すぐ終わるクソ小説「臨界点」
「もう手遅れだ! このエネルギープラントはあと30分もせず臨界点を超えて崩壊する!! その時俺の復讐はようやく達成される!!」
揺れる足場、遠くから聞こえる崩落音、こいつのいうことははったりじゃない。一秒でも早く、この施設の暴走した制御システムを復旧させないと数十キロ圏内は焼け野原だ。だが、そんなことよりも聞かなければならないことがある。
「どうして! どうして優しかったお前がこんなバカなことを!! 答えろ!!」
高笑いをやめ、あいつはこっちを見た。
「ふん、足止めついでに長話でもしてやろう。本当は一秒でも早く先に進みたいだろうに… 相変わらず律儀な男だ」
あいつは目を細めて話し出した。
「もう十年も前の話だ… 俺の妹はカップ焼きそばの湯切りの事故で死亡した… ひどい事故だった… そのショックによりもともと病弱だった母は死に… 父親は失踪した… ぜんぶあの事故のせいだ… 俺はその時からこの復讐を計画していたんだ… ずっとお前たちを… だましていたんだ!!」
あいつはこぶしを震わせながらそういった。
「話が長くなったな… もう…計画は止められない…」
いやちょっとまって、話めっちゃ短いし、一番気になるところ端折りすぎじゃない? 何焼きそばって?
「行こう! 今はこいつより臨界を止めないと」
「時間が惜しい、急ぐぞ!」
いや、仲間のみんなもちょっとまって。今の話気にならないの? 焼きそばならぎりぎりわかるよ? 食あたり? か何か? でも湯切りってなに?! やだめっちゃ気になる。ちょっとまてよ。ゆっくりこいつの話聞こうよ! なんかヒントになるかもしれないじゃん!
「もう… お前たちに話すことはない… これでようやく… 妹のところへ…」
まてーい! そこ! そこ聞きたいの! そこ気になってまじめに次のことしようってならないの! おまえいっつもそうじゃん! 言いたいこと言って勝手に満足するの! そういうことだよ?! っていうか仲間もみんないっちゃうじゃん! え? ほんと? 今の話放置できるの?
「…あなたがそいつのことを許せないのはわかるけど… 行こう… 早くしないとこの町が…」
許せるとか許せないじゃなくてさ、みんな気にならないの? こんな話放置してどうやって明日からカップ焼きそば食べるの? ねえちょっと、それとも俺がおかしいん? 空気読めない人みたいになってる? みんなあの説明で納得してるの?
遠くで響く轟音、まずいなほんとに時間がない。死ぬほど未練がましいがさすがに町なくなったらカップ焼きそばどころじゃない。え~~~~でも死ぬまでこんなもやもやした気持ちで焼きそば食べるの~~~~~~?!? 無理じゃね?
「あいつがいるからあなた動けないなら… 私が撃つわ…」
銃はやめろーーーーーーーーーーーーーーー!!!! 何さらっと銃だしてんの?! このままさらっと臨界止めて話を聞く目がなくなるだるぉ~~~?!
「わかった…行こう…」
くそーーーーーーーーーーーーーーーーー!! めっちゃ気になる! 気になるけどしょーがねー! いくしかねー! あああああああああああああああああああああもやもやするぅううううううううううううううう!!
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