【七峰】おまえはポケモンリゾートで真のポケモンコンシェルジュになれ
いらっしゃい。
おれはおれ以外の何者でもない。だから書く。
おれはポケモンを愛し、ポケモンを憎み、いまは頭の中に一匹のブラッキーを育てている……そういう男だ。
ゆえにネットで何か見たようなネガティブキャンペーンに加わるつもりはない。
おまえがポケモンを愛し、ポケモンを憎み、ネットフリックスに入会しているのであれば、ポケモンコンシェルジュは余暇をなぐさめる選択肢のひとつだ。
この物語は、ハルというプランナー上がり(推定)の女性が長年の会社勤めで凝り固まったこだわりや格式から離れ、生来の笑顔と想像力と隣人に手を差し伸べる優しさを目覚めさせてゆく……そうゆう話だ。
おれはポケモンのお仕事ドラマというコンセプトを聞いた段階で「主人公が言えないズバズバした意見をこの世の真理のように語っては反論を待たずに去っていく同僚とか出てきたらどうしよう」と不安視していたが、同僚のアリサはそうゆうやつらよりずっと周りの意見を尊重するのでひと安心した。
「ポケモンリゾートはポケモンファースト」という言葉が示す通り、もう一方の主人公はストップモーションで生き生きと動くポケモン達である。
ときにふわふわ、ときにツルテカとタイプ別に質感を変えている丁寧さもさることながら、幼い頃教育テレビでクレイアニメや人形劇を見て育ったおれとしては、このミニチュアめいた世界観そのものがいとおしく思う。
それでいて、ポケモンを放し飼いにさせると当然起こりうる騒動に対し、人間からケンカを仲裁したり、物を壊しすぎないように遊び場を指示したりといった細やかなもてなしも人情的で好感が持てた。
惜しむらくは全4話という話数の短さだが、これはストップモーションアニメの宿命だからしかたがない。
ややもすれば「泣きポイント」があからさますぎ、特に最終話はハルの知恵袋とピカチュウの本心がすれ違い遠回りな感じもするが…………作品の根底にあるのは「◯◯らしくではなく、自分らしく生きて楽しく暮らす」というテーマだ。
おれたちは望むと望まないとにかかわらず、すでに「何者か」に類する存在だ。
だが、自分に貼られたレッテルに向き合うことはこれでなかなか難しいものだ。
ハルはポケモンリゾートへ行き、そこで何も気兼ねなく暮らすポケモンの、あえて言えばあほな姿を見て心の中の縛りを解いた。
そして自分の中のあほなところを改めて見つめ直すことで、ポケモンと人間の狭間に立つポケモンコンシェルジュとしての一歩を踏み出したのだ。
ポケモンと人間の相補関係を理解するのは優れたポケモンマニアでも上級的で難しいとおれは思う。特に昨今はそれを現実の動植物と人類の関係に置き換えようとしており、多様な世界の複雑さにゲームの表現力が耐え切れなくなっている。
「野生からリゾートに住み着いてしまうポケモン」が、そうだ。現実ではむしろ人慣れした動物を野に返すために血のにじむような努力が必要だ。
しかしながらポケモンは、そのすべてが、この世にたったひとりでも、人間と友達になりうる存在だ。
「ポケモンコンシェルジュ」は、経年で色褪せかけていたポケモンと人間どうしの主従でも捕食・被捕食でもない相補の関係を思い出させてくれる作品だった。
シーズン2を心待ちに筆を置く。
(終)
(追記)ただ隣りに居るだけで癒やされる、バトルに依らないポケモンと人間の相補関係については、こちらの動画も外せない。