山月記〜人の心を奪われても〜
私は山月記というお話が大好きだ
確かこの話に出会ったのは高校生の頃
教科書に載っていた話で、同級生が余裕で居眠りをしている中、自分1人だけ定年後再雇用となったおじいちゃん先生の解説などを聞いて楽しんでいた。
高校時代に楽しい・面白いと感じたこのお話を、もう何年も毎年必ず読んでいる。
そして年を追うごとに読んでは泣いている。
この物語の丁寧な解説はネットにごろごろ転がっているのでそちらを参考にして欲しい。
私自身の調べたところでは、中島敦本人がこの物語についての正確な解釈などは残していない。
(残してたらごめんなさい)
とりあえず私なりの言葉でこのお話のあらすじを説明すると・・・
場所は中国
登場人物は、李徴(りちょう)と哀惨(えんさん)の2人
李徴は秀才だけど傲慢なタイプで人を見下しちゃう感じの人
哀惨は李徴の旧友
2人ともお役人・・・なんだけど、李徴はプライドが許さなくて役人をやめて詩人(小説家?文筆家?)を目指すけど、食っていけないから地方の役人に成り下がりカムバック
(以降、名前をひらがなで書くね。変換面倒)
簡単に言うとりちょうは自分がNo.1ってタイプだから、上司にあれこれ言われて使われるのにプライドが許さない。
出張先で発狂して森に飛び込んで行って、それ以来見当たらず・・・ってなってしまう。
そんなことがあった翌年、えんさんが出張で同じ地域に行く。
突然森から虎が現れて襲われるんだけど、虎はえんさんの顔を見てすぐに森に帰っていく。
森から「あぶないあぶない」って独り言みたいなのが聞こえて、恐る恐る覗いてみると、さっき襲ってきた虎が言っていた。
声を聞いたえんさんは『りちょう?』と気付く。
えんさんはりちょうに話しかけるけど、プライド高いりちょうは虎の自分を見られないために茂みに隠れて声のみの出演
なんで虎になったかわからないと言っているりちょう
話を聞くえんさん
そして徐々に人の感情がなくなっていってしまい、本当に虎になってしまいそうだと告白。
そして、そんなりちょう(虎)はえんさんにあるお願いを託す。
一つ目は、いま即興で人の感情があるうちに詩を作るので書き記してくれということ。
そしてもう一つは、突然残してしまった妻と子供に自分は死んだと伝えて欲しい。そして生活に困らないように、ひとつよろしく頼むということ。
この順番が重要
家族のことより自分の詩を優先したりちょう
りちょうはこのお願いが終わった後自虐的に、
本来は家族のことをまず伝えるはずなのに、自分の歌のことを先にお願いしてしまった。そんなどうしようもないやつだったから、虎に変えられてしまったのかな?笑と。
ちなみに詩を書きとるべく聞いていたえんさんは
「良い詩なんだけど、一流じゃないね。なんか、あの、足りてねぇな」っていう辛辣なコメントをその場で伝えている。
旧友ってそんなもんだよね。すごく突然、心に大砲打ってきちゃうっていうかさ。
そんなお話をしているうちにりちょうは、こんなどうしようもないやつだもんな・・・
そうだよな・・・
ダメだよな俺・・・
と、自分が虎になってしまった理由に辿り着き、涙を流す。
そして物語としてはクライマックス。
2人の話が終わった後、りちょうは「帰りはここを通らないでね」とえんさんにお願いをして茂みの中に帰っていく。
茂みからは悲泣が聞こえる。
えんさんも泣きながらその場を去っていく。
えんさんが少し離れた丘まで来て振り返ると、茂みから虎が現れて月に吠える虎が見えた。
何回か吠えた後ふたたび茂みに帰った虎を、このあと見たものは誰もいない。
と言うのがあらすじかな。
なんて言うかね、泣けちゃうんです。
人には少なからずプライドや自尊心があると思う。
流石にりちょうほど強いものでなかったとしてもね。
そして自己中心的な考えを持ってしまうこともあるでしょ?
えんさんにお願いした順番、これもしっかり泣けちゃうんですよね。
本人にとって最も大事な二つ。
自分の夢というプライドと、家族。
本来は家族のこと優先なのにっていうのもよくわかる。
自分もそうだと思うから。
でもそれでも自分の詩を優先してしまい、そしてそれをその瞬間にしっかり後悔していて、それを後悔した瞬間に自分の愚かさのために虎になってしまったんだと気付く。
こんな人でもしっかり人の心があるんだなと思ったら泣けちゃうんですよね。
小説なので、当然そこには絵などはないんですが、最後の虎が茂みに帰っていくところなんかは、はっきりと情景が思い浮かんでしまいます。
肩を落とし涙が頬を伝い、この世界と人間の心と決別し虎として生きていくんだとある種の覚悟を持って茂みに入っていったんだなと。
悔しくて辛くて怖くてたまんないんだろうなと思うんですよね。
私はこの話が映画やお芝居として世に残って欲しいなと思っています。
どなたか作ってくれないかな。。。