかのように、あれだけ押し寄せていた不安の波が、突然引き潮のように消えていった。

ビザ申請が遅々として進まない現状に、
最初は胸が締めつけられる思いだった。「いつになったら渡航できるんだろう?」「入社日なんてとっくに過ぎているのに、このままだと内定が取り消されるかもしれない」と、そんな考えばかりが頭を巡っていた。けれど、ある時ふと思った。「取り消されたら、また一から仕事を探せばいいじゃないか」。その瞬間、心が少し軽くなったような気がした。

なぜだろう。
あれほどのプレッシャーに押しつぶされていたはずなのに、逆に開き直ってしまえば、そんなに重く感じなくなるのだ。「いっそ内定が取り消されれば、もう悩むこともないかもしれない」とすら思う自分がいる。もちろん、最初から望んでいたわけではないけれど、ここまで長引くと、どうしようもない事態に対して自然と「もういいや」という気持ちが生まれてくるのかもしれない。

それに、もし本当に内定がなくなったら?
その時は、その時で新しい道を探せばいい。もう一度ゼロから仕事を見つけるのも悪くないかもしれない。それを思うと、失敗への恐怖が少し薄れてきた。こういう投げやりな感覚は、一見ネガティブに思えるかもしれないけれど、実は自分を守るための前向きな反応なのかもしれない。「ここまでやったんだから、あとはどうにでもなれ」と思うと、心が少し楽になる。

とはいえ、待つことそのものはやはりストレスだ。
何もできずにただじっとビザが下りるのを待つだけの状態は、心のどこかに常に不安を残している。目に見える進展がないと、日々の焦りが消えないのは仕方のないことだ。でも、今できることはただひとつ。無事にビザが通ることを祈るしかないのだ。

この無力感は決して心地よいものではないけれど、
時には運命に身を委ねるしかない瞬間があるのかもしれない。すべてが自分の思い通りになるわけではないし、人生においてコントロールできないことだってたくさんある。そう考えたとき、私にできるのはただ待つこと。そして、その間に気持ちが少しでも軽くなることを、祈りながら願うだけだ。


いいなと思ったら応援しよう!