レッドハットはBroadcomのVMwareの失態に乗じることができるのか?
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この記事は、2024年11月9日のSDxCentralの以下の記事を意訳したものになります。意訳後に記事に関する考察を述べています。
Is Red Hat ready to pounce on Broadcom’s VMware blunders?
レッドハットはBroadcomのVMwareの失態に乗じる準備ができているのか?
レッドハットはBroadcomの失態に乗じる準備ができているのか?
レッドハット(Red Hat)は、BroadcomがVMwareのライセンスを変更し続けていることにより、新たな仮想化およびハイブリッドクラウドの選択肢を探すVMware現行顧客の間で注目されているベンダーの1つですが、その機会が訪れるタイミングは流動的です。
IBMのCFOであるジェームズ・カヴァナフ(James Kavanaugh)氏が今年の初めに開催されたゴールドマンサックスの投資家会議で、IBMの子会社にとってのこの機会について熱意を示したことで、レッドハットの機会が注目されました。
「我々は現在、非常に大きなパイプラインと顧客の関心を集めており、大いに興奮しています」とカヴァナフ氏はゴールドマンサックスのCommunacopia + テクノロジー・カンファレンスで述べ、「市場に提供できる魅力的な価値提案に非常に興奮しています」と付け加えました。
「Broadcomの買収が進行中である今、各企業の顧客がプラットフォームのアーキテクチャの選択を迫られており、それは仮想化とコンテナ化の選択になります」とカヴァナフ氏は述べ、IBMのコンサルティングサービス、Watson X生成型AIプラットフォーム、およびレッドハットのOpenShiftを挙げました。「これは今後数年間にわたって展開されると考えており、我々はそれに興奮しています」
このCFOの興奮は、最近のIBMの業績発表によってさらに強化されました。同社のレッドハットを中心とするソフトウェア事業が財務成長の主な原動力として示されたためです。
レッドハットのハイブリッドプラットフォームビジネスユニットで仮想化とプラットフォーム技術のマーケティングを担当するシニアマネージャー、アンドリュー・サリバン氏は、SDxCentralとのインタビューで、BroadcomによるVMwareの転機が市場に反響を引き起こしていると述べました。
「私の個人的な経験から言えば、昨年の間に起こったことに対する感情的で本能的な反応が多く見られました。そして、今ではそれを消化し、冷静に次のステップを考える段階に入っています」とサリバン氏は述べました。「今すぐ移行する必要があるというよりも、『今後の戦略はどうするか、仮想化をどのように扱いたいか?単一のベンダー戦略を続けるべきか?複数のハイパーバイザーをどのように活用して多様化するべきか?』と考える傾向が強まっています。」
サリバン氏は、これらの疑問が「サイクル外の再評価を引き起こしている」と付け加えました。
「仮想化プラットフォームから何を必要とするのかについて、皆がより正直に向き合っていると思います」とサリバン氏は述べ、「以前は簡単で多くの時間やエネルギーを費やさずに済んでいましたが、今後もそのままでよいのか、どのように多様化すべきかを再評価しています」
レッドハットはKubernetesを中心としたOpenShiftプラットフォームへの仮想マシン(VM)の移行をサポートする歴史があり、長年のVMwareのライバルとのパートナーシップを通じて、より使いやすいパッケージを提供しています。
サリバン氏は、同社が最近のアップデートでその取り組みを強化していると述べました。
「顧客が慣れ親しんでいるものをそのまま再現するわけではありませんが、仮想化に精通していてもKubernetesに詳しくない人にも理解できるような形で、同じテーマや表現を用いています」とサリバン氏は述べました。「ユーザーエクスペリエンスチームと話すときは、OpenShiftの基本理念に沿っており、プラットフォームの使用法に合うものであれば、それを継続します」
BroadcomはTanzuをあきらめているのか?
BroadcomによるVMwareのクラウドネイティブプラットフォーム「Tanzu」の取り扱いが、さらなる自己反省を促しています。
Broadcomは、過去1年間にわたってTanzuの更新を続け、最近のExplore Barcelonaイベントでも新たな機能強化を発表しました。しかし、Broadcomの経営陣は、主力製品であるVMware Cloud Foundation(VCF)やvSphereの利点を強調する傾向があり、それがTanzuを影に追いやっています。
BroadcomのTanzu部門のゼネラルマネージャーであるプルニマ・パドマナバン氏は、Explore Barcelonaイベントのプレス向けブリーフィングで、Tanzuの利点をアピールしながらも同社の方針を支持しました。
「VCFとTanzuプラットフォームはピーナッツバターとジャムのようなものです。強力なプライベートクラウドがVCFで構成されていれば、同じ組織内にあるため非常に密接な統合が可能です」とパドマナバン氏は述べました。「プライベートクラウドを利用する際には、個別の部品を選ぶのではなく、VCFとTanzuプラットフォームを採用して、アプリケーション、データ、各種パッケージ、セキュリティ、運用に至るまでフルスタックで揃えれば、それが真の強みとなります」
しかし、パドマナバン氏は、その後のブログ投稿でTanzuの将来に対する不確実性を認め、「この1週間で学んだことの1つは、当社が販売しているKubernetesランタイムとBroadcomによるVMwareポートフォリオ内での位置づけにまだ混乱があることです」と述べました。
この混乱は、BroadcomがTanzu Kubernetes Grid ServiceをVCFに組み込み、これを新たに「vSphere Kubernetes Service」と名付けた変更に関連しています。
「この変更は意図的に行われたものであり、Kubernetesランタイム自体が現代のクラウド(インフラストラクチャー・アズ・ア・サービス)の一部であることから、VCFスタックに深く組み込むことで、より多くのVCF顧客が統合の問題なくTanzuの高度なサービスを早期に採用できるようになるという意味があります」とパドマナバン氏は記述しました。「既存の多くのTanzu顧客は、特定の要件に対応するため、Tanzu Kubernetes Grid IntegratedやTanzu Kubernetes Grid Multicloudなどの他のKubernetesランタイムバージョンを利用しています。Tanzuはこれらのバージョンを引き続きサポートしますが、最終的には、Tanzuプラットフォームは[Cloud Native Computing Foundation]に準拠したどのKubernetesランタイム上でも動作するよう設計されています」
この「サポートを継続する」という表明は、VMwareの従来のTanzuプラットフォームの将来に関する懸念を指しているように見えます。この点は、BroadcomのCEOであるホック・タン氏が今年の米国で開催されたVMware Exploreイベントでの基調講演で強調しました。
「今年のExploreイベントでは変化が見られるでしょう。Broadcomは本気でビジネスに取り組んでおり、皆さんもそうでしょう。Broadcomはビジネスを支援し、効率化するためにここにいます」とタン氏は述べ、「我々はキラキラしたオブジェクトを見せるためにここにいるわけではありません」と付け加えました。
RedMonkのシニアアナリストであるレイチェル・スティーブンス氏は、このイベント後のブログ投稿で、タン氏の「キラキラしたオブジェクト」という発言が、VCFプラットフォーム外のVMwareサービスや技術、特にTanzuプラットフォームの将来に暗い影を落とす可能性があると指摘しました。スティーブンス氏は、VMwareがPivotalに基づくCloud Foundryコンテナオーケストレーションプラットフォームに注力し、Heptio買収に基づくKubernetes中心のTanzuオファリングよりも優先させる可能性があると述べました。
「全体として、会社がPivotal買収からの資産に再び焦点を当て、Heptio買収の資産よりも優先する兆候が見られ、VM中心の過去を基盤にしたソリューションをより広く優先しているように見えました」とスティーブンス氏は観察しました。
また、Broadcomの時に矛盾した動きが、レッドハットのようなベンダーにとっての機会を開くことがあると指摘されていますが、その機会を活用するタイミングは予測が難しい状況です。
「大多数の顧客は少なくとももう1年VMwareを維持するでしょう(移行の即時的な課題のため)が、多くの顧客やチャネルはBroadcomに失望しています」とウィリアム・ブレアのアナリスト企業が最近の企業調査とレポートで述べ、これにより不満を持つ顧客が、Nutanix、レッドハット、Microsoft、Scale Computing、パブリッククラウドプロバイダーなどの近・中期の代替オファリングを検討するようになっていると付け加えました。
以上が、SDxCentral の記事の意訳になります。
この記事に関する考察
レッドハットが、VMwareの代わりになりうるのか?と言う記事です。
VMwareの代わりにレッドハットを検討する場合は、まずアーキテクチャの選択が必要になります。いわゆる"仮想化"、VMware vShpere の代わりを選択する場合には、Red Hat Virtualization(RHV)、または Red Hat OpenShift Virtualization(RHOV)を選択することになり、"コンテナ化"、Tanzu や Kubernetes の代わりを選択する場合には、Red Hat OpenShift Container Platform(RHOCP)を選択することになります。
"仮想化"のアーキテクチャを要望される方が多いと思いますので、VMware vSphere の代替となる RHV は、Red Hat Enterprise Linux(RHEL)上で動作する KVMハイパーバイザーをベースとした x86仮想化製品ですが、RHVの開発は、すでに2020年8月に終了しており、現在はメンテナンスサポートとなっています。
レッドハットとしては、今後の"仮想化"のソリューションとして RHOV を推奨しています。
RHOV は、Red Hat OpenShift のいち機能で、コンテナ環境で仮想マシン(VM)を実行・管理できるソリューションです。2020年7月にRed Hat OpenShift 4.5の一部として一般(GA)提供されています。VMware vSphere や RHV からの比較的な容易な移行を行うことができることが最大のメリットとしており、仮想マシン(VM)は、Linuxだけでなく、Windowsもサポートしています。
RHOV は、仮想マシン(VM)とコンテナを同一のOpenShift のプラットフォーム上で実行・管理できるため、将来的にコンテナ化を視野に入れている場合に、選択肢の一つになると思います。
RHOV は海外で幾つの事例があるものの、日本国内、特にエンタープライズでの採用事例が殆どありません。VMware vSphere の代替になりうることで、興味や関心が高まっていますが、現時点で多くの方が、RHOV を採用することは少なさそうです。
やはり、OpenShift が、そもそも仮想マシン(VM)だけではなく、コンテナ(Kubernetes)知識の取得が必須であり、これまでのインフラ・仮想化管理者にとって学習コストが高いことが第一の要因です。
仮想マシン(VM)だけでなく、コンテナについても Red Hat (OpenShift )を選択してよいかのかどうかの判断も必要になり、インフラの管理者だけでは判断することができません。
また、vSphere や KVM ハイパーバイザーと異なり、コンテナ上で仮想マシンを実行することなるので、オーバーヘッドに関する懸念や、安定性・信頼性の懸念も大きな要因になっています。
実際に VMware vSphere もそうでしたが、RHOV が、比較的新しい技術であるため、製品の安定性・信頼性が担保されるには、それなりの時間が掛かりますし、Red Hat 自体の長期的なサポートへの不安もあります。
4年前の2020年7月リリースを考慮すると、ワークロードとしては、現時点では、開発・検証環境の利用が現実的で、本番環境利用にはまだ数年は掛かるものと思われます。
次に、VMware の Tanzu は混乱を極めているので、これから新たに Tanzu を選択する方は居ないと思いますが、Red Hat OpenShift 以外にも、Microsoft Azure Stack や、Google Anthos、Nutanix Karbonもありますし、Red Hat 以外にも、SUSEやUbuntuベースの Kubernetes ソリューションもあります。
また、Red Hat OpenShift は、各パブリッククラウド上でも動作することが可能です。
AWSでは、Red Hat OpenShift Service on AWS(ROSA)、Microsoft Azureは、Azure Red Hat OpenShift(ARO)、IBM Cloudは、Red Hat OpenShift on IBM Cloud があり、また、Google Cloud Platform(GCP)や、Alibaba Cloud上でも実行が可能ですので、現時点では、Red Hat OpenShift が最も多くのクラウド上で動作可能(=マルチクラウド対応)で、かつオンプレミスでも利用できる(=ハイブリッドクラウド対応)唯一のコンテナソリューションであると言えます。
いずにしても、VMwareの代替として、同じ"仮想化"だけで検討するのか、将来も見据えて、新しいアーキテクチャ、"コンテナ化"も踏まえて検討するのかが重要なポイントになるのは間違いないです。
また、少なくとも、"仮想化"のみをサポートし、"コンテナ化"をサポートしていない(サポートする予定のない)ソリューションを選択することは、あまり良い選択とは言えません。
以上となります。