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【第一話 題名と同じ】父親がサキュバスになったのでかかりつけの神社に相談したおれは退魔の巫女にされてしまった Ver1.2.2

 父親がサキュバスになったのでかかりつけの神社に相談したおれは退魔の巫女にされてしまった。

 胸が重いのでさらしを巻く。

「いきなりサキュバス退治は大変だから、まずは軽い悪霊の調伏から始めてみましょう」

 と神主から言われたので試してみると、やはり退魔の巫女という名前が悪かったのか、負けそうになってしまった。

 正直泣ける。30年生きてきて行き着く先がハードめの薄い本みたいな末路とは。

 儚きかな人生とは…………うつろな目で辞世の句を詠みそうになった時、ピンク色のオーラに包まれた五指の爪が闇を引き裂いた。

 振り向くと、メガネをかけた巻き毛のサキュバスが立っていた。

「親父!!」

 残っていた悪霊もまとめて退治してしまうと、親父はおれに駆け寄って言った。

「アキオ、はやく帰るぞ。……立てるか?」

 親父のココロはまだ人間だった。

 夜の静寂の中、腰が抜けたおれは親父のふとももに泣きすがった。甘い花の匂いがした。

 なんとなくいい話になったので改めてかかりつけの神社に行くと、そこにはもう神社はなかった。

 地元ではどうやらたぬきの仕業だったということになり、おれは元の姿に戻れなくなってしまった。

「まあいいじゃないか、直毛似合ってるぞ」

「別に見せるために伸ばしてるわけじゃねーよ」

 霊力を溜めるロングヘアーは手入れが大変だ。

 後日、すこし準備をして父親の職場へと向かう。

 馴染んできた巫女装束と違い、初めて買った下着やブラウスはどこかそわそわとして落ち着かない。

 夕陽が沈む頃、ひなびた歓楽街の一角にあるサキュバス・リフレ「純潔」に入店する。

「ああ、フジさんの息子さんね」

 店主に一発でバレたが、幸か不幸か父親は【仕事中】だったため別のキャストを指名した。

 薄暗い廊下を真っすぐ歩く。

「まま? ままーー」

「あううう……」

 防音室の扉の奥から悲喜こもごものわめき声やうめき声が漏れ聞こえる。

 この店は不安だ。

【続く】

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