The Wonderland? #10 [Backroomsリスペクト]
Room 10 "Exit?"
「ここまで来てしまいましたか、まあ…褒めてあげましょう」
そうやって、腹立たしいまでに社交辞令な褒め言葉を投げてきたのは、モニカ…いや、モニカによく似た人物だった。専ら、彼女が「人物」である確証すらないが…
どうやら、ここは俺たちみたいに、不思議の国に迷い込んだ少女がたどり着く世界を凝縮したような空間のようだ。
「まあ、世界中の子どもたちが知ってるようなおとぎ話とは程遠い世界ですけどね…」
そう言いながら、何か含みでもあるかのように、怪しく微笑む女性は、椅子に腰掛けるよう促す。
「大丈夫ですよ、まだ貴方達を食べたりはしないですから」と、何かを企むことは包み隠さないが、危害は加えないことを示してくれた。
「で、俺たちはこれから何をすればいいんだ?」
「まぁまぁ、とりあえずお茶でも飲みませんか?それともシャンパンの方がよろしくて?」
「そんな悠長なことはしてられないんだ!この世界を一刻も早く脱出する、それが望みなんだ!」
「…ふ〜ん、この世界も満更でもないんですけどねぇ…そんなに出たい?」
そう言うと、この空間の空気が一気に凍りついた。目の前の「人物」の目つきの鋭さも、それだけで命を落とされそうなほど強いものに変化した。
「ならば、ゲームですね。当然、受けるんですよね?」
「ど、どうするんじゃ?お前〜?」
「…受けよう」
「カンナ、お前に託したい」
「では、ゲームの説明です。
あなた達に挑戦していただくのは、クジ引きです。2枚のトランプのどちらかが当たりですよ。Betしていただくのは、あなたの命以外全てです。
ハズレだった場合も、チャンスを1回だけ与えます。その際は、他のものもBetしていただきますので、ご了承くださいね。あ、そうそう。プレーヤーはどちらか1人だけですよ?」
あまりにもシンプルなゲームだが、50:50で生きるか死ぬかの極地に向かわなければならない…
これまでの経験からして、俺よりカンナにこのゲームを任せた方がいいのではないか?何となく直感がそう決心させるが…
「カンナ…お前にゲームを託したいんだが」
「えぇ!?ワシに押し付けると申すか!?」
「わからないんだが、お前じゃないと、このゲーム負ける気がするんだ」
「何でワシなんじゃ!?こんな責任重大なこと、引き受けられるか!」
「細かいことは考えなくていい!いつものようにゲームをしてくれ!」
そう言って、カンナをプレーヤーに選出した。自分の命以外の全てをBetして、カードが2枚、卓上に伏せて置かれた。
あまりにも単純なゲームの故、必勝という概念がなく、心理的負担は尋常ではない。身体への影響も、今が一番大きいことは明白だった。それでも、俺はカンナにこの勝負を託した、むしろ、カンナでなければ勝算はないかもしれない、そう直感が働いたのだ。
「さぁ、どちらを選ぶんですか?早くしないと勝負放棄とみなして、負けにしますよ?」
「ぎゃあぁぁぁ!ちょちょちょっと待ってくれ!!」
カンナが一呼吸置き、決心を固めた…
「ええい!どうにでもなれ!!」
めくったカードの結果を確認する。
だが…
「な…何も書いてない?」
「そ…そんなぁ…」
ふふふ…
残念ですが…
あなたの勝ちですね。
「へ?」
「か…勝った、のか…」
喜びに満たされた心とは裏腹に、全てを終えた脱力感から、あらゆるエネルギーが抜けて、立つことすらできないでいた。
「あなた達の願いが潔白なものなのか、確かめたかったんですよね。なんたって、現実世界で邪念を持った人が、私たちをこうやって貶めてしまったんですから。私たちはただ、平穏に暮らしたかっただけなのに、定められたルールを搔い潜ろうとしてしまう愚か者たちに翻弄されてしまうことが、許せなかったんですよね。」
「どういうことなんだ?」
「まぁ、分からなくていいことですよ、あなた達は。ゲームを純粋に楽しんでくれたんですから、それだけで十分です。さぁ、そこの扉を開けて、元の世界に帰りなさい」
そういうと、モニカはあっさりと消えてしまった。
何はともあれ、俺たちは現実世界に変えることが出来る。それが何よりの願いだったんだ…
こうして、俺たちはまた日常を取り戻した。
不思議なことに、あの世界にいた時の記憶は、現実世界に戻った時にはほとんど失われていた。朝起きた時には、見ていた夢の記憶がほとんど無くなっている、あの現象と同じだった。
「なんじゃ!辛気臭い顔して!さっさと仕事を終わらせて、ワシと遊ぶのじゃ!」
いつも通りのカンナがそこにいる、それでいいんだ。
この島で望むことなんて、そんなにないもんな。俺もみんなも、幸せすぎるぐらい、楽しませてもらってるんだから…
「そういえば、モニカにくじ引き勝負かけられた時、なんでワシに任せたんじゃ?」
「あぁ…カンナのゲームプレーって、余計なこと考えずに突っ走ってるから、邪念捨ててるやつの方が勝てるんじゃないか?って思ってな」
「な!?ワシを阿呆みたいに言うな!!無礼じゃぞ!!」
THE END…?
Room丁:Bet
SURVIVAL DIFFICULTY : Class 5 "Unsafe"
ディーラーとの勝負に挑むRoomです。勝利すればWonderlandから脱出できますが、敗北した場合は、より危険な勝負を持ちかけられます。勝負をしない、という選択肢もあります。
Entrance
Room9のカーテンレールをくぐるとRoom丁に移動します
Exit
ディーラーとの勝負に勝つと現実世界に帰還します
ディーラーとの勝負に負けるとRoom半に変化します
ディーラーを説得し勝負を避けることができればRoom Qに移動します
NoclipするとRoom999999999999999999999999999999…に移動します