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CatoがPalo Altoとのコンペ勝率が7割へ

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今回の記事は、2024年12月11日の Forbes に掲載された以下の記事を意訳したものになります。意訳後に記事に関する考察を述べています。

Palo Alto Stock May Rise As Rival Cato Says It Wins 70% Of Faceoffs
Palo Alto の株価が上昇する中、ライバル Cato はコンペの70%で勝利と発表


Palo Alto Networksの株価上昇

サイバーセキュリティを提供するパロアルトネットワークス(Palo Alto Networks)の株価は急上昇しており、2012年7月の新規株式公開(IPO)以来、年間平均28%の上昇率を記録し、2024年だけで35%上昇しています。

今週金曜日に同社の株式が分割された後も、株価は上昇を続けるのでしょうか? その答えは、Palo Alto がサイバーセキュリティ市場の新興成長セクターでライバル企業に勝てるかどうかにかかっている可能性があります。

Palo Alto の事業は好調で、2025年度第1四半期の業績が予想を上回り、通期の業績予想を引き上げ、2024年12月13日付けで2対1の株式分割を発表しました(Investopediaによる)

しかし、Palo Alto は、従業員のコンピュータやモバイルデバイスを監視することで企業ネットワークを保護する新しいテクノロジーである SASE(Secure Access Service Edge)のパイオニアである、非上場企業 Cato Networks などのライバルに直面しています。(Forbesのスタッフレポートによる)。

Catoの CEO Shlomo Kramer(シュロモ・クレイマー)氏との11月18日のインタビューによれば、Cato は Palo Alto に対する競合案件の70%で勝利していると述べています。一方で、Palo Alto の広報担当者は Cato の勝率の主張についてのコメント依頼を2回拒否しています。

Gartner(ガートナー)の「マジック・クアドラント」によると、Palo Alto と Cato は SASE 市場でリーダーとされています。

Palo Alto のポイントプロダクトをM&A(買収)する戦略は、顧客がそれらが一体化しておらずバラバラだと感じたため失敗だったと、ライバル企業である Wiz や Cato は主張しています。

それに対し、Palo Alto はサービスを統合しバンドルすることで販売を促進する「プラットフォーム化」戦略がこの問題を解決すると述べています(9月のForbes投稿による)。しかし、クレイマー氏は異なる見解を示しています。

アナリストによると、激しい競争にもかかわらず、SASEの成長がまだ初期段階にあるため、Palo Alto の株価は今後も上昇の可能性があると予測しています。

さらに、Cato が Palo Alto に対して高い勝率を誇っているにもかかわらず、SASE は両社ともに反映できる市場であるようです。

Palo Alto Networks の好調な業績と今後の見通し

11月20日、Palo Alto は期待を上回る業績を発表し、業績予想を引き上げました。

以下はそのハイライトです。

  • 2025年度第1四半期収益: 21億4,000万ドル(前年比13.8%増、Visible Alphaコンセンサス予測を2,000万ドル上回る)

  • 2025年度第1四半期利益: 3億5,070万ドル(前年比80%以上増、ウォール街の予測を7,860万ドル上回る)

  • 2025年度収益見通し: 91億4,500万ドル(91億2,000万~91億7,000万ドルの範囲の中間値、前回予測を2,000万ドル上回る)

  • 調整後1株当たり利益見通し: 6.325ドル(6.26~6.39ドルの範囲の中間値、前回予測の中間値を8セント上回る)

Palo Alto の CEO Nikesh Arora(ニケシュ・アローラ)氏は「プラットフォーム化がセキュリティを解決し、AIの成果を向上させるゲームチェンジャーであることを顧客は理解している」と投資家に述べています。(Investopediaによる)。

これに対し、Cato のクレイマー氏はこの主張には懐疑的です。
「ポートフォリオ企業をプラットフォーム企業に変えるのは、スクランブルエッグを元に戻すのと同じくらい難しい」と7月のリリース文書内で述べています。

クレイマー氏はさらに、「セキュリティはデータの問題でもある。プラットフォームは、高品質でコンテキスト(文脈)化されたデータをリアルタイムで保護に利用し、単一のデータレイクに保存することで初めて脅威の検出を可能にする。ポートフォリオ企業からそのような高品質なデータを得ることはできません。例え管理インターフェースが綺麗であっても」と付け加えました。

急成長するSASE市場の機会

ガートナーによると、SASE市場は、2027年までに年間平均30%成長し、250億ドル規模に達すると予測されている巨大な市場です。

SASE需要の高まりは、分散型チームがコンピューティングリソースへのリモートアクセスを得るために「単一ベンダーによる統一された技術プラットフォーム」を求めていることによると、CRNが報じたGartnerレポートは述べています。

2024年7月のガートナーの「シングルベンダーSASEマジック・クアドラント」では、Palo Alto が1位、Cato が2位にランク付けされています。

Palo Alto はビジョンと実行の両方で首位に立ちました。顧客はサービスが競合他社より高価であると回答していますが、同社の強みとして「統一されたプラットフォームを通じて提供される強力なセキュリティとネットワーキング機能」、優れた財務安定性、大規模な顧客基盤が挙げられました(CRNによる)。

一方で、2位の順位であるCatoは、強みと改善の機会の混在によるものです。ガートナーは、CatoがSASE業界のパイオニア者として果たしている役割や、市場を「引き続き形成し続ける」とされる計画されたイノベーションを評価しています。一方で、顧客はCatoの価格モデルに対する不満を表明し、SaaS制御やオンプレミス環境向けファイアウォールなどのセキュリティ機能を「限定的」と評価しました(CRNによる)。

Cato Networksの競争優位性に関する主張

Catoは、業績と見通しについては楽観的です。「2024年の年間経常収益は2億ドルに達し、2年前の倍になりました。また、顧客数は2,500社に達しました」とクレイマー氏は述べています。

Catoは、SASEがサイバーセキュリティの大部分を占めるようになると考えています。「5年から10年でSASEが大多数を置き換えるでしょう。我々にはカールスバーグ(Carlsberg)社のようなフォーチュン500企業の顧客がいます。同社は、260拠点で私たちの製品を使用し、4万人の従業員にSASEのメリットを享受しています」とクレイマー氏は述べました。

さらに、Catoは、セキュリティサービスを拡充し、12月10日に「Cato IoT/OTセキュリティ」を発表しました。このサービスは、企業がIoT(モノのインターネット)やOT(運用技術)デバイスを管理し保護するのを支援します(The Fast Modeによる)。

Catoは、Palo Alto と競合する際の勝率の高さを誇っています。「Palo Alto との概念実証(PoC)に至ると、70%の勝率を誇ります。その理由は、顧客がCatoを使うことで少ない投資で多くの成果を得られると即座に感じるからです。Cato は価値が出るまでの時間が短いのです」とクレイマー氏は述べました。

Palo Alto が SASEソリューションを擁護

Palo Alto は、Prisma SASEソリューションが顧客ニーズを効果的に満たしていると述べています。「顧客は、すべてのアプリ、ユーザー、デバイス、ネットワーク内のデータを保護するために、場所に関係なく一貫性のある包括的なセキュリティを提供する単一のベンダーを求めています」と12月4日の広報担当者のメールで述べられました。

「顧客は、最高水準のセキュリティ、優れたユーザー体験、簡素化された管理・運用を提供する包括的なSASEソリューションを求めています。我々のPrisma SD-WANは、トラブルチケットを最大99%削減します」とメールは述べています。

CatoがSASEの案件を勝ち取る方法

2023年、5,000人の従業員を抱える数十億ドル規模の製造企業がSASEプロバイダーを探しており、その結果、同社の従来のセキュリティプロバイダーである Palo Alto Networks社 ではなく、Cato Networks社 を選択しました。

Catoは、Palo Alto よりも迅速に企業のニーズを満たしたことが、この案件を勝ち取った理由になります。「Cato は最初から迅速に作業を開始し、わずか2日で4つの拠点を接続しました。一方で、Palo Alto は2つの拠点を接続するのに3週間以上かかり、ポートフォリオを連携させるためには何時間ものエンジニアリングが必要でした」と広報担当者は述べました。

別のレガシーベンダーの SASE から Cato に切り替えた企業は、Cato Networks社のコスト削減効果を称賛し、同社の新しいIoT/OTセキュリティサービスを評価しました。「企業はCato IoT/OTセキュリティによるコスト効率の向上の恩恵を受けることができると信じています」と、Oregon ToolのグローバルITマネージャー(インフラストラクチャおよびセキュリティ部門)であるクリス・サイモンズ氏はThe Fast Modeに語りました。

Palo Altoの株価は上昇し続けるか?

Palo Alto の株価はさらなる上昇が期待されています。36人のウォール街アナリストによる Palo Alto の平均目標株価は424.15ドルで、これは7.4%の上昇を示しています(TipRanksによる)。

Wedbushは、同社の「プラットフォーム化の取り組みが勢いを増しつつあり、クラウド浸透が依然として大きな推進力として機能しているため、より安定したプラットフォーム化案件のパイプラインを生み出している」として、かなりの成長機会を見込んでいるとInvestopediaは報じています。

Palo Alto は、顧客の支出増加から恩恵を受けるでしょう。「クラウド移行、ゼロトラストセキュリティへのシフト、サイバーセキュリティの自動化の増加という3つの主要市場での長期的な追い風により、同社は大きな利益を享受することができると考えています」とMorningstarのアナリスト、マリク・アーメド・カーン氏は述べました。

一方で、Catoは市場環境が整えば来年上場する可能性があると、クレイマー氏はFierce Networkに語っています。

以上が、Forbes の記事の意訳になります。
 
 

この記事に関する考察

Palo Alto Networks社のSASE "Prisma Access" と、Cato Networks社の"Catoクラウド"が、コンペになった際に、Catoクラウドが70%勝利をしているという記事です。

理由のひとつとして、導入事例として記載されているように、Cato は最初から迅速に作業を開始し、わずか2日で4つの拠点を接続しました。一方で、Palo Alto は2つの拠点を接続するのに3週間以上かかり、ポートフォリオを連携させるためには何時間ものエンジニアリングが必要でした については、まさにその通りかです。

Prisma Accessと異なり、Catoクラウドでは、拠点に設置するエッジデバイス(Cato Socket)をサービス提供していますので、拠点を接続するという観点であれは、圧倒的な容易さがあります。
また、Catoクラウドでは、エッジデバイスまでサービスとして提供をしているため、Prisma Accessとはサービスの責任分界点が大きく異なります。
つまり、クラウドと拠点接続までを保証しているか、どうかが異なります。

Prisma Accessは、エッジデバイスを提供していないため、IPsec接続を行うための通信機器(ルータやFirewall等)をお客様(またはベンダー)が個別に手配を行う必要があります。
お客様(またはベンダー)が個別に準備した通信機器との接続は、Palo Altoはサービスとして接続保証をしていません。
実際の運用フェーズに入り、Prisma Access側がバージョンアップし、お客様が手配した通信機器と切断されることがあっても、サービスの保証はなく、また、過去に通信切断された例は少なくありません。

Catoクラウドは、エッジデバイス(Cato Socket)をサービス提供しているため、Socketの接続時の容易さ、つまり、環境によってはゼロタッチ(設定投入不要)で導入が行え、Socketバージョンアップも自動で行われます(メンテナンスフリー)。Socketの冗長化(HA構成)、通信回線の冗長化(Act/Act、Act/Std)も容易に構成することができ、万が一大規模障害が発生した場合には、Socket-Socket 間での直接通信を行うなど、通信接続における高可用性を容易に構成することが可能です。

ちなみに、SASEを構成するインフラも、Prisma Accessは、ハイパースケーラーの設備を借りているため、管理やコントールが困難なことも大きな課題です。PoPは、Googleのネットワーク設備を利用しているため、中国本土でのサービス提供不可なことは周知の事実ですが、Googleインフラの障害は、もちろんPrisma Accessにも影響がありますが、障害原因の特定はすることが困難となります。もちろんコスト面でのコントールも一切できないため、現状の円安の状況では、Prisma Access の契約更新時の値上げは必至です。

また、「Palo Alto のポイントプロダクトをM&A(買収)する戦略は、顧客がそれらが一体化しておらずバラバラだと感じたため失敗だった」にあるように、管理コンソールがバラバラで、設定が非常に複雑です。
設定変更や運用を、すべて自社で実施している企業は非常に限られています。

記事にあるように、収集されるデータ品質の課題も大きいです。プラットフォーム全体で、高品質なコンテキストデータをリアルタイムで分析することで初めて脅威の検出が可能になりますが、M&Aでポートフォリオを拡充しているため、そもそものデータがバラバラで、高品質なデータを得ることはできていません。
管理インターフェース(コンソール)の派手さ、綺麗さで、それを隠すことに躍起になっているよう見えます。

残念ながら、日本国内では未だにブランド志向が強く、派手なマーケティングを展開しているベンダー、有名なソリューションが選ばれる傾向が強いですが、きちんと内容の評価を行い、本当に良いソリューションを選択していただきたいものです。

以上となります。

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