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【七峰】逆噴射小説大賞2023ライナーノーツ【NO NAME】
いらっしゃい。
おれはおれ以外の何者でもない。だから書く。
「アダムの肋骨となりて、君を知る」
今回投稿したおれの800字パルプは二次選考を突破し、選考員からのコメントをもらった。
コメントの内容よりもコメントをもらったことそのものに顔がニヤけるほど嬉しがる自分のだらしなさを理性で恥じつつ、今回の言い訳を組み立てていく。
昨年の反省と今作の傾向
今年は募集要項が発表されるすこし前から準備していた。
何しろ去年は締切前日のアドレナリンブーストで無理をして書き上げたものだった。一度その味を知ってしまうと、同じ手は使えないとゆうことが完全に証明されている。実際それが今年は二本目を書こうとするモチベーションにすらつながらなかった。
だが9月当時のおれはTwitterの見すぎでスマホを通したこの社会にとてもムカムカしており、端的に言えば小説という名の説教を書きかけていて…………募集要項の
禁止事項など:現実世界の差別や誹謗中傷などを助長するものや、他者の権利を侵害するもの、その他常識的に考えてアウトなものは、いずれも選考対象となりません。エンタテイメントの範疇に収まっている必要があります。noteプラットフォーム自体の禁止事項も参照してください。
を読んで、なんとか軌道修正ができたというところだった。
そうした改稿の過程で当初のキャラクター設定や下書きはほとんど没にしているが、ジャンルはTSFで行くというのは既定路線であった。
前作「原始人ジロ」で消化不良だったし、800字以内でTSFを書くそれ自体の難しさへの挑戦に燃えていた。
しかしながら今回書き終えてようやく理解した。800字パルプとTSFは水と油だ……。
よほど読ませる力がなければ「実は女」的な叙述トリックと化して意図せず読者の脳を混乱させてしまうし、性転換の過程をじっくりと書き上げるシークェンスものは文字数制限と食い合わせが悪く、展開上の停滞を生む。
それでなくとも本作は「世界はいずれ女性と女性化した元男性が支配する」という尖った思想のもと構成されている。
しかも困ったことにというべきか、別にそれは主人公にとって打破すべき壁などではなく、その支配をなんとなく受け入れてしまっている。もともと作者自身が人類二次元美少女化計画を「そういう世界になんねえかなあ」と少し希望的に考えているせいだ。
そうして主人公が敵対者に抵抗するアクションを後ろに加えられないまま、主人公が負けた状態で話を終えた。これではクリフハンガーにはならなかったとみている。
巨大なシステムのなかで、口では文句を言うが身体は正直に従っている人物というのがおれの中に存在する。
それは世直しというものがたいていはドラマほどうまいこと行かない現実に諦念していたり、他人に責任をしょってもらうことに慣れきっているおれ自身の情けなさだったりもする。
没稿では主人公がしたくもない殺しの依頼を遂行しながら愚痴っていた。それはブルシット・ジョブを任せられたデスクワーカーとかでも全然置き換え可能そうな人物像で、自分からこうなりたい、こうしたいという陽的な動機や欲求を持った人物像がおれの中から全然浮かび上がらないのだった。
おれは今回のピックアップコメントで、原始サルといい義妹パパといいパルプ衝動にかまけた出落ちだけで終わらないテクニックの修養が必要だなというふうに理解した。
自分が面白いだけな小粒の内輪ネタをどこか大きいところから引き抜いてもらえるとかゆうありえない妄想話は切り捨てる時期が来たのだ。
さもなければ……弾丸の軌道を完全に読まれ、来年は選考にも載らず荒野で朽ち果てるだろう。END OF MEXICO……。
隠し味程度の元ネタ
ミシガン州を作品の舞台にしたのは、おれの家族が居間で「スゴ腕どうぶつドクター」を毎日のように見ていたことにもよるが、それは敵役の二人称が「息子よ」だと明らかに日本人のセリフじゃなさそうだったからだ。
番組を見ていると病院と農場を車で行ったり来たりしていてザ・アメリカの田舎町という印象がある。いちおうフォトギャラリーもそれっぽいものを選んだ……はずだ。もう検索ワードを忘れたが。
それと、エキナセアというハーブの名も今回調べて初めて知った品種だ。いちおうミシガン州で自生しているという。
また、本作の裏設定として「世界同時多発連続女性失踪事件の顛末は、地球上から一人残らず女性が消失したことで幕を下ろした」というエピソードゼロが存在する。これは遍く男性を二次元美少女にアップデートする(させる)ための設定である。
今年の9月、『ウルトラマンブレーザー』第9話「オトノホシ」を見てウルトラQとニュージェネウルトラマンの交錯を堪能したおれは「新作パルプもウルトラQのようでなくてはならん!」と息巻いていた。
まあ、おれには「ウルトラQらしさ」の正しい解釈がわからず、ただ小事が大事を生む、誰も快刀乱麻を断つようには問題を解決できない異常事態……という程度の認識でいる。
そのようにして作品を練りながら手帳のメモ書きを見ていて、何気なく書き残していたTHE PINBALLS「アダムの肋骨」の名が目に留まり、本作の題名に採用した。
そもそもTSFクラスタ的に「アダムの肋骨からイヴが生まれた」という聖書の記述にはそそられるものがあり(「つまりイヴは元アダムなんだろ? ワオ!」)、男の身からイヴのようになって君=女性の何たるかを知る、という意味を持たせた。
あと、前年から再三引き合いに出している「顔が逆三角形で、瞳の大きい種族」の件なんだが(本作でも主人公から二次元美少女化した父親に対する罵倒語に用いている)……これが元ネタだというソースとなるページと検索ワードが思い出せず困った。
たしか洋物RPG(TRPGかと思うが)の地域と種族の一種で、要するにセーラームーン以来の勘違い日本みたいな世界観が独立国家的に存在しているとかいう……話だったと……思うのだが。こういう時にちゃんとメモをとっておかないとどうしようもない。
おれの記憶が正しければTRPGでの美少女ものや性転換ものが何かないかネットサーフしていた時期……コロナ禍以前……に見た、相当古いホームページだったので現存するかどうかも今やあやしい。
それは「TORG」か? とも思ったが「瞳」「逆三角(形)」で該当するはずの引っかかりもなく困った。情報提供もとむ。
#逆噴射小説大賞
#逆噴射小説大賞2023
#逆噴射小説大賞ライナーノーツ
事前に考えた禁則事項等について
ここまで隅々と読むおまえはパルプスリンガーの中でもそうとう注意深いのだろう。
下記に記すのはおれが執筆にのぞむうえで「800字パルプだったらこうした方がいい」的に連想したものだが、これはさだまさしの関白宣言よりもっと法的拘束力がないと思え。
そんなことよりもっと重要なことを今から言う。
誰も信じるな。おれも信じるな。
酒場のモブから聞いた話なんてわすれてしまえ。サルーンを出て、銃を抜き、MEXICOにおまえの道を切り拓け。
クジラについて考える話はダメ。
作者と同一化した語り部の独白劇はエッセイと区別がつかない。
日常系はダメ。
特定の差別的表現はダメ。
主人公のキャラクターを起てる。
AI生成プロンプトのような箇条書きはダメ。シナリオの要請にキャラを押し込むのはダメ。
準備だけで終わってはいけない。
奇抜な登場シーンだけで終わってはいけない。
登場人物にアクションさせる。
誰かがアクションしたら、別の人物もそれを受けてアクションする。800字で終わらなくていい。
パルプ=殺伐サイバーパンクではない。
「本に」ではなく、「読者の感情に」よりそう
(終)