【シリーズ連載】 監禁少年 #4-3
彼は僕が話したくだらない事をよく覚えていた。
太陽の光が好きなこと。
花が好きなこと。
ギターを弾くのが好きなこと。
ゲームをやるのが好きなこと。
菓子パンが好きなこと。
オレンジジュースが好きなこと。
2人で歩く学校からの帰り道が好きなこと。
ホラー映画が嫌いなこと。
ピーマンが嫌いなこと。
炭酸が嫌いなこと。
高い所が嫌いなこと。
早起きが嫌いなこと。
ひとりぼっちが嫌いなこと。
そして
暴力が嫌いなこと。
部屋にある履歴書を見つけた彼は
違う人間のようだった。
大声で怒鳴り散らし
鬼のような形相で暴れ
慌てて宥める僕を突き飛ばし
殴った。
どうしてだろう。
どうしてこうなってしまったのだろう。
夜が明けてもズキズキと痛む頬は
そんな考えを増長させていく。
口の中の血の味が
昨日のことを思い出させる。
怖かった。
痛かった。
でも、あんな顔をさせてしまったこと、彼をあんな風にしてしまったことが悲しかった。
だからだろうか。
リビングの上の書き置きと僕の好きなオレンジジュースを見て、安心してしまった。
「本当によく覚えているなあ」
あぁ、やっぱりまた
彼から生活を貰って生きている。
つづく
写真:No,44
作家:rin
モデル:鈴木 裕大
ロゴデザイン:育