女医の愛欲日記(1973年)

 本当かどうかわからないですけど、Xで蓮實重彦が戦後の百本の内の一つに選んでいると言っている人がいたので観なければ、と劇場へ。個人的には大収穫でした。だってこれ、ゼロ年代のエロゲみたいじゃないですか。あの注射器は何。人類最後のヤギって何。そして、それらはその部分だけで浮いてるのは何。
 もしゼロ年代の有象無象のエロゲの中から適当に一本選んで40代以上の出演者で実写化すると、この作品になると思います。面白いのになにかつまらない、つまらないけどなにか面白いという、エロゲの物語のあの時間感覚の中にある独特の空虚さ。その時には小さくても、年々心の中で強さが増していくのはそういう独特さが心に残した(外の世界には失われている)それそのものではなく、空気感なのです。その点、表層の面白いだのつまらないだのが瞬間的に第一義に置かれるこの時代というのは、結局のところ本当の意味での語り継ぎではなく、心からすぐに消滅してしまいます。語るためには、なにか消えずに残っていなければいけないのです。どこに、って心の中に。

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