#4 戦略的コンセプトABCと抽象化
「先生」のオンライン/リアル兼用のナレッジトランスファー型サロンを開設に向けた、新規ビジネス立ち上げのプロジェクトをサポートしている話のつづきです。
自社「先生」は「ZZ以外の実績の少なさ」と「数字的根拠」が出せないことが根本的な「弱み」である一方、CCの有資格者であるため、CCの知識はもちろん、ZZの実績、AAの実績が明確な差であることが、競合SWOTでわかりました。ここから、先生の競争優位を確立していきたいと思います。
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戦略的コンセプトABC
これは、ボクがまだ若い頃、30歳前後のときに読んだ「マーケティングゲーム/エリック シュルツ著」(今は絶版の模様)で書かれていたフレームワーク、考え方です。その時から、戦略立案をするときには常に意識しています。
A:Audience
B:Benefit
C:Compelling Reason Why
AudienceのBenefitを提示、Compelling Reason Whyを説明する。日本語にすると、
Audience(ターゲット)のBenefit(得られる便益)を提示、Compelling Reason Why(なぜ、自分/自社がそれを提供できるのか説得できる理由、根拠)を説明する。
です。これのストーリー、論理構成が成立しない戦略は、Audience(ターゲット)に共感してもらうことはできず、ましてや説得などできないという、フレームワーク、考え方です。
考えてみれば当たり前なのですが、この”C”を無視して説明する人や宣伝を多く見ます。「ダイエット効果があります!」と宣伝しているのに、おデブな社長が登場していたり、「不動産投資でFIREできました!」と宣伝しているのに、その家賃収入が3-40万円だったり。借入金返済したら20万程度しかのこらないじゃん!って内容です。
人を説得する、人に納得してもらうには、なぜB(便益)を提供できるか、というC(説得できる理由)が必要です。
今回の「先生」の場合は、
✔CCの有資格者(事実)
✔ZZの圧倒的な実績(数量)
があります。ZZをアピールするのであれば、このABCに当てはめれば、客観的にも、実績的にも、全く問題ないストーリー、論理展開でアピールすることができます。
しかし、今回は、先生はZZ以外の分野に進出したいために(仮にTT分野とします)、宣伝も兼ねてサロンを立ち上げようとしてます。TT分野では、先生のZZの実績をアピールしたところで、「ZZはすごいかもしれないけど、TTじゃ、なくね?」と言われるのが落ちです。ここをなんとかしないといけません。
(ちなみに、AudienceやBenefitについては、3C Customer分析で既に調査/分析済みです。それをベースに、メッセージやストーリー、方向性で、Compelling Reason Whyを付け足す、ためのアクティビティだとお考えください)
抽象化
具体と抽象のあの「抽象」です。これも戦略立案を行う際によく使う手法です。自分を棚にあげていうのは、大変おこがましいのですが、論理的思考能力がないと、なかなか難しい作業です。
「抽象化」と一言でいっても、いろいろな手法があり、自分の中でも体系立てできていないのですが、主には二つの方法を用いているのかな?と思います。
1.具体事項→抽象化
2.抽象化←具体事項
1.具体事項→抽象化
これはよく行われている方法です。”つまり”で具体事項を要約して表現するアプローチです。複数の具体事項からその共通項を抽出、その集合的共通性を別の言葉で表現します。
「トマト、りんご、パプリカ」であれば、「つまり、赤い野菜/果物」あるいは「つまり、健康にいい食物」とかですね。
「先生」の例でいえば、「ZZに多くの実績がある」ので、「つまり、ZZの専門家」という感じです。ここで「つまり、TTの専門家」とは言えませんね。論理矛盾を引き起こしています。
この後、レトリックでなく、論理矛盾を起こさずに、「先生をTTの専門家」ぽく見せますのでお楽しみに!
2.抽象化←具体事項
端的に書く表現が難しいので、このように書いたのですが、要は、「なぜ、具体事項ができるか」の理由を「抽象化←」で表しています。具体事項からスタートして、それを実現できる理由を探すので、矢印を”←”としています。さきほどのCompelling Reason Whyに似てますね。
ここでは、具体事項を実現できる理由のエッセンスを探っていきます。例えば「外人と英語で話せる」という具体事項の理由を探ると、「英会話ができる←」「最低限の語彙力、文法の知識、ヒヤリング能力、スピーキング能力がある←」という、本質的な理由が理解できます。
これを「先生」に対しても、実施しました。
先生が多くの「ZZの実績」を残せたのは、「ZZの知識があった←」からです。その「ZZの知識」は、当然のことながら、一朝一夕で身につけられる技術的はなく、「基礎→応用→個性」とステップアップして、身につけられた技法になります。差別化できる「先生」の独自資産になります。
ところで、「ZZの実績」は、「基礎→応用→個性」の「→個性」部分の結果、競合と差別化でき、他を圧倒する量を販売したことを考えられます。当然ですが、「先生」には「基礎」も「応用」のスキルがあるわけで、「TT」にだって応用ができそうです。
言葉あそびではなく、「TT」も「基礎」知識をベースとした「応用」だからです。
"具体事項→抽象化" + "抽象化←具体事項"
さて、抽象化の方法を理解していただいたところで、そろそろ、戦略家であるボクが、どのように「先生」の「ZZの実績」を「TTを実現できる」Compelling Reason Whyにしたかの種明かしです。
ここで言語化することで、ボク自身、この後に遭遇するであろう事柄で応用できたらと考えています。
1.具体事項→抽象化
まず、最終物「ZZ」と「TT」の抽出した共通項を抜き出します。「先生」が扱えるものなので、ジャンルは同じです。なので、”ジャンルが同じ”、そんな一般レベルの抽象度ではダメです。より深い、専門的、本質的、あるいはある特定分野での共通項を見つけ出します。
具体的な先生のビジネスを明確に書かず、ずっと抽象度の高い表現で書いているのを更に抽象度を上げて書かないと行けないのは恐縮なのですが、この作業で「UU」という分野において、「先生」の「ZZの本質的な知識」が活かせないか?というヒラメキが降りてきました。
つまり、「最終物”ZZ”は”UU”の知識があるために実現できる」という中間的なカテゴリです。基礎→応用→”UU”→個性”ZZ”といった、応用と個性の間に位置する、そのプロセスを分解する中で出てきた、論理矛盾がないキーワード、カテゴリです。
2.抽象化→具体事項
専門家でないボクの思いつきが有効でない可能性は十分あります。早速、「ZZの知識って、TTをUUでやる場合には有効でないですか?」と、先生に聞いてみます。すると、十分に有効だとのこと。また、そこを専門にしている同業者はあまりいないということがわかりました。
つまり、基礎→応用→”UU”→個性”TT”も成り立つと言うわけです。
3."具体事項→抽象化" + "抽象化←具体事項"
こんなストーリー、論理展開を考えつきました。
✔ZZをXX(具体的な数字、圧倒的な数)販売することで、UU分野のパターン化を実現
✔このUU分野のパターン化は、TTにおいても応用可能
✔そこで、今回、ZZおよびTTを実現するためのスクールを開催することに
どうでしょうか?
「先生」はZZにおいて実績はありますが、TTにおいては”できるけれど、実績はほとんどない”状態でした。でも、「UU」というキーワードで、「ZZ」と「TT」を”同じ”と結びつけるとことで、「TT」においても、「先生」の「ZZ」の知識(≒「UU」の知識)が活かせる、と実績をアピールしながら、無理なくストーリー、論理展開ができたのではないか、と考えています。
この論理展開ができたのは、先生が「有資格者」であり、「TT」もカバーできる「知識」と「資格」を有していたからという理由もあります。普通はこの「有資格者」は、あえて「ZZ専門」とか「TT専門」とは言わないので、この点も、この論理展開ができた理由だと考えています。