1分で読めるクソ小説「雨上がり」

「いやじゃあ~~いやじゃああ~~~ 人間の子など孕みとうない~~~!!」

 古びた社に木霊するテンプレケモミミロリババァの悲痛な叫び。それを組み敷いているのは普段は人畜無害そうな口の軽い青年だがなぜか濡れ場になると饒舌になる90年代末期のエロゲの主人公のような青年。社の外は悲鳴を打ち消すような夏の終わりの激しい夕立。

「うるさい! 神様だか何だか知らないがおとなしくしろ!!」

「いやじゃ~~ 人の子など~~! こんな社会福祉のなってない国で!!」

「社会情勢に訴えるな! いいから脱げ!!」

「いやじゃ~~~ 人の子は養育費がかかるからいやじゃ~~~ そんなの同時に何人も育てられないのじゃ~~!!」

「は?」

 乱暴に脱がした服の下には小さな乳首が…ひとつ…ふたつ…みっつ…

「…え? 複乳?」

「そうじゃが? 苦手か?」

「いや? むしろ興奮する」

「おぬし…変わってるな…」

「お得感がある」

「(聞かなければよかった…) おほん、わしゃ多産を司る神の化身、とうぜん乳首は複数あるし、一度に5~6人は余裕で生むぞ?」

「」

「人間じゃなきゃ知らぬ存ぜぬで通せるし、眷属がおる間は育児もできたがの、今ひとりでそんな人数育てるの無理じゃろ?」

「」

「昔は多産というだけで喜ばれたがの。今の世の中じゃそれだけで大変じゃろう? 人と子をなしたこともなんどかあったがの、わんさかわんさかふえよって、わしも一人でのんびり暮らすのに100年はかかったわ」

「」

 しばらくの沈黙の後、青年が口を開いた。

「…ロリババァなんだから、もう少し俗世に疎くあって欲しかった」

「どうして長く生きてるわしらが、俗世を深く認識することを放棄すると思ったんじゃ? 一応、ロリババァとやらの市場価値もそれなりに理解しておる」

「」

「…聞いておくがお前さん稼ぎは?」

ゆっくりとズボンを上げて、男はにこやかに微笑むとこういった。

「…避妊具買ってきます」

ケモリロババァはにこりと微笑み返す。

「うむ、2度と戻ってくるな」

 社の外は先ほどまでの雨がウソのような美しい夕焼け。雨後の熱気を含んだ草のにおいが青年をすこしさわやかな気持ちにさせた。

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